PW 訓練方法
 PWを用いた立位・歩行獲得は、肺・循環器の改善、排尿・排便の促通、骨委縮の予防、起立性低血圧の改善、筋活動促通等、諸氏によって多くの利点が報告されている.
 また,日常生活を車椅子でおくる脊髄損傷患者の精神的ストレス緩和にも多大な貢献をしており、立位・歩行訓練の身体的、精神的有用性が理解できる.
 現在、脊髄損傷患者の歩行再建法は、装具、FES(functional electrical stimulation)、HAS(hybrid assistive system)が主なもので、医学系、工学系、様々な分野からの介入が行われている.
 各系の進歩は目覚しく、将来的な歩行再建獲得を視野に入れた歩行訓練は重要である.

訓練方法
 PWを用いた訓練は基礎訓練と立位・歩行訓練に分かれる.
 基礎訓練とは、脊髄損傷患者の身体能力(循環能・基礎筋力向上・伸張性獲得・バランス等)の向上、車椅子を用いた各日常生活動作訓練を指す.
 また,立位・歩行訓練とはPWを用いた立位で行う訓練を指す.
 以下に不全、頚・胸・腰髄損傷、不全・完全 胸・腰髄損傷に分け、具体的な訓練を述べる.
    
<立位・歩行訓練>
1. 高位完全頸髄損傷患者(C5・6)

・PWを装着しての平行棒内立位訓練
・「C-posuture」の獲得〜立位時間の延長へ

2. 低位完全頸髄損傷患者(C6・7)
・1.に加えて平行棒内での歩行訓練.
  左手前方→右手後方→右足振り出し→右手前方→左手後方→左足振り出しの6動作歩行訓練


  慣れてきたら左手前方→右足振り出し→右手前方→左足振り出しの4動作歩行訓練


3. 完全胸・腰髄損傷患者
・自分でPWを装着し,平行棒内立位訓練
・「C-posuture」の獲得〜立位時間の延長へ(バスケットボールを用いたキャッチボール、静止立位で上肢を用いた前後左右への重心移動・バランス訓練など)
・平行棒内で重心の側方移動訓練
 (重心の側方移動→下肢の振り出し方法を学習)
・ 平行棒内歩行から平地杖歩行へ
  平行棒外では支持面を広くとるためにロフストランド杖を用いる.
  左手前方→右手後方→右足振り出し→右手前方→左手後方→左足振り出しの6動作歩行訓練


  慣れてきたら左手前方→右足振り出し→右手前方→左足振り出しの4動作歩行訓練


  恐怖心から重心移動が困難、歩幅が小さくなるケースがあるためバランス訓練を確実に行い、また腰紐等を用い、安全面に考慮する必要がある

訓練のポイント
*MSH-KAFOを用いた立位訓練は、起立台を用いた訓練より脈拍の安定、起立性低血圧の予防が得られる.
*C-postureの安定性は重心の変化を学習することで向上する.
* 下肢の振り出しは重心移動と継ぎ手の特異性(股継手が立脚期の内転、遊脚期の外転を保持する)により、重力・慣性の力で行われる.このため,下肢筋群に随意収縮が得れられない完全脊髄損傷患者でも交互歩行が可能となる.
* C-posture(腰椎前弯)を強いられるために、軟性コルセットの使用は必須.下肢の引き上げを補助する目的でコルセットとKAFOを連結する場合もある.