2016 藤田保健衛生大学医学部 第1学年
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読書ゼミナール- 88 -8)中 島   昭 (生理化学)前半9コマ「脳には妙なクセがある」池谷裕二著 扶桑新書 “著者の池谷裕二先生をご存知でしょうか?これまで受験勉強が忙しく、あまりテレビをご覧になっていないと思いますが、テレビに出演されることが多いので、今後気づかれることがあるかも知れません。 現職は東京大学薬学部教授で、私も日本神経科学会のシンポジウムで講演を聞いたことがあります。この手の一般向けの本を書く方は、大学に所属していても研究をあまりしていない方も多くいます。しかし、この方は別格で、講演はご自分の研究内容についてでしたが、「神経細胞のネットワークと記憶の発生」に関する先進的でとても興味深い内容でした。最先端の研究している著者が積極的にマスコミに登場して情報発信をするのは、将来を担う若者に科学に興味を持ってもらいたいという気持ちが強いためです。本書は一般向けの本であり、脳について現在分かっていることが極めて平易に書かれていて、楽しく読み進むことができます。ただ単に面白いだけでなく、200以上の論文が引用され、事実に基づいたしっかりとした内容となっています。第7章の「脳は妙に自己満足する」では、好みの洋服が選ばれる理由を、脳に発生する「行動」と「感情」の矛盾から解説していて、私も妙に納得してしまいました。もちろん、解説は著者の主観ではなく、論文に報告されている科学的事実に基づいてなされたものです。”  原 田 信 広(生化学)後半9コマ「「無限」に魅入られた天才数学者たち」アミール・D・アクゼル著 青木薫訳早川書房 “この授業では「数学」を学習・議論することはありません。もう少し基本に立ち返って「数」を考えてみたいと思います。コンピュータは二進法で計算を行いますが、私達が「算数」で使用する十進法はどうして確立していったのでしょうか?両手で10本の指があり、実体化する「数」として都合が良かったのかもしれません。では実体化が困難な「零」や「無限」という概念はどうして確立して行ったのでしょう? 本セミナーで扱うアクゼル著「「無限」に魅入られた天才数学者たち」は、人類が「無限」をどのようにしてとらえてきたかを概括してあります。ギリシャ時代のゼノンからユダヤ教のカバラ、ガリレオ、リーマン、ワイエルシュトラウス、そして「連続体仮説」などで無限の概念を大きく変えたカントールの無限との対峙がひも解かれ、最後にはゲーデルやコーエンといった数学者たちの苦悩と果敢な挑戦が描かれています。一緒に読書しながら「数」に対する考え方、論理的思考法の推移を確かめて行きたいと思います。”

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