2016 藤田保健衛生大学医学部 第1学年
98/250

読書ゼミナール- 89 -9)吉 田 友 昭(生物学)前半9コマ「あるがままに 自閉症です」 東田直樹著 エスコアール出版部 “自閉症の著者が、幼少期からの記憶を振り返りながら自らの内面を吐露した稀有な随筆です。多くの自閉症の人は対面して会話をすることは正常にできないけれど、言語を操って思考することに何の支障もないので、著者は、自分のアイデンティティと周囲の受け取り方のズレの意味をきちんと分析して読者に示してくれます。その内容は、もしかして我々も心の中のほんの一部のきしみとして持っている「オリ」のようなものにつながるものなのではないかと感じてしまいます。 本文から引用:ビールを、僕がわざと「ジュース」と言うのは「違う、ビール」と言ってもらいたいからです。また、自分のではないお皿だとわかっているのに、自分のところに置こうとするのも「それ、お母さんの」と言ってほしいからです。(中略) 答えの内容が知りたいのではなく、その言葉のリズムや音の響きが僕にとっては重要だから、思った音が聴けるまで繰り返してしまいます。 等々 文章は全体に平易で短いのですが、その内容は人間の内面の本質、認知、自我、尊厳などについて考え直させる、鋭い刃物のような輝きを持っています。将来医療に携わる上での参考という面もありますが、皆さん自らの内省の材料としてもらい、話し合いを通じてお互いを高めあうことができれば幸いです。また、本書の中で出てくる「聴く」ことの意味はおそらく大変大きいので、皆さん自身にも「聴いて思い浮かべる」体験をしてもらう予定です。”  鈴 木 茂 孝(コンピュータ情報処理学)後半9コマ「人生つれづれニャるままに 兼好法師」講談社ビーシー編 講談社 “書店の中でも目立つ、一見、受けねらい?と思わせる本ですが、中身は有名な人生訓である「徒然草」の現代語訳と写真集と原文とで構成されています。『徒然草』は吉田兼好により約700年前に書かれた全243段からなる随筆であることはご存知の通りです。中高学校で古典の授業で習ったことはあるはずですが、あらためて読もうとするには抵抗がある方が多いと思います。もともと、徒然なるままに記されたものですから、内容は特別なものではなく、「男女」、「仕事」、「人間関係」など普遍的なものです。 「徒然草」の中から代表的な60編を取り上げ、絶妙な猫の写真と併せて解説しています。猫に癒されつつ、先人の知恵をもらい、気楽に過ごしましょう。”

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 98

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です