グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



TOP  > 臨床工学科  > 臨床工学技士とは?  > 臨床工学技士の仕事

臨床工学技士の仕事

臨床工学技士は、1987年に医療に関わるコ・メディカルの職種として誕生しました。保健師、助産師、看護師(1948年)、薬剤師(1960年)など他の医療職と比較すると新しい医療職です。「看護」、「薬剤」といえば一般の人でも大体仕事をイメージできるかもしれませんが「臨床」、「工学」のどこをとっても業務をイメージできません。また、病院の外来など多くの患者の目がとどく場所で働いているわけでもなく、残念なことに看護師、薬剤師ほど知られていない職種であることは確かです。しかし、臨床工学技士に課せられた使命はこれからの医療にとって非常に重要な領域であり時代とともにその業務内容は変化してゆくと考えられます。
医療と工学のかかわりは医療を助ける器具が発明された時から始まっています。聴診器などは、音を効率的に収集する目的のために作られ現在でも利用されています。現在では、医学と工学の結びつきはさらに深まり、医療の現場で様々なしかも高度な医療機器が治療に必要とされるようになってきました。それに加えこれらの機器は、その取り扱いを誤ると治療ができなくなるばかりか「いのち」にかかわるものまであります。臨床工学技士が「厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」と定められている由縁でもあります。これから、臨床工学技士は病院のどんな部署で働きどのような業務を行っているか説明したいと思います。

1. 人工心肺業務

人工心肺装置

人間の心臓は、全身に血液をおくるポンプであり右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋から構成され休むまもなく24時間働いています。息を3分間とめられる人は多くいますが、心臓をとめることのできる人はいません。重要な臓器である心臓にも心筋梗塞を始め、先天性心疾患まで様々な病気があります。例えば、心室中隔欠損という先天性疾患では、右と左の心室をわける中隔に穴があいていますが、これをふさぐために手術をするとしましょう。心臓の内側の穴をふさぐため心臓にメスをいれなければなりません。とたんに大出血してしまいます。心臓は、全身に血液を送る唯一のポンプですので、全身の血液が右心房に集まってきます。そして右心房から右心室、そして肺に送られて酸素化された血液が左心房へ、その後左心室を経て大動脈から全身に送り出されます。都合のよいことに心臓に入る前に血液を取り出し、人工的に酸素加した後、その血液を心臓から出た部分に返してあげれば心臓を切り開いて穴をふさぐ間、患者さんの心臓の代わりができそうです。血管にチューブを接続するのはドクターですが、手術中に患者の血圧をコントロールし、その命がゆだねられるのは臨床工学技士です。近頃は、医療を題材にしたドラマの中でも臨床工学技士(MEやCEなどと呼ばれています)が心臓の手術に出てくるようになりました。

2. 血液浄化業務

血液透析装置

人間の腎臓は、そらまめの形をした150gほどの臓器で左右1対からなる小さな臓器ですが、その働きは、簡単に言えば全身の血液を集めその老廃物をこしとって尿を作ります。体に必要なもの、不必要なものをわけて不必要なものだけを体外に捨てるという巧みな「しくみ」には驚かされるばかりですが、腎臓の働きはそれだけでなくビタミンDの活性化や血圧のコントロール、造血にも深く関わる重要な臓器でもあります。
従って、腎臓は重要な働きをもつ臓器ですが、これらの機能が不十分になった場合を腎不全と呼びます。
慢性的な腎不全では、機能の回復も見られず最終的には透析が必要になります。透析は、腎臓に代わりに血液をきれいにする治療法です。透析では、老廃物を区別するために非常に細い中空のチューブの中に血液を通し、その外側に透析液を流します。両者には濃度差が存在し、体の中に必要なものは透析液の中に同じ量が含まれるように調節し、不必要なものは透析液中の濃度を薄くすることにより不必要なものだけを血液から取り出してゆきます。これを拡散と呼びます。
また、血液と透析液の間に圧力差をつくって水分量をコントロールすることもおこないます。臨床工学技士は、回路の組み立て、透析液の作製から患者と透析装置をつなぐバスキュラーアクセスを担当します。透析中は、患者の血圧・脈拍など安全に行われているかのチェック、透析終了時には回路に残った血液を返血する作業もおこないます。
透析だけでなく血漿交換や血液濾過などの方法が、特定の毒物や不要物を取り出すために使われるようになり、臨床工学技士の活躍する分野は益々広がっています。

3. 呼吸治療業務

人工呼吸器

生命の危機に関わる重篤な状態や手術後には自分で呼吸することができないことも多く、人工的に呼吸管理行われます。こうした患者に対し人工呼吸器のセットアップ、換気量・呼吸回数の設定、呼吸回路の定期的な交換などを担当するのが臨床工学技士です。最近の人工呼吸器は、技術の進歩によって効果的に人工的な呼吸がサポートされ、生体に近い呼吸に近づけるために様々な人工的呼吸法が開発されています。安全に呼吸管理を行うためには、動作原理を熟知していないと正しく操作できないこともあります。

4. 手術室業務

電気メス

手術室で臨床工学技士が担当する手術関連機器には、電気メス、レーザメス、超音波治療装置、手術用ナビゲーション装置、内視鏡手術器、各種監視装置などがあります。近年は、内視鏡や手術用ナビゲーション装置を用いた手術に積極的に携わるようになってきました。
臨床工学技士は機器の保守管理をはじめ、手術関連機器のセットアップ、手術中の機器のトラブル対応、治療中の患者観察、清潔野での補助業務などを担当します。

