保健衛生学部リハビリテーション学科 4年間の学び・カリキュラム

豊富で精密な臨床実習

皆さんが、優れた理学療法士・作業療法士になるためには、体系的講義から高度な知識を獲得するのみならず、複雑な技能を精密に身につける必要があります。そのため、本学科では臨床実習を最重要科目に位置づけています。

本学科では、一流の臨床家(医療の専門家)による教育を基軸としています。特に、臨床実習は「優れた模範に倣う実習」です。本学の教員は、大学病院で日々臨床に従事する経験豊富な臨床家です。皆さんは、臨床家である教員から患者さんを前に直接指導を受けます。この具体的かつ実践的、刺激的な経験によって、「医療者は自分のためではなく患者さんのために学び続けるもの」であることを実感できます。臨床現場では、学校で講義してくれた現役先輩療法士にも出会います。先輩療法士も臨床実習指導者として皆さんを支援してくれるでしょう。

貴重な経験を通して学ぶ意欲を刺激してくれる臨床実習に多くの時間を割けるようカリキュラムが工夫されています。その時間数は、厚生労働省指定規則が定めた基準時間の約2倍、1,665時間です。また実習の中心は学内施設であり、大学5施設(大学病院、3教育病院、地域包括ケアセンター)が2 / 3を占めます。皆さんは、理学療法士・作業療法士が活躍する主なフィールドのほとんど全てを臨床実習で体験できます。本学科の特別な強みである豊富で精密な臨床実習は、教育/学習理念である「臨床中心」を具現化したものです。

皆さんは、1年次の見学実習から4年次の応用臨地実習まで全ての学年で臨床実習を経験します。これらの経験が体系的講義の理解にも役立ちます。最初から臨床を身近に感じながら、交互に経験する講義と実習が知識と実践とを強く結びつけ、卒業時、優れた臨床家になる皆さんの準備は完了するのです。

藤田医科大学病院
藤田医科大学 七栗記念病院
藤田医科大学 ばんたね病院 藤田医科大学 岡崎医療センター 地域包括ケア中核センター
ふじたまちかど保健室

客観的臨床能力試験:OSCE

客観的臨床能力試験OSCE(Objective Structured Clinical Examination)は、医療職を目指す学生の技術・態度を客観的に評価する「医学教育における実技試験」です。学生は、標準的な理学療法・作業療法行為を模擬患者に対して行い、その技術・態度について評価され、その結果を基に各人に適した指導を受けます。

2004年、本学リハビリテーション学科では、世界各国の医学部で普及しだしたOSCEを参考にして、療法士に最適な療法士版OSCEを先駆的にデザインし、本学カリキュラムの学修体系に組み込みました。一流の臨床家の持つ技術・態度は、身体運動と認知そして習慣からなる複雑な技能であり、文章や図表では表し切れません。一方、技術・態度の概念そのものは言語化でき、その理解は技術・態度の修得に役立ちます。藤田発の療法士版OSCEは、実技試験という役割を超えて、一流の臨床家が持つ技術・態度の「明確化」と「標準化」を目指しており、その全体像と具体的プロセスは、文章、画像、動画によって教科書にまとめられ、活用されています。

本学科の教育/学習理念は「臨床中心」です。OSCEを通して深く臨床を学ぶ科目(客観的臨床能力演習)では、一流の臨床家である本学教員に加えて、豊富な知識・技術・経験を持つ大学病院および関連病院の熟達した現役療法士も参加し、皆さんの技術・態度の修得をコーチします。そして、これらの現役療法士には、学内外の臨床実習で再び出会うことになります。先輩療法士が患者さんと接する姿を間近にみてOSCEで学んだことを応用的に考え直すことができるでしょう。これらは、本学学生ならではの体験できる実習です。患者さんの理解を促すだけでなく、理学療法・作業療法行為への科学的好奇心もさらに刺激されることでしょう。

2018年、19年ぶりに理学療法士・作業療法士の養成施設指定規則が改正されました。この改正では、臨床実習の重要性が強調され、「臨床実習前および実習後の評価」が必須になりました。現在、藤田発の療法士版OSCEは多くの養成校に採用、活用され始めています。皆さんは、進化し続ける藤田発の療法士版OSCEを通して、最高水準かつ標準となる技術・態度を学んでください。

特色のある講義・実習紹介

1年次

どんな授業をしている?

