t(11;22)染色体転座
 
 

t(11:22)(q23;q11)染色体って何?

 11番染色体のq23と22番染色体のq11の部分で染色体がお互いに入れ替ったことをt(11;22)(q23;q11)染色体転座と呼びます。そして、その染色体を持ってみえる方を転座保因者と呼んでいます。

 少し、専門的用語となりますが、繋ぎ替った染色体を派生染色体と呼び、11番染色体のセントロメアをもつ派生染色体をder(11)、22番染色体のセントロメアをもつ派生染色体をder(22)と書きます(図4)。

図1

図2

図3

 t(11;22)(q23;q11)の方は、染色体が入れ替っただけですので、染色体の数や遺伝子の数に変化がないので、基本的には症状がありません。

 しかし、t(11:22)の保因者のかたがお子さんをもうける際に、流産を繰り返したり、不妊、乏・無精子症になることがあります。また、お子さんがエマヌエル症候群という病気をもたれることがあります。

 t(11;22)転座保因者の方の中には、一生保因者である事を知らずに過ごされる方もみえますが、最近では上記の理由から、お子さんをもうけられる際に染色体検査をして、初めてわかる方がみえます。

 正確には不明ですが、一般人の染色体に変化がみられる頻度(この転座に限らず)は約0.9%といわれており、一般のご夫婦の0.5%、2回流産を繰り返したご夫婦の場合は約5%に、ご夫婦のいずれかに染色体の変化(この転座だけではなく、さまざまな変化)が見られます。 

t(11:22)(q23;q11)保因者は病気になるの?

図4

子どもの染色体はどうなるの?

 t(11;22)保因者の方から産まれる子どもさんの染色体は、3パターンあります。

 1)保因者の方と同じ様に、2つの派生染色体をもってみえたり、2)一般の方と同じ染色体となる場合があり、それらの場合では、一般の方と同じで病気になりません。そして、3)派生染色体(der22)を1つ余分にもって産まれてくるとエマヌエル症候群のお子さんとなります。

 3つのうち、どの染色体になるかという頻度は、t(11;22)保因者が男性か女性かよって、若干違います。 男性保因者が子どもさんを持った場合、産まれてきた子の41.2%が保因者となり、3.6%がエマヌエル症候群のお子さんとなります。女性保因者の場合は、それぞれ55.4%、5.9%となります。残りは、一般の方と同様の染色体となります (下記の表)。

 また、出生することができる、3パターン以外の染色体になると、産まれてくる事は、難しくなります。そういった場合には、自然流産になります。そのために、カップルの一方が保因者の方である場合は流産を繰り返すことがありますが、1回の妊娠で、自然流産となる率は23-37%です。

染色体って何?

 私たちの体はすべて細胞でできていて、そのすべての細胞の中に核という部分があります。

 核の中には、生きていくために必要な体の構成成分の設計図である約2万もの遺伝子が書かれています。そして、遺伝子は、染色体 (図1) という形にパックされます。

 染色体はヒトでは、46本ありますので、 2万もの遺伝子は、46本の染色体に分けられて収納されています。46本は、22本の常染色体(男性も女性も共通の染色体)を2セットと2本の性染色体(女性はXX、男性はXY)からなります(図1)。そして、常染色体は、1番から22番まで番号が付けられています。

 それぞれの染色体は真ん中付近に、セントロメアと呼ばれる場所があり、そこからみて、短い方(通常は上側に記載されています)を短腕(p)とよび、長い方を(通常は下側に記載されています)を長腕(q)と呼んでいます(図2)。そしてさらに、長腕と短腕には、番地のように番号が振られています。

 先ほど、染色体は2セットと書きましたが、ヒトは、父親と母親から1セットずつの染色体を受け取ります(図3)。例えば、1番染色体だけをみると、お子さんは、父親の1番染色体の片方を1本もらい(図3の黒もしくは赤)、母親の1番染色体の片方を1本もらい(青もしくは緑)、2本受け継ぐことになります。そうやって、他の染色体もそれぞれ受け継がれます。

1         2         3           4         5


6     7      8      9      10    11    12


13  14   15     16   17   18


19  20   21    22             X     Y

1)転座保因者のかた

2)一般的な染色体を持つかた

3)エマヌエル症候群のかた

2010年12月20日月曜日