第77回医学セミナー(第15回特別講演)
題目:「医学研究私見」

演者:国立長寿医療センター
     総長 大島 伸一 先生

日時:平成16年9月22日(水)
    午後4時30分〜5時30分

場所:医学部1号館3階317号室

座長:浅野 喜造 先生
世話人 小児科学教室 浅野 喜造 内線(2367)
微生物学教室 辻   孝雄 内線(2432)
大島伸一先生は昭和45年名古屋大学医学部を卒業され、その後、
社会保険中京病院で泌尿器科診療・研究に専念され、わが国での
腎移植の草分的存在でもあります。
平成9年には臨床的実績が評価され同病院副院長から名古屋大学
医学部泌尿器科学講座の教授に選任されています。その後名古屋
大学病院副院長、病院長を歴任され国立大学行政法人化の際の、
獅子奮迅のご活躍ぶりは眼を見張るものがありました。
平成16年3月わが国のナショナルセンターの1つである国立長
寿医療センターの総長に就任されました。先生の医学・医療の目
的、核心を探究するお話は最近のNHKでも放送され、筋道だっ
た論旨の展開、情熱的語り口をご記憶の方も多いものと思われま
す。
今回の特別講演では先生の考えておられる臨床医学研究とは何か、
その心も含め、色々と興味深いお話をして頂けるものと思います。
多くの教職員、大学院生、学部、学生の来聴をお願い致します。
以下の先生の講演要旨を参照下さい。

医師としての私の経歴は一般的な枠を外れており、私のような
考え方には異論も多いと思う。私は、医学研究とは一言で言えば、
「役に立つ」ことを志向した研究であると信じそうしてきた。
研究は、新しい知を求めること自体に価値があり、創出された新
しい知に価値や意味を求めることは科学に対する冒涜であるとい
う考え方もある。
しかし、医学研究と他の研究とどう違うのか、と突き詰めてみれ
ば、私の答えは明らかである。医学研究とは臨床の現場で解決を
求められていることに、どのように答えを出すかに尽きるのであ
る。だが、問題は医学研究に対する研究者の姿勢にあるだけでは
ない。科学の正しさを証明するものは、普遍性、心理性、客観性
であり、それを証明するために、全体を各要素に分解し要因と結
果、その因果関係を明らかにするという近代科学の方法論による
が、臨床医学研究は、この方法論では成立しない。臨床医学は、
現実に起こった現象を統計的、確率的に処理し、最適な治療法を
選択するという、あくまで相対的なものであり、マクロでは有効
であっても、ミクロではその有効性を保証しえないという限界が
ある。長寿医療センターに移り、対象が疾患を治療して社会に帰
すという医療とは異なり、障害と共存しながら死に向かうという
高齢者になり、どのような研究に価値があるのか戸惑い模索して
いるところであるが、あくまで高齢者にとって「役に立つ」研究
とは何かにこだわり続けたいと思う。
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