第46回七栗リハビリテーションセミナー


日程 2007年6月29日  講演 18:30-20:00

講師 吉尾雅春 先生

  千里リハビリテーション病院開設準備室

演題名  脳卒中患者の股関節、そして肩関節へ

抄録  ヒトは直立位になると、前方への転倒よりも後方への転倒が問題になる。股関節を屈曲するために働いていた腸腰筋、とりわけ大腰筋は立位で後方に倒れないようにするために、最も後発の抗重力筋として発達してきた。さらに座位における体幹のuprightも保障している。大腰筋の活動によって腰椎は前下方へ牽引され前彎を増す。この活動は脊柱の抗重力伸展そのものであり、大腰筋による骨盤と腰椎の一連の動きがなければ体幹のuprightはあり得ない。そして、体幹の伸展を要素とする肩関節屈曲運動の第3相にも影響を及ぼす。立位においても座位においても屈筋および抗重力筋として作用するために、大腰筋は骨盤、大腿骨および大腿骨頭と特殊な関係性を成している。また、直立姿勢を優先したことによって、解剖学的に言う股関節の屈曲角度はわずか60〜70度に留まる。これらのシステムを明らかにすることによって、脳卒中患者の運動療法のあり方を検討してみたい。

講演内容 米国の中枢神経障害の理学療法に関する検討を行ったSTEP conferenceの話を皮切りに、動作分析をしようとしたときに事実をあるがままに見ていない場合の多い現実を指摘されました。股関節屈曲を実際に聴衆にしてもらい、その上で、股関節屈曲角度は臨床上120-130度であるが、解剖での結果は90度程度であり、関節唇と大腿骨頚部の接触のためであることが説明されました。さらに疼痛のある片麻痺患者さんと疼痛のない片麻痺患者さんとの股関節屈曲での骨盤が動き出す角度の比較もあり、ROMをする際のヒントとなりました。大腰筋の運動学にも繋がっていきました。さらには肩関節、腱板損傷の比率、関節の陰圧にも言及されました。肩外旋に活躍する棘下筋が羽状筋で二枚折になっていて、血液循環も豊富であり、静脈のうっ滞が起これば痛みを来すことも説明されました。立ち見も出る超満員の観客の皆さんはきっと満足したことと思います。

会場 三重県文化センター

2007.7.3 SS