No.061

PSAと前立腺主検
遠州総合病院臨床検査科
○石川茂、川合信行、高林保行、駒形友彦
はじめに
 我が国における前立腺癌は近年急増の傾向にあり、その早期診断の必要性が、にわかに指摘されつつある。
前立腺癌のスクリ―ニングとしては、現在血中PSA(前立腺特異抗原)の測定が最も有用であるといわれている。今回演者らは、血中PSA値をもとに前立腺生検を行った患者のPSA値と病理診断結果とを比較し、その関係を検討した。

方法
 血中PSA値或いは画像診断的に、前立腺疾患が疑われた患者369名の前立腺生検を実施し、その病理診断結果とPSA値の関係を調べた。尚、血中PSAは、化学発光基質 (AMPPD)を用いた酵素免疫法(ルミパルスPSA:富士レピオ社)により測定した。

結果
1)生検による病理診断結果の内訳
生検数369名の病理診断結果は、前  立腺肥大症289名(78.32%)、前立腺  癌77名(20.87%)、前立腺炎2名(0.5  4%)、異常なし1名(0.27%)出あった。

2)疾患別PSA値(図-1)
   前立腺肥大症、前立腺癌、前立腺炎、異常なしと病理学的に診断された者のPSA平均値はそれぞれ7.4 ng/ml、32.7 ng/m1、10.9 ng/ml、1.2 ng/mlであり、前立腺疾患によりPSA値は  上昇し、特に癌では有意に高値を示した。

3)前立腺癌の分化度別PSA値(図-2)
   前立腺癌と診断された症例の、分化度別PSA平均値は、それぞれ高分化癌7.7 ng/ml、中分化癌28.0 ng/ml、低分化癌8 6.5 ng/m1 であり、分過度が 低くなるに従って、高値を示す結果となった。

まとめ
 血中PSA値は前立腺疾患をよく反映するものである。特に前立腺癌では高値を示すものが多く、分過度が低くなるに従って、その値は高くなる傾向が見られた。