研究の目的 |
トレッドミル歩行と平地歩行を同一の歩行として捉えてよいのか否かという問題が存在する.本研究では,床反力計内蔵式トレッドミルを用いて両歩行の時間因子を比較し,相違について検討した. |
対象および方法 |
健常成人28名を対象として3種類の主観的速度(「遅い」,「快適」,「速い」)において両歩行を比較した.平地歩行は,ベルトを静止した状態のトレッドミル上を通過し,床反力を計測した.1)両歩行における時間因子(実時間:歩行率,重複歩時間,立脚時間,遊脚時間,両脚支持時間,相対時間:立脚期割合,遊脚期割合,両脚支持期割合の比較,2)トレッドミルのベルトスピード変化の影響,3)各時間因子間の関係性について検討した. |
結果 |
1)実時間では3速度においてトレッドミル歩行で重複歩時間,立脚時間,遊脚時間の減少,歩行率の増加,また相対時間ではトレッドミル歩行で遊脚期割合の減少,両脚支持期割合の増加が認められた.2)トレッドミルのベルトスピードは踵接地後に低下していたが,ベルトスピード低下率と時間因子の両歩行間の差との間には有意な相関は認められなかった.3)両歩行間における遊脚時間の差と両脚支持期割合の差との間には有意な負の相関が認められた. |
考察およびまとめ |
以上よりトレッドミル歩行では,遊脚時間を短くすることによりその歩行環境に適応しており,結果として重複歩時間が短くなり,両脚支持期割合が増加したと推察された.トレッドミル歩行は,評価面においては平地歩行機能をある程度予測し,訓練においては訓練効果を平地歩行へ転移(transfer)できるものとして期待されている.そのため両歩行の歩行形態を明確にさせておく必要がある.本研究では,両歩行の相違について概観することができたものの,今後さらなる検討を加え,両歩行の相違についてその本質を明らかにしていきたい. |