No.086

IVHカテーテル先端(外側表面/内腔)の半定量的培養法の検討
清水市立病院検査技術科細菌検査室  同内科1  横浜労災病院 小児科2
◯大森 明美  土屋 憲  入山 正章  城 裕之2  勝又 広重1
【目的】 
 IVHカテーテル菌血症の原因菌の侵入経路として、

1.カテーテル刺入部の感染から菌がカテーテル外表面を伝わって侵入する経路、
2.輸液、輸液ライン、接続部等の汚染によりカテーテルの内腔を介して菌が侵入する経路、
3.他部位の感染巣から血液を介して侵入する経路

の3つの経路が考えられている。Makiらの考案した半定量的培養法は、上記1の経路を想定した培養法である。私共は、第35回中部臨床衛生検査学会にてMakiらの培養法の検討を報告したが、極めて少数の菌が検出されたにもかかわらず、IVHカテーテルの抜去により症状の改善が認められ、カテーテル感染が示唆された症例が存在した。Makiらの方法ではカテーテル内腔の汚染は反映されない。そこで、Makiらの方法と並行して、カテーテル内腔の簡便な半定量的培養を試みた。

【方法】
1996年10月〜1999年4月に提出されたIVHカテーテル先端302本について、下記2つの方法で48時間CO2培養を行った。
1.カテーテル外側表面の半定量培養(Makiらの方法):羊血液寒天培地上で、火炎滅菌したセッシで圧を加えながらカテーテルを回転させ、培地上を4回以上横断させる。
2.カテーテル内腔の半定量培養:Makiらの方法が終了後、ディスポーザブル注射器を用いてカテーテル内を通した生理食塩水(2ml)を3000回転10分遠心分離し、沈渣をすべて羊血液寒天培地上に塗り広げる。

【結果】 
 302例中83例が培養陽性であった。このうち25例はカテーテル外側表面の半定量培養で陰性または少数菌(12コロニー以下)が検出された。25例中15例は内腔の半定量培養で菌が検出され(うち7例は1000コロニー以上検出)、同時に血液培養が行われた8例中7例から同一菌が検出された。また15例中11例は酵母様真菌であった。25例中残りの10例は外側のみから少数菌(9例がCNS)が検出され、内腔の培養は陰性であった。血液培養陽性例はなかった。

【考察】
  Makiらの方法で陰性であった場合、すなわちカテーテル外側表面の培養が陰性かあるいはきわめて少数の菌が発育した場合でも、カテーテル内腔からは多数の菌が検出されることが示された。これら15例中7例では血液培養でカテーテル内腔から検出された菌と同一の菌が検出されたことから、カテーテル内腔の汚染によるIVHカテーテル菌血症であると考えられた。

【結論】  IVHカテーテルの培養は、IVHカテーテル菌血症を予測できる方法でなければならない。Makiらの半定量的培養法とカテーテル内腔の半定量的培養法の併用は有効であると考えられた。


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