2016 藤田保健衛生大学医学部 第1学年
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生命倫理学- 114 -生命倫理学[教育目標] 倫理学とはもともとギリシャではエートス(慣習)の学であり、生活の規則(人の道)を対象とする学問である。そして生命倫理学は、人間の生命に関する慣習を扱う。ただし、現在ではこの生命に関する価値観は、医療の高度化にともない再考を迫られている。それゆえ現在の倫理観だけでなく、将来の倫理観を考察するのも、生命倫理学の目的でもある。授業では、生命に関する倫理観を、さまざまな角度から考察する。そして、医療に携わる人間が持つべき基本的な思考方法を身につけてもらう。そのために、この授業では、たんに講義を聴くだけではなく、自ら考える姿勢を育てるために、グループワークを取り入れている。 授業は、大きく5つのテーマに分けられる。生殖補助医療の倫理学、人工妊娠中絶の倫理学、移植医療の倫理学、終末期医療の倫理学、遺伝子医療の倫理学である。各テーマは、講義・視覚教材・討論発表を基本ユニットとする。討論発表では、コアケースを用意するので、それをもとにグループでケースを想像し発展させ、発表してもらう。コアケースを発展させるために、調べて、理由づけを深めてもらう。 また、移植医療のテーマを看護専門学校の学生との合同授業とする予定である。その機会に異なった視点からの意見に耳を傾ける傾聴的態度を養うこと、また、将来、同僚となる看護師とのチーム医療の原型を体験することを目的としている。また、いくつかのテーマでは、臨床で働くコメディカル(看護師、移植コーディネーター、遺伝カウンセラー、臨床研究センター)から話を聞く場も設けているので、より専門的な話題を聴くことが出来る。2学年から動物実験を行うことが少なくないので動物実験にともなう動物の倫理学と、医学研究の倫理学も講義する。[学習目標] 倫理の基本は、「相手の立場に立つこと」である。医療者は、医療者として患者に接するだけではなく、患者の立場に立って、患者と医療者との関係を「想像して」することが重要である。さらに、患者の家族の立場に身をおいて、家族から患者と医療者との関係を想像してみよう。そのように医療者以外の立場から医療者を照射することによって、医療者にとって必要な倫理観が見えてくる。 医療と医学研究における倫理の重要性を学ぶ。患者の基本的権利を熟知し、これらに関する現状の問題点を学ぶ。患者のために全力を尽くす医師に求められる医師の義務と裁量権に関する基本的態度、習慣、考え方と知識を身につけてもらう。将来、患者本位の医療を実践できるように、適切な説明を行った上で主体的な同意をうるために、対話能力と必要な態度、考え方を身につける、などが更なる目標である。[身につける能力] 卒業コンピテンス・コンピテンシー(別表1)参照

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