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脳血管障害(直達手術)

脳動脈瘤

 近年、MRIが多くの医療機関で導入され、脳ドックの普及もあり、未破裂脳動脈瘤の発見も多くなっています。未破裂脳動脈瘤の破裂率には諸説ありますが、治療適応については一般的に脳ドックのガイドラインや脳卒中治療ガイドラインで示されているとおりす。しかしながら、5mm未満の動脈瘤でも破裂してクモ膜下出血の状態で搬送されてくる患者さんがあり、4mm前後の動脈瘤について経過観察とするのか手術をするのか慎重な判断が必要だと考えています。また、御高齢であっても全身状態が良ければ、当院での手術成績は良好で、先代の佐野教授の教えにより手術手技は確立されたものと考えています。ここ数年は、蛍光顕微鏡が導入され、さらに細かな血管に対しても血流の確認が可能となり、手術の安全性・確実性が増しています。とは言っても、他病院で手術を断られるような脳の深い場所にある動脈瘤や巨大な動脈瘤は、やはり治療が難しい場合が多いのは事実です。当院ではスタッフの豊富な経験を生かし、さまざまな手術アプローチや工夫によって、最善策をとるように心掛けています。

 また、一般的に未破裂脳動脈瘤の治療は、開頭手術の得意な施設ではクリッピング術、血管内治療の得意な施設ではコイル塞栓術に偏る傾向がありますが、当院では、開頭手術のみならず、血管内治療も盛んに行われており、患者さんの状態に合った治療の選択が可能です。

 脳動脈瘤の破裂によるクモ膜下出血については、年間ほぼ100例の患者さんが来院されていますが、術前術後管理や手術手技が確立された今もなお、来院時重症であった患者さんの社会復帰は困難なことが多く、また中等症で手術が無事に終わった患者さんでも脳血管攣縮によって脳梗塞を生じ後遺症が残る場合がある(10%前後)のが現状です。このような患者さんを診るたびに、さらなる脳ドックの普及を願うところです。

■脳動脈瘤クリッピング術
図1   図2
手術用顕微鏡で脳のシワ(シルビウス裂)を開放し脳動脈瘤を確認(右は蛍光顕微鏡での写真)

図3   図4
2本のクリップを使用してできるだけ元々の血管の状態に戻すように動脈瘤を閉塞します
(右図:内視鏡を用いて顕微鏡で見づらい部分を確認)

図5   図6
クリッピング後、蛍光色素が動脈瘤内へ流入しないことを確認

脳動静脈奇形

 脳動静脈奇形は、脳血管障害の直達手術の中で、最も難易度の高い手術の一つと言えます。脳出血や痙攣発作で発症したり、脳ドックなどで発見されたりすることが多いのですが、治療を安全に行うために脳血管内治療による塞栓術を併用して、綿密な治療計画を立てることが重要と考えています。術前の計画はもちろん、手術中の状況に応じた作法に則って処理を進めていきます。最近では蛍光顕微鏡を用いた血流解析ソフトを利用して術中画像データの裏付けをを参考に、これまでの経験によって得られた手術手技により、安全な手術を行うとともに、新しい手術戦略の開発に力を入れています。

AVM摘出術
図1   dumyblock
摘出前の脳表の状態:ナイダス(脳動静脈奇形の本体)が脳表に顔を出しています

図2   図3
蛍光顕微鏡の血流解析ソフト(FLOW800)
左 流入血管の遮断前:ナイダス内への血流が早いのがわかります
右 脳表から捕らえられる流入動脈の遮断後:流出静脈の色が変化しナイダス内への血流速度が低下したことが確認できます

図4   dumyblock
ナイダスの摘出後:安全に摘出されました

内頚動脈狭窄症

頚部内頚動脈狭窄症は、頚部内頚動脈分岐部に動脈硬化性粥状(プラーク)により血管の狭窄を生じ、これが原因で脳血流量の低下をきたしたり、頭蓋内塞栓の原因となったりして脳梗塞を起こす原因となりうる疾患です。以前は、欧米人に多い疾患とされてきましたが、食生活の欧米化にしたがい徐々に増加傾向を示しています。
狭窄の程度が強くなると、その後の脳梗塞を予防するために外科的治療が必要となりますがその標準的治療は内頚動脈内膜剥離術( Carotid endarterectomy:CEA )です。
心疾患や呼吸器疾患が既往にあり、全身麻酔のリスクが高い患者様や、CEAハイリスクの患者様には、頚動脈ステント留置術(Carotid Artery Stenting:CAS)を行っております。

図1   図2
左内頚動脈狭窄症術前   CEA術後

図1   図2
術中写真   プラーク摘出

内頚動脈内膜剥離術(CEA)手術件数
2012~2014年:47件

各種バイパス手術

1.脳血行再建術
  • (ⅰ) 内頚動脈閉塞症、中大脳動脈閉塞症が原因となる脳梗塞再発予防
    浅側頭動脈‐中大脳動脈吻合術(STA-MCA Bypass)(下図)
  • (ⅱ) もやもや病
    直接血行再建術(STA-MCA Bypass)
    間接血行再建術:側頭筋や帽状腱膜、硬膜を脳表に接触させ、新しく血管のネットワークを作り出す手術です。
図1   図2
浅側頭動脈   浅側頭動脈と中大脳動脈

図1   図2
STA-MCA Bypass術後   STA-MCA Bypass術後
2.特殊な脳血行再建術

通常の脳動脈瘤頚部クリッピング術やコイル塞栓術で治療困難な大型脳動脈瘤や 25mmを超える巨大脳動脈瘤、血栓化動脈瘤また頭蓋底部腫瘍で内頚動脈周囲に浸潤している腫瘍では、内頚動脈そのものの再建術が必要になる場合があります。そのような例では、橈骨動脈や下肢の静脈を使用し再建術を行います。(High Flow Bypass)

図1   図2
60㎜を超える内頚動脈巨大血栓化動脈瘤
他院で9年前にコイル(図紫)塞栓術後増大
  橈骨動脈で血行再建(図矢印)

各種バイパス手術 手術件数
2010~2014年:95件(巨大動脈瘤の対するHigh Flow Bypass、Low Flow Bypass含む)