運動学

ヒトが日々、地球の重力環境下で何気なく繰り返し行っている活動 (寝返り、起き上がり、歩行、階段昇降など) が、どんな構造や機能によって生み出されているか、そのメカニズムを学びます。到達目標は、ヒトの活動を解剖学や生理学、そして力学や動作分析学の視点から理解し説明できることです。授業は講義形式のほか、デモンストレーション、グループ討議で行います。討議では、講義で学んだ内容をもとに、将来担当するだろう障害を持った方々の活動における困難さとその理由について討論し、理解を深めます。

理学/作業療法概論

理学/作業療法を学ぶ第一歩となる科目として、理学/作業療法の歴史、定義、理論、プロセス、具体的手段、社会的制度を学びます。到達目標は、理学/作業療法の治療の概要をはじめ、世界や日本における歴史や動向、必要な制度や法律などを理解し説明できることです。授業は講義形式で行い、教科書や補足資料を用いて知識を身につけます。

運動学習理論

理学/作業療法における練習/訓練(exercise/training)の中核的概念である運動学習について、具体的には運動学習の概念、治療への応用を学びます。到達目標は、患者の状態に適した練習プログラムをデザインして、その概要を説明できることです。授業は講義形式を中心とし、身近な例を交えながら理学/作業療法の基礎となる運動学習の科学的理論の理解を深めます。。

検査測定論

治療するうえで必要な情報を取得し、患者の症状や障害を把握することが評価です。評価には、適切な介入法の選択、その結果である患者の将来像の予測を含みます。この授業では、評価の目的とその具体的な検査測定法を学びます。到達目標は、各検査測定の意義や、検査結果が示す意味を説明できることです。授業は講義形式を中心とし、一部実習を交えながら、実践的科目である「検査測定論実習」へと繋げます。

基礎情報処理学

情報通信技術活⽤のため、コンピュータの仕組み、インターネット、⽂書/表計算/プレゼンテーションソフトなどを学びます。到達目標は、コンピュータやネットワークの仕組みを理解すること、各ソフトを用いて基本的な文書作成、表計算、プレゼンテーション資料作成ができることです。授業は講義形式と演習形式を目的に応じて併用し、情報の収集や分析、レポートやプレゼンテーション資料作成など情報提示能⼒を⾝につけます。

2年次

どんな授業をしている?

動作分析論

理学療法では、治療対象となる動作(行動)の分析が必須です。基礎的なバイオメカニクスや動作分析の方法論、特に動作分析の代表である歩行分析には時間を割き、正常歩行のメカニズムや歩行障害者の具体的分析方法などを学びます。到達目標は、動作分析の特性や基礎となるバイオメカニクス、動作分析機器について説明できることです。授業は講義形式を中心とし、適宜、実動作の観察や分析を行うことによって動作分析の方法論に関して深い知識を身につけます。

歩行再建学

歩行困難を克服して歩行を可能にするための歩行再建学では、代表的な歩行障害類型に焦点を当て、一般的な治療法から、歩行練習支援ロボットなどの先端機器活用までを学びます。到達目標は、歩行練習の基礎、方法、歩行補助具、歩行支援機器等を学び、患者に合わせた歩行再建プログラムを説明できることです。授業は講義形式(2年生後期)、スモールグループ形式での歩行練習支援ロボット実習(3年生前半)を組み合わせて行います。

運動学実習

運動学で学んだ身体活動(歩行、バランス、筋力など)について、実際に様々な機器を用いて計測、解析、解釈する一連の流れを学びます。到達目標は、計測機器の適切な使用、得られたデータの解釈、適切なデータのまとめ方、プレゼンテーション、ディスカッション能力、チームワークについて説明できることです。授業は演習形式(データのまとめ方について)、実習形式(計測とグループ討議について)を組み合わせて行います。

