No.012

心エコー図検査にてパラシュート僧帽弁を疑う一症例
岐阜社会保険病院 検査科
○山本貴子 鈴木隆明 田中真由美 梅田江里子 梅田良子
 【はじめに】
 今回、我々は検診にて心雑音を指摘され、心エコー図検査にてパラシュート憎帽弁と考えられる一症例を経験したので報告する。

 【症例】
24歳、女性
主訴:特記すべきことなし
既往歴:特記すべきことなし
家族歴:特記すべきことなし
スポーツ歴:テニス(中学)バスケット(高校)
 [心音〕心尖部領域に最強点を有するLevine3度の収縮期雑音を認めた。
 [心電図〕異常所見なし
 [血圧〕102/55mmHg
 [胸部X‐P〕CTR 52%
 [CT〕異常所見なし

 【心エコー図所見】
使用装置は、YHP社製SONOS 1000,
探触子3.5MHzを用いた。Mモード法にて、 AOD 25mm、LAD 36mm、LVDs 48mm、LVDs 30mm、 IVST 9mm、LVPWT 9mm、LVEF 76%、DDR 80mm/s、であった。

左室短軸断層像にて僧帽弁開口部が後交連側に偏在し、乳頭筋レベルで後乳頭筋は明瞭に描出され、前乳頭筋は低形成であった。すべての腱索は後乳頭筋に付着していた。
左室長軸断層像では弁尖から後乳頭筋につながる弁尖の一部、又は、腱索と思われる袋状の構造物が観察された。憎帽弁前尖はbowingであった。
ドブラ一法にて、LV in flow 1.19m/s、LV out flow 0.82m/s RV in flow 0.65m/s、RV out flow 0.85m/s
カラードブラ一法にて、左房後壁方向に向かうII゜の憎帽弁逆流(MR)を認めた。

【考察】
 パラシュート僧帽弁はまれな先天性僧帽弁疾患で、単一一の乳頭筋にすべての腱索が付着しその形態的特徴から名付けられている。
 腱索は一般に肥厚し血行動態上は僧帽弁狭窄をきたすことが多い。
 パラシュートー憎帽弁に合併しやすい奇形として憎帽弁上狭窄輪、大動脈弁下狭窄、大動脈縮窄などがあり、この4病変のうち二つ以上を合併したものはShone症候群と呼ばれている。

 今回、我々が経験した症例では、僧帽弁狭窄や心拡大は見られず、他に合併症も見られなかつた。しかし、袋状の構造物とII゜のMRがみられるため、将来、弁組織に重篤な変化をきたす恐れがあることから、今後も心エコーによる注意深い観察が必要であると考える。