No.sp-1-3

自律神経系検査(R-R INT,SSR)の方法と臨床的意義
紀南病院組合立紀南病院 検査科 神経生理検査室
岡本 恵助
【はじめに】
 糖尿病神経障害においても、自律神経障害は特に自覚症状を伴わずに潜在的に進行していることが多い。糖尿病の自律神経障害の臨床症状は起立性低血圧、瞳孔機能異常、便秘、または下痢、排尿障害、インポテンツ、低血糖症状の欠如、無痛性心筋梗塞、不整脈による突然死などで、QOLや生命予後を左右する。

 糖尿病は病初期から一次的に軸索、特に無髄及び小径有髄神経繊維を障害する。糖尿病の末梢神経障害の評価では大径有髄神経の検査である神経伝導検査よりも自律神経機能検査のほうが早期に異常を示す場合がある。
 自律神経機能検査は無症候の内にその病態を察知し、さまざまな自律神経障害を捉えることを目的としている。

【交感神経皮膚反応】
 SSR(sympathetic skin responce)
 SSRは求心性の各種刺激によるpolysynapticな体性−交感神経反射である。その求心路は感覚神経で後根から脊髄に入り、脊髄を上行し視床を経て大脳皮質に到達する。大脳皮質で刺激を認知すると同時に精神性発汗の機構が始動する。

 視床下部の精神発汗中枢の賦活化がおき、遠心路として脳幹部、脊髄中間質外側核、脊髄前根・白交通枝、交感神経節、節後無髄C繊維を介して皮膚交感神経活動が惹起される。
 SSRでは皮膚交感神経活動のうち、手掌に発汗が生じると、相対的な皮膚電位変化として捉えることができる。

 電極位置は、通常、探査電極を精神発汗がおきやすい手掌や足底に、基準電極を手背や足背に置く。正中刺激や三叉神経(眼窩上神経)の電気刺激で筋電計により2〜3相性の波を導出し、その潜時、振幅、左右差によって結果を解釈する。施行上の注意点としては安静覚醒状態で“びっくり”させることが重要であり、電気刺激を慣れの現象に気を付け、ランダムに何度か刺激して最大振幅で評価する。


【心電図R-R間隔検査】 
   R-R INT (R-R interval)
 洞調律の心拍は生理的な呼吸不整脈による“ゆらぎ”が存在する。この“ゆらぎ”は脳幹から、迷走神経心臓枝を経由する副交感神経により生じる。
 周波数分析をすると高周波成分(HF,>0.15Hz)と低周波成分(LF,0.04〜0.15Hz)が含まれるが、心臓迷走神経活動はHF帯域の成分にあたる。一般的には心電計に組み込まれているCVR-Rが用いられているが、R-R50を代用する場合もある。

 CVR-Rは心電図を用いて、連続する心拍数の心電図R-R間隔を集計し、そのR-R間隔値を標準偏差/平均R-R間隔×100(%)によって求める。心拍数は100回であったり1分間であったり施設によって設定する。施行上の注意点として、雑音などの外的刺激をさけ、被険者に緊張を与えないように留意する必要がある。体動、咳、緊張による過度の嚥下回数の増加、眠らないように気を付けて行う。
 CVR-R値は加齢による変化を呈するので評価に当たっては年齢階層ごとの基準値が必要である。

【まとめ】
糖尿病性自律神経障害の評価に汎用されるSSRとCVR-Rについての概説を試みた。

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