口蓋裂は、11/22不均衡転座の子供たちの中でも頻度の高い症状です(約50%)。口蓋裂とは口蓋(口の中の屋根に相当する部分)が形成されず、基本的には子供の口の中の屋根に穴が開いている状態に相当します。私たちのグループの中には、最初にピエールロバン連鎖と診断され、後に遺伝学的検査により11/22転座が確認された子供もいます。ピエールロバン連鎖は、他の多くの遺伝子疾患にもみられますが、遺伝子的な原因とは無関係にみられることもあります。


 私の娘マイアは、ピエールロバン連鎖(ロバン連鎖やピエールロバン症候群としても知られています。実際は「症候群」ではなく、「連鎖」です。)を伴った口蓋裂があり、それが最初の唯一の診断名でしたが、2才半の時にようやく遺伝学的検査により11/22転座があきらかになりました。ピエールロバン連鎖と診断される子供たちは、口蓋裂や、未発達のあご(小下顎症)があり、舌がのどの後ろに落ち込みやすく食事や呼吸が困難になり、無呼吸をおこします。口蓋裂は通常1才頃に手術をします。時々、子供たちはひどい呼吸困難に陥り、気管内挿管や気管切開を必要とすることがあります。子供が大きくなるにつれ、後退したあごは目立たなくなり、それに伴い、気道も成長します。


 私の娘マイアの場合は、出生時に気道がたいへん脆弱で鼻からNPチューブ(鼻咽頭)を舌の後ろまで挿入することで気道を確保して呼吸をしていました。舌口唇接着手術という方法も試みて、舌が後ろに落ち込んで気道を閉塞するのを防いでいました。しかし、その手術による方法は長続きしませんでした。2ヶ月の頃に彼女はかなり大きく成長し自分で呼吸できるようになりましたが、まだ呼吸には努力が必要でした。彼女はハーバーマン哺乳瓶のいう特殊な哺乳瓶を使っていました。これは、彼女がしっかり吸うことができないので、ミルクを口の中へ絞り出すためのものです。5ヶ月の頃まではずっと無呼吸モニターを装着していました。とくに睡眠中に彼女の気道が閉塞した場合にそれを発見するためです。長い間、彼女は睡眠時に、頭を後方に傾ける、という特別な姿勢を必要としました。こうすることで彼女は可能な限り多くの気道を得ることができ、よく私たちは彼女が眠っているときに彼女が呼吸しやすくなるように手助けをしました。現在、4才ですが、いまだに、彼女は風邪をひいたり、気管支炎になったり、とくにクループになったりすると、呼吸困難におちいります。

 
エマヌエル症候群でみられる口蓋裂・ピエールロバン連鎖

(この項に書いた情報は、患者さんのご家族との個人的なおつきあいや、症例報告から得たものです。私の娘に関する情報はひょっとしたら他の患者さんには当てはまらないかもしれません。それぞれの項目に関してはご自身の主治医である専門医に相談してください。ここにあげた情報は勉強のためにのみ使用してください。)