第128回 医学セミナー(特別講演44回)
題目: 「質量分析法の医学応用」  
演者: 浜松医科大学 分子解剖学教授
瀬藤 光利 先生
日時: 平成20年10月17日(金)
午後5時15分〜6時45分
場所: 生涯教育研修センター 1号館 9階 901講義室
座長: 伊藤 光泰 先生

 瀬藤先生は東京大学医学部を卒業後、生理学研究所の助教授を経て平成20年から浜松医科大学の教授を務められている新進気鋭の研究者です。これまでにも、サイエンス誌若手科学者賞、東京都医師会奨励賞、日本学術振興会奨励賞、文部科学大臣表彰など受賞歴も多数あります。今回は下記の内容で講演されます。

 我々は先端計測プロジェクトで島津製作所と質量分析装置を開発しつつ、プロテオーム解析、メタボローム解析を中心にした研究を行っている(PNAS2007,CELL2008など)。これらの手法は生命科学研究においてますます重要な役割を担うと考えられる。今回の発表では、我々の未発表のデータを中心に発表し、先生方のご意見を賜りたい。

 我々はNAD 依存性タンパク質脱アセチル化酵素であるSIRT1 の相互作用因子が、ホスファチジルイノシトール4-リン酸5 キナーゼ(PIP5Kγ)であることをダイレクトナノフロー型LC/MS により同定した。下垂体SIRT1は、PIP5Kγの脱アセチル化を介して、小胞輸送や分泌制御に関わるホスファチジルイノシトール(4,5)2リン酸(PIP2)の産生量を調節し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を制御していた(未発表)。このような従来のメタボローム解析法に加えて、現在取り組んでいるのが質量分析顕微鏡を用いたメタボローム解析である。一般的な解析は、生体試料から代謝物を分離、精製して分析を行う。しかし、この手法では抽出や誘導体化の際に代謝物が失われてしまうという欠点があることに加え、分子の空間的な情報を得ることができない。我々が取り組んでいる質量分析顕微鏡を用いたメタボローム解析は代謝物の空間的情報を失うことなく質量分析を直接行い、さらに組織の形態を保持したまま多段階MS/MS で代謝物の同定を行うことが可能である(AnalChem2006、2008 など)。

 我々はこれまでに癌、血管、脳の疾患病理標本もしくは生検標本を対象に質量分析顕微鏡によるメタボローム解析を適用し、ユニークな結果を得ることに成功したので発表議論したい。

多くの教職員、学生さんの参加を歓迎いたします。

世話人・連絡先
小児科学教室 浅野 喜造(2367)
微生物学教室 辻 孝雄(2432)