装具・補装具

はじめに
 
対麻痺者のリハビリテーションは,専ら車椅子による移動手段の獲得をゴールにおいたものが主であったが,近年では再び,対麻痺者の立位・歩行再建というテーマが注目されるようになってきた.
 そこで,我々は装具による立位・歩行再建に着目し,特に内側系と呼ばれる内側単股継手付き長下肢装具(MSH-KAFO)によるアプローチを試み,仮想軸機構採用したPrimewalk(立松製作所)を完成させた.

構造
 
硬性の体幹部を持たず,両側の長下肢装具を着脱可能な一つの継手で連結するシンプルな構造
  ・重量:668g(素材はジュラルミンを使用し,walkaboutより軽量化することに成功)
  ・可動域:屈曲-伸展方向に最大40度(角度調節機構があり,歩幅は3度ずつ調節可能)
  ・仮想軸:股関節上60mm,ベアリングを内臓したスライド機構
 
 <長下肢装具> 
  大腿部は四辺形のプラスチック製,スイスロック膝継手,プラスチック製の短下肢装具から成る.
  
特徴
 ・股関節の軸が一軸(屈曲-伸展方向)に制限され,立位の側方安定性が良好.
 ・下肢に随意性がなくても交互歩行が可能
   片側下肢に重心を移動させることで連結された反対側の下肢が離床し,慣性の働きで振り子様に振り出される.
 ・シンプルな外形と車椅子での持ち運び,自己での装具着脱が可能.

適応
 C7,C8からL1,L2の間にあると考えられる.しかし,各個人の身体能力や立位・歩行に対するモチベーションによって,機能獲得が大きく左右されること.
 *体重を支えられる上肢筋力やADLが自立できる身体能力があること,体幹・股関節に強い痙性(屈曲パターン)や股・膝・足関節に可動域制限(特に股・膝関節の屈曲拘縮のないことが条件となる.

補装具
  ・平行棒,歩行器,ロフストランド杖
    立ち上がり,立位保持,歩行時に上肢の支持として使用する.
  ・骨盤帯(コルセット)
    体幹の対称性が得られている例では,柔らかい素材を用いる.
    コルセットと装具の大腿外側とをゴムバンドで連結し,振り出しの際の骨盤挙上を補助させることに利用できる.
  ・シューズ
    足底部が広いものを使用する.