第101回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2016.11.7(月)18:30-20:00

講師

萩原淳子先生 (国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症看護認定看護師) 

演題名

認知症ケア-認知症者の体験している世界を知る-

講演内容

 現在、認知症高齢者は462万人にも上るとされ、高齢者の7人に1人が認知症と言われている。10年後には、5人に1人まで増加すると予想されている。
 認知症とは、一つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚−運動、社会的認知)が以前の機能レベルから低下しており、日常生活に支障を与える状態である。分類として主に、アルツハイマー型、血管性、レビー小体、前頭側頭葉変性症に大別される。間違えやすい加齢による物忘れでは、時間や場所等は正しく認識しているが、体験の一部を忘れることがある。また、日常生活に支障はなく、自覚もある事が特徴的だ。また、せん妄は、数時間から数日持続し、日内変動がある、脳の器質的な障害がある事が特徴である。
 認知症では、中核症状である認知機能障害(記憶障害、見当識障害、失行、失認など)だけでなく、行動・心理症状(暴言・暴力、徘徊、興奮、幻覚など)が出現する。行動・心理症状への対応として、第一段階では要因(血圧、便秘、疼痛などの身体的因子、物理因子、心理状態)となっているものを除去する等の非薬物療法がある。第二段階に、薬物療法がはじめられる。注意が必要なのは、ドラッグロック(不適切な鎮静)、フィジカルロック(身体拘束)、スピーチロック(抑制する声かけ)の3つの魔のロックにより、廃用症候群や肺炎等を発生させてしまう恐れがある。
 認知症のケアには、医師、看護師、リハビリ療法士、栄養士、MSW、薬剤師などの多職種連携が必要となる。医師は、診断・治療、薬物療法に関する助言、看護師は、生活背景や家族背景の把握と共有、ケアの助言、専門病棟への調整、作業療法士は、認知・運動・言語機能の評価、アクティビティの実施などが大切な役割である。
 非薬物療法の実施では、笑顔で接する、コミュニケーションの工夫、失敗を防ぐ支援、役割を持たすことが基本となる。認知症のケアで大切な事は、認知症の人が体験している世界や思いを理解しようとする事である。

 

 

会場

アスト津  津市羽所町700

2016.11.8