検査測定論実習

リハビリテーションの目標設定やプログラム立案に欠かせない神経学的検査の意義、方法、判定を学びます。到達目標は、検査の意義や方法の説明、適切な評価の実施、検査結果から日常生活での問題点や注意事項の説明ができることです。授業は実習形式とし、二人一組で評価の実技練習を行います。患者の症状に合わせた安全で円滑な評価手順を身につけます。

リハビリテーション工学

患者や治療者のニーズから生まれ、臨床現場で用いられている電気刺激装置やロボットなどの様々な機器に関して、開発の歴史や経緯、使用場面を学びます。到達目標は、リハビリテーション機器の特性を他者に説明できること、患者の症状に応じた機器が選択できることです。授業は主に講義形式で行い、毎回の講義中に実施される小テストや小レポート作成を通じて理解を深めます。

3年次

どんな授業をしている?

理学療法理治療学2−中枢2

神経や筋に関係する疾患は多様で、生じる症状や障害も様々です。この科目では、神経内科学を復習しながら、どのような疾患によってどのような症状や障害が生じるのか、理学療法士がどのような介入を行うのかを学びます。到達目標は、それぞれの神経・筋系疾患についてその症状・障害を理解すること、症状や障害の程度を把握するために適切な理学療法評価(検査や測定)項目を選択できること、疾患の状況や障害の程度に即した理学療法計画を立案できることです。授業は講義形式とグループワーク形式を組み合わせて行います。

病態運動学

病態運動学では、中枢神経疾患、運動器疾患を中心とした歩行・動作障害に関連した臨床的な運動学、加齢に伴う身体の変化や高齢者に多い転倒などを学びます。到達目標は、中枢神経疾患、運動器疾患を呈した患者の姿勢と歩行障害の病態について説明できることです。授業は講義形式で体系的知識を身につけるとともに、スモールグループワークや発表会の形式によって、講義で得た知識を活用出来るようにします。

作業療法治療学演習1-中枢

脊髄損傷患者に対する作業療法を学びます。到達目標は、脊髄損傷の病態や脊髄損傷患者の作業療法学的評価を説明できること、その結果を解釈して問題点や治療プログラムを立案できること、作業療法を模擬的に実施できることです。授業はグループワーク形式とし、少人数のグループに分かれて、実技を含む講義を学生が主体となって行い、課題の理解を深めます。

コンピュータープログラミング

グラフィカルプログラミングソフトウェアを使用して、信号計測用プログラムの作成から実際のデータ収録まで、臨床研究活動の基礎となる一連のプログラミング技術を学びます。到達目標は、プログラミングの基本概念および簡単な信号計測を実現するためのプログラミング技術を獲得できることです。授業は講義形式と演習形式を組み合わせて行います。プログラミンングの概念や信号物理特性についての講義から始まり、個人およびグループでのプログラミングと信号計測の演習を通じて理解を深めます。

研究概論

研究とは何かについて、その概要を理解し、さらに研究疑問解決のための手法などを学びます。到達目標は、自分の持った疑問と仮説を検証するための研究計画を立案できること、実際のデータを統計学的に解析し、文献検索と抄読に基づいて考察を組み立て、小論文を作成できることです。授業は演習形式を中心に行います。文献検索や統計学の演習を体験し、収集したデータの内容を表現するための図表作成と統計学的解析を実施し、結果の解釈や考察を小グループで議論します。

4年次

どんな授業をしている?

臨床研究

研究計画立案から、研究データ取得・解析、研究発表まで、一連の研究過程を学びます。到達目標は、研究演習を通じて、研究のプロセスを理解し実践できること、研究成果の発表方法を学び、実際に発表できること、そして、論文作成の手順と方法を学び、実行できることです。授業はグループワーク形式で行います。指導教員1人当たり3〜4名の小グループを作り、教員と密に連携をとりながら、学生が主体となって課題研究を行い、発表会でその成果を発表、議論します。

特論(国家試験対策)

これまで学修した様々な知識や技術について、教科書や文献を用いて整理し直し、理学療法学または作業療法学として統合されたノウハウを学びます。到達目標は、各種疾患の概要・病態把握ができること、疾患に合わせた評価・治療方法について立案実施できること、リハビリテーション医学に関与する基礎医学、関連法規等を網羅的に学び説明できることです。授業は講義形式とグループワーク形式を組み合わせて行います。