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あたらしい塞栓コイル(EDコイル)の開発研究
[定藤 章代 准教授]

デバイスの開発研究

 筆者が大学院在学中(1990~1993)、指導教官である滝和郎先生(現 三重大学脳神経外科教授)のご指導のもとで血管内手術に用いるデバイスの開発研究をしていたなかで、カネカメディックス社と共同で離脱式コイルの研究をしていたのが最終的にEDコイルという商品名で一般臨床の場で使用されるようになりました。図1が雑種犬の頚動脈に手術的に動脈瘤を作成し(左右の頚動脈をend-to-side anastomosisしたところにvenous pouchを縫い付ける)、これをEDコイルで塞栓したところです。

 そのほかに、電気凝固による血栓形成が強く起るような違ったタイプのコイルをつくり、塞栓効果の違いを比較しました(図2)。結果的に、電気的血栓は再開通を起こしやすいため、コイルのみで塞栓するのが良いという結論を出しました。

 また、脳動静脈奇形の塞栓術に使う液体塞栓物質も作り、今後使われるようになるEVAL(商品名Onyx)のように有機溶媒を含むものとは異なるもので、生体への影響の小さいものを開発しました。

 開発したデバイスが実際に臨床の場で使用されるまでには安全性や効果に関する基礎データの収集や臨床治験などが必要で、私が行ったことは、発案および臨床応用が可能かどうかを検討してゆく段階の研究といえます。

 
図1:Dogの頚動脈に動脈瘤を手術的に作成し、EDコイルで閉塞したところ   図2:同様に作成した動脈瘤を,電気凝固による血栓とコイルで閉塞したところ

EDコイルの特徴

 離脱式コイルとは脳動脈瘤を血管の中から詰めて破裂を予防するためのデバイスで、1990年代初めに米国UCLAでGDC(Guglielmi Detachable Coil)という離脱式コイルが開発されたのが最初です。以来、海外の数社から種々の離脱機構のコイルが出ており、その形状や大きさ、太さも様々なものがあります。一つの動脈瘤を詰めるには数本のコイルが必要ですが、これら様々なコイルをその特性に応じて選択し、異なる種類のものを併用することも多々あります。

 ED coilの特徴は、その離脱機構の特殊性とコイルが非常に柔らかいことにあります。

 離脱機構は、コイルとそれを押し出すためのワイヤを医療用で用いられるプラスチックの一種であるPVA(ポリビニルアルコール)の小さい塊で接続し、ワイヤの手許側から高周波電流を通電することで瞬時にPVAが溶断し、コイル部分を離脱させるというものです(図3)。

 また、コイルが柔軟であるため、動脈瘤内を密に充填することができ、コイルを進めるときのカテーテルの押し戻しが小さく、安全性および治療効果を高めるためことができます。

 そして、もうひとつ特殊なことは唯一の国産のコイルであることです。血管内手術を専門とする医師たちの意見を迅速に柔軟に取り入れ、よりよいデバイスとして発展させることが可能です。現実に絶え間なく改良が加わっており、近年は新たなアンフィニというタイプが開発されました。これは、大きなループを描く長いコイルで、複雑な形の動脈瘤にもフィットしやすく一回に使用するコイルの本数が少なくて済むという大きな利点があります(図4 , 5)。

 今後は、ネックの広い動脈瘤に対してステントを併用した治療が可能になっており、柔軟でカテーテルの押し戻しの少ないED coilの有用性が一層発揮されることが期待されます。

図3:EDコイルの離脱機構
図4:EDコイル外観
 
図5:脳動脈瘤
治療前(左)と13本のEDコイルで塞栓後(右) 動脈瘤(矢印)は約10mm
参考文献
○ AJNR 14, 334-336, 1993
○ Neuroradiology 36, 634-641, 1994
○ AJNR 16, 1459-1462, 1995
○ Journal of Neurovascular Disease 2 (6), 235-245, 1997
○ 新しい医療機器研究 Research of New Medical Devices 6 (1), 25~37, 1999
○ 脳神経外科ジャーナル 16(12), 954-958, 2007