2016 藤田保健衛生大学医学部 第1学年
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読書ゼミナール- 85 -5)飯 塚 成 志(臨床医学総論)前半9コマ「医学生」南木佳士著(文春文庫) “南木佳士氏は1951年生まれ。新設の秋田大学医学部を第2期生として卒業し、現在長野県の佐久総合病院に勤務する医師です。一方作家としても活躍しており、1989年には「ダイヤモンドダスト」で芥川賞を受賞しました。今回取り上げる小説は1993年刊行。秋田大学医学部第2期生4名が主人公で、医師を目指し卒業するまでの学生生活、そして15年後の彼らの姿が綴られています。純文学作家であった著者が「意識して大衆小説にした」というとおり、読みやすい本です。けっして誇張にすぎず、素直に学生たちの生活・心情が描かれています。医学部にはいったばかりのみなさんにはこれから自分自身の医学部生活、医師像を作っていく上で、うってつけの本ではないかと思います。 一方著者は、医師・芥川賞作家という輝かしいキャリアとは裏腹に、受賞後自ら大変苦しい迷路の中に迷い込んでいきます。何があったのか。どうやって「医学生」にたどり着いたのか。著者の生き方、考え方についても触れながら、読み進めていくことができればと思います。”  吉 田 友 昭(生物学)後半9コマ「小泉八雲集」小泉八雲著 上田和夫訳  新潮文庫 “ギリシャ系のイギリス人、ラフカディオ・ハーンは、明治中期に来日して帰化し、日本に関係した多くの著作を残した人です。中でも民間に伝わる伝承を作品化した、「怪談」などは有名で、「雪女」、「耳なし芳一のはなし」などは知っている人も多いかと思います。日本語自体は訳者によるものですが、短編でとっつきやすいわりには格調高い表現が多くて、大学生が取り組んでおかしくない作品集です。また、この文庫には「日本人の微笑」をはじめとする評論や挿話がいくつか含まれていて、江戸、明治、大正期の日本人のメンタリティー――もちろんそれは現在につながるもののわけですが――を考察するのに大変優れた材料を与えてくれます。これらの評論を軸にして、意見交換をしながら進めていく予定です。前半と同様、「聴く」機会も作りたいので、「怪談」の中の作品の朗読音源なども活用しながら、日本語リテラシーを育んで行ければと思います。”

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