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適正な動物実験TENDERCARE

わが国における動物実験は、動物愛護法や実験動物の基準示される原理・原則に従い、学会や大学等が定める動物実験指針に沿って実施されている。しかし、委員会の設置や実験計画の審査および指針の制定が法に明記されていないため、研究機関や研究者個人の責任が曖昧になりやすい。本学では委員会を設置、計画書の審査を実施し、また説明会を開催するなど研究者に周知を促すと共に、動物実験に対する意識の徹底を呼び賭けるよう勤めている。

動物の愛護

:動物の愛護とは、愛情ややさしさを持って対象動物の習性に配慮して取り扱うこと、すなわち動物の習性等に配慮した具体的な飼養行為に理念を加えることにより、動物とのよりよい関係つくりを目指す行為の総称である。


人と動物の共生

:動愛法の基本理念である「人と動物の共生」とは、人間社会の中における動物をそれぞれの役割に応じて適正に取り扱うことを意味する。すなわち、動物実験や家畜等の利用も合理的な目的に応じた適正な動物の取り扱いがなされるならば、人と動物の共生のひとつのあり方である。


動物福祉

:従来実験動物は、”生きた試薬”、“生きた道具”として使われ、「物」として機械的に制御されてきた。 これに対し、”生きもの”としての権利を主張する考え方があり、近年実験動物に幸福、豊かさを求める考え方が大きくなってきている。

動物福祉の基本概念の1つとして、世界獣医学協会(WVA)は動物行動学的知見に基づき、
 @ 飢えおよび渇きからの開放
 A 肉体的不快感および苦痛からの会報
 B 傷害および疾病からの開放
 C 恐怖および精神的苦痛からの開放
 D 本来の行動様式に従う自由
の5項目(5Freedom)を提示している。

また、RussellとBurchが「人道的な実験技術の原則」の中で提唱した動物実験の「3R(Replacement、Reduction、Refinement)」は国際的に動物実験実施者が行うべき必要事項となり、法律的にも無視できない状況である。


エンドポイント

:動物実験における「エンドポイント」は、下記の3つのパターンがある。

 実験のエンドポイント:実験が計画通り行われデータが得られて実験終了

 エラーエンドポイント:なんらかの異常/ミスにより実験データが得られず実験中止

 人道的エンドポイント(humane endpoint):実験動物を実験処置による苦痛から開放するため、実験を打ち切るタイミング(安楽死処置を施すタイミング)をいう。実験動物が死亡するまで実験を続けるような実験計画の設定(death as endpoint)に対比して使われる用語である。安楽死させる時期は専門家と協議して判断する。


SCAWの倫理カテゴリー

:1986年、米国でSCAW(Science Center for Animal Welfare)が示した動物実験の倫理的カテゴリーは、動物の苦痛の程度を推測する参考資料として利用することができる。

A: 生物個体を用いない実験あるいは植物、細菌、原虫、又は無脊椎動物を用いた実験
B: 脊椎動物を用いた研究で、動物に対してほとんど、あるいはまったく不快感を与えないと思われる実験操作
C: 脊椎動物を用いた実験で、動物に対して軽微なストレスあるいは痛み(短時間持続する痛み)を伴う実験
D: 脊椎動物を用いた実験で、避けることのできない重度のストレスや痛みを伴う実験、さらには麻酔薬や鎮痛剤、
  精神安定薬を用いることのできない実験、長期にわたる潜在性のストレスを伴う実験操作や安楽死を適用でき
  ない実験操作
E: 麻酔していない意識のある動物を用いて、動物が耐えることのできる最大の痛み、あるいはそれ以上の痛みを
  与えるような処置

                      (参考:)Laboratory Animal Science. Special Issue:11-13.1987


安全管理

:動物実験施設の管理者、または動物実験責任者および実施担当者は、実験動物の病原体汚染事故の重大さを常に認識するとともに、動物間の感染はもちろん、ヒトへの感染リスクが通常の実験室に比較して高いことを決して忘れてはならない。使用する実験動物が病原体に感染する可能性を認識し、必要に応じて検査を行うとともに、研究者や実施担当者に対し情報提供や安全教育を実施すべきである。
また、病原微生物を用いる動物実験や遺伝子組み換え動物を扱う場合は拡散防止に努め、それぞれの法律や指針にのっとり実施されなければならない。


病気について

病気の原因は様々である。実験動物に病気を引き起こす主な原因として、
 @ 遺伝的要因(疾患モデル動物など)によるもの、
 A 栄養因子(ビタミン欠乏など)によるもの、
 B 環境要因(温度、湿度、騒音、明暗、換気など)によるもの、
 C 微生物(最近、ウイルス、真菌、寄生虫など)によるもの
があげられる。