5. 集中治療室業務

生命にかかわる重症の患者は、集中治療室で治療が行われます。この病棟では、重篤な状態に対し、各種生命維持管理装置が治療に活躍しています。人工呼吸器の操作、保守管理の他、集中治療室でも体外循環が行われるようになり臨床工学技士が活躍しています。手術室では、開胸(胸をひらいて)して行いますが、ICUでは、心筋梗塞などで弱った心臓に対して皮膚をわずかに切開しチューブを挿入、心臓の機能を一時的に補助することが行われます。補助循環と呼ばれるこの治療法で臨床工学技士は、回路、機器のセットアップ、循環中の安全確保、生体情報のモニタリングを担当しています。また、顔面麻痺など局所の血流障害にその原因が考えられる疾患にも有効とされています。そのほか皮膚移植、一酸化炭素中毒などに対しても高気圧酸素療法が行われることもあります。臨床工学技士は、高気圧酸素療法において加圧、減圧操作、治療中の患者モニタリングを担当します。

6. 心血管カテーテル業務

心臓を構成する心筋は冠動脈によって養われています。急性心筋梗塞はこの冠動脈のどこかが突然閉塞することで、その先に血液を供給できないことから心筋が酸素不足に陥り、心筋が壊死してしまう病気です。急性心筋梗塞を発症した患者さんに対し、いち早く閉塞した冠動脈の血流を再開させることが必要となります。カテーテルと呼ばれる細い管を動脈から挿入し、冠動脈の病変部まで送ります。そして、病変部でバルーンを拡張させ狭くなった血管を押し広げます。ステントと呼ばれる医療器具を留置することが一般的です。あるいはロータブレータと呼ばれる器具を用いて削り取ることもあります。心血管カテーテル業務で臨床工学技士は、必要材料や薬剤の準備、治療装置や関連機器の操作、モニタリングシステムを用いた生体情報の監視、血管内超音波などの画像処理装置を用いた生体情報の測定や記録、機器の保守管理などを担当しています。緊急時に備えて補助循環装置、体外式ペースメーカなども準備します。

7.高気圧酸素業務

気体が液体に溶け込む量は、環境気圧が高いほど増えることが知られています。大気圧ではその量はわずかですが、高気圧状態にするとその量を増やしてやることができます。生体において各組織に酸素を運ぶのは血液中のヘモグロビンです。したがって、より多くの酸素を運ぼうとしてもヘモグロビン量によって運ぶことのできる酸素量は決まってしまいます。ところが高気圧状態では、前述のとおり気体(酸素)の溶解度が増えるのでヘモグロビンによって運ばれる酸素以外にも直接血液に溶け込む量が増えるので、より多くの酸素を組織に運ぶことができます。突発性難聴は原因不明の難聴ですが、内耳への血液循環障害による代謝不全がその背景にあるともされ高気圧酸素療法が有効であると言われています。また、顔面麻痺など局所の血流障害にその原因が考えられる疾患にも有効とされています。そのほか皮膚移植、一酸化炭素中毒などに対しても高気圧酸素療法が行われることもあります。臨床工学技士は、高気圧酸素療法において加圧、減圧操作、治療中の患者モニタリングを担当します。

8.ペースメーカ/植込み型除細動器(ICD)業務

植込み型ペースメーカとペースメーカプログラマ

心臓には刺激を伝える特別な道筋があります。心疾患によってうまく刺激が伝わらないため、意識消失をおこすことがあります。こうした患者さんには、体の中に人工的に刺激を発生する装置(ペースメーカ)を植え込みます。臨床工学技士は、手術室において医師と一緒にペースメーカ植え込み業務(心電波形の確認、閾値の設定、プログラム確認など)を行っています。手術後は、定期的なペースメーカのフォローアップとして正常に働いているか(バッテリーの確認、センシング、ペーシング閾値チェック、プログラム変更など)の検査も担当しています。

9.医療機器管理業務

除細動器

医療現場で使われる機器は様々であり、誤った操作によって生命を脅かす重要な事故が起こることもあります。また、1種類の医療機器をいくつものメーカーで作っている状況もあり、メーカーごとに操作法も異なっています。こうした状況下では、ある特定の部署が、院内のどこで、どの医療機器が使われているのかを管理し、必要な保守、調節や、可能な修理を工学と医学の両方の専門知識をもった専門家が行った方が、医療の安全をより確保でき、また、効率的です。また、余分な医療機器を持たないという経済的な効果も期待できます。患者からみれば、使用前と使用後に臨床工学技士による機器のチェックを行うことにより、最高の状態で使うことができます。そのほか、臨床工学技士は様々な医療機器の原理、操作法に精通しており、他のコ・メディカルに対する医療機器に関する教育も担当しています。不適切な操作によっておこる医療事故を未然に防ぐための大きな力となっています。

臨床工学技士の将来

臨床工学技士に仕事について簡単に解説しました。臨床工学技士は、医療職種の中でもその豊富な工学的知識を生かして治療に貢献していく使命があります。最終的には、生命維持管理装置の操作だけでなく院内で使われるすべての医療機器に対して責任を負う役割を担っているとも言えます。
藤田保健衛生大学病院では、ME管理室を中心に人工心肺業務、血液浄化業務、機器管理業務などを行っています。多くの病院でも臨床工学技士が、複数分野の業務を行っており、ある特定の業務に精通すればよいと言うわけでありません。また、医学と工学技術の進歩は、新しい治療法を生み臨床工学技士に期待される役割も変わってゆくと考えられます。