No.022

血管免疫芽球型T細胞リンパ腫(AITL)の一例
愛知医科大学附属病院 中央臨床検査部1) 臨床検査医学2)
○ 加藤 香1) 今井 正人1) 清水 宏伸1) 岸 孝彦1) 浅沼 春樹1) 廣岡 良文2)
【はじめに】
血管免疫芽球型T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma : AITL)は新WHO分類において末梢T細胞 / NK細胞腫瘍に分類されているT細胞性腫瘍である。その臨床像は、全身リンパ節腫大、肝脾腫、発熱、多クローン性高γグロブリン血症などといった多様な症状を呈することが知られている。

今回我々は、末梢中に腫瘍細胞の出現を見たAITLの1症例を経験したので報告する。

【症例】72歳、男性 
【主訴】リンパ節腫脹 
【既往歴】強皮症、虫垂炎
【現病歴】平成13年11月上旬頃より頚部リンパ節腫大に気づき当院受診。徐々に増大してきたため悪性リンパ腫を疑い精査目的で11月30日当院入院となった。

【入院時検査所見】
WBC 15.7×103 /μl、RBC 3.23×106 /μl、Hb 10.4 g/dl、MCV 95.3 fl、PLT 204×103 /μl、TP 8.3 g/dl、Alb 2.2 g/dl、BUN 83.5mg/dl、Cre 6.87mg/dl、Ca 12.1mg/dl、抗核抗体 陽性、IgG 4628mg/dl、IL-2レセプター 31400 U/ml、直接クームス 陽性。

【診断までの経過】
入院時の血液像検査にて中〜大型で核異型の強い異型細胞の出現が4%認められた。そのため、追加実施した末梢血リンパ球サブセット検査ではCD4高値およびHTLV-1抗体弱陽性、さらに、高Ca血症であったことからATL/ATLLを疑った。そこで、骨髄浸潤の確認目的で骨髄検査を実施したところ、形質細胞の著明な増殖像を呈しており、多発性骨髄腫(MM)を疑わせる所見であった。
しかし、血液検査では高γグロブリン血症を呈していたものの、Mピークおよび尿中B-J蛋白は認められず、さらに骨髄表面マーカー検査でκおよびλ抗体に陽性率の偏りが見られなかったことから、形質細胞の増加は反応性によるものであると考えられた。また、HTLV-1抗体が弱陽性を示していたことから確認のためにサザンブロット法を実施したが、HTLV-1ウィルスDNAは検出されなかったためATLは否定され、他のT細胞性腫瘍であると考えられた。

リンパ節生検による病理組織検査では、大型で核小体著明、好塩基性細胞質を有する細胞の瀰漫性な増生と小〜中型のリンパ球様細胞の混在が認められた。また、FDC(濾胞樹状細胞)免疫染色ではAITLに特徴的な濾胞樹状細胞の不規則な増生が認められた。さらに、サザンブロット法による遺伝子解析ではT細胞レセプターの再構成が認められ、以上よりAITLと診断された。

【考察・まとめ】
AITLは腫瘍細胞の産生するサイトカイン等により多彩な臨床症状および検査値異常が引き起こされる。そのため、診断には臨床症状、病理組織所見、免疫学的所見、分子遺伝学的所見等の結果から総合的に判断する必要がある。本症例は末梢血血液像ではATL、骨髄像ではMM様の形態像を示し、その診断に患者情報や他の検査結果が重要であることを再認識した症例であった。 

【連絡先】
0561-62-3311 内線2751 http://www2.aichi-med-u.ac.jp/kensa/index.html