【転座染色体】

● 11/22の不均衡型転座は、通常、両親のどちらかが均衡型転座保因者である場合におこります。均衡型転座とは、22番と11番染色体のそれぞれの長腕上の特異的な切断点で、遺伝情報の場所が入れ換わっていることを意味しています。均衡型転座保因者は健常です。なぜなら、通常の位置にはないけれども、正しい量の遺伝情報が全てあるからです。不均衡の胎児を妊娠した場合、胎児は2本の正しい11番染色体と、2本の正しい22番染色体と、11と22番の両方からなる1本の過剰な染色体を持っています。その過剰な染色体は保因者である親から受け取ります。クリックしてください。図による解説があります。


● エマヌエル博士とザッカイ博士は以前に保因者の再発のリスクを研究しました。研究した家族では、女性の保因者が病気の新生児をもつリスクは4.3%、あるいは病気であったけれども核型を調べていない3例を含めると10%に達する可能性があると計算されました。男性保因者からはもう少し低いでしょう。女性保因者が、均衡型保因者の子供をもつ確率は68%であり、男性保因者の場合は77.8%でしょう。流産の率ですが、女性保因者のリスクは30.3%、男性保因者の配偶者では48.1%です。平均して自然流産は35.5%です。妊娠の結果が異常となるリスクは女性保因者では37.1%、男性保因者では51.9%、合わせると41.2%です。この数字は自然流産と不均衡型の子供の出生 を含めています。


REFERENCES: 

Zackai EH, Emanuel BS: Site-specific reciprocal translocation, t(11;22)(q23;q11), in several unrelated families with 3:1 meiotic disjunction. Am J Med Genet 1980. 

Iselius L, et al: The 11q;22q translocation: a collaborative study of 20 new cases and analysis of 110 families. 

● 私達の体の全ての細胞は、あらゆる細胞種で必要な機能を行なうための設計図の完全なセットを持っています。それらの設計図は遺伝性の物質で、すべての細胞に存在し、23対の染色体の中にあります。この設計図は”ゲノム”と呼ばれています。人のゲノムの中には約50000−100000の遺伝子が含まれています。全ての細胞には23対の染色体が含まれていますが、例外が生殖細胞、つまりお母さんの卵子、お父さんの精子です。精子や卵子は、それらが合体する時のために、通常の数の半分だけの染色体を持っています。そうしてできた新しい細胞は、新しい人間をつくるために適切な量の遺伝物質によりつくられているわけです。それぞれの両親は新しい赤ちゃんのために遺伝物質を半分ずつ与えます。


● 遺伝子をつくる物質の略式の化学名は”DNA”と呼ばれています。DNAとはデオキシリボ核酸という意味です。一つの染色体は基本的にはDNAのとても長い鎖からできています。


● 染色体は化学的な染色によって顕微鏡で見ることができます。それを”核型”と呼びます。染色体をみる細胞は、採血により得られます。染色した染色体は明るいバンドと濃いバンドの縞模様としてみえます。それぞれの染色体の対は決まった長さと特徴的な目印を持ち、それぞれのセットには番号が割り当てられます。1番は一番長い染色体で22番は最も短い染色体の一つです。また、それぞれの染色体はある場所に特徴的な”くびれ”を持っています。それを”セントロメア”と呼びます。染色体の長い方の部分をを長腕、もしくは”q”と呼び、短腕を”petite”にちなんで、”p”と呼びます。

染色体についての基礎 —エマヌエル症候群を理解するために