No.sp-9-31

円柱系 1)基本的7分類の評価について
大垣市民病院 医療技術部診療検査科
林博文
 【はじめに】
 円柱は、尿細管腔内で尿細管出来のTamm-Horsfallムコ蛋白と、血漿蛋白であるアルプミンが凝固沈澱したものが基質となり、細胞およびその変性成分が包埋されたものである。
 円柱の存在は、尿細管腔に一時的な閉塞があったことを意味し、尿細管上皮や変形赤血球などとならび腎実質障害を示唆する所見として、尿沈流の中でも特に重要で臨床的意義が高い。

 【円柱の分類】
 尿沈渣標準法(JCCLS)ではヽ基本的7分類の硝子円柱、上皮円柱、穎粒円柱、蝋様円柱、脂肪円柱、赤血球円柱、白血球円柱とその他の円柱に分類される。

 【円柱の臨床的意義】
@硝子円柱り慢生腎炎、ネフローゼ症候群などで増加するが、特定の疾患に特異的にみられるものではなく、健常人でもみられたりすることから、一般的に臨床的意義が低い。しかし、数量的評価を加味することで臨床的価値が上げることができる。

A上皮円柱:糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、ループス腎炎、急性尿細管壊死、肝・胆道疾患などで多くみられる。やはり、数量を加味することが臨床的に重要な診断材料となる。

B顆粒円柱:糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症などでみられ、腎実質障害の存在が示唆される。数量を加味するこも重要。

C蝋様円柱:ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎の重症例、腎下全、糖尿病性腎症などの重症例でみられる。この蝋様円柱の存在は、重症の腎障害を意味し、臨床的意義が大きい。

D脂肪円柱:ネフローゼ症候群などの高蛋白尿を伴う腎疾患でみられ、臨床的意義が大きい。ズグン。染色、偏光顕微鏡下にて確認。

E赤血球円柱:糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎などの出血を伴う腎疾患にみられ、ネフロンに出血のあること意味する。糸球体からの出血の場合は、背景に変形赤血球を認めることがある。

F白血球円柱:腎孟腎炎、糸球体腎炎などでみられ、ネフロンに感染や炎症のあること意味する。


 【おわりに】
 尿沈渣には、定性的・定量的・形態学的要素がある。この3要素が適切に絡み合って、成分分類がなされ、臨床の場で役立っていることが、臨床的意義の高い適切な分類であると思われる。
 尿沈渣標準法(JCCLS)の円柱の基本的7分類においても同様で、臨床の場でこの分類が役立つていることが評価につながる。現在、その評価は高いものと確信している。

 今後の課題として、近年の自動化・システム化の普及に伴い、尿沈渣顕微鏡検査は、フローサイトメトリー法による尿中有形成分定量測定が躍進すると思われる。これにより、尿沈渣も定量的要素が高まり、円柱においても成績記載法の改善が必要となる。

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