第97回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2016.2.11(木) 講演 18:00-19:00

講師

Xianghu Xiong 先生 (Burwood Spinal Unit, Burwood hospital)

演題名

Traumatic Brain Injuries: The Medical Care and Rehabilitation; & The Challenges of Concussion(外傷性脳損傷の医療とリハビリテーションおよび脳震盪の課題)

講演内容

 本日は、ニュージーランドにあるBurwood HospitalのXianghu Xiong 先生をお招きし、外傷性脳損傷の医療とリハビリテーションおよび脳震盪の課題について、お話して頂きました。重度の外傷性脳損傷(TBI)では受傷して一年以内に30-35%が亡くなると言われている。このTBI受傷者の約半分は交通事故が原因であり、これは全世界で共通している。ただし、5歳以下の受傷者では、交通事故が原因となるのは17%ほどであり、バランス不良での転倒が17%、人や動物からの外力によるものが16%を占めるという。TBIの方では、後遺症として記憶障害や注意障害、遂行機能障害などの高次脳機能障害が生じる事が多い。この高次脳機能障害がある場合には、復学や復職の検討を含めて総合的な視点での治療が必要になるため、リハ科医、言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士、ソーシャルワーカーなど多くのスタッフが関わる必要がある。社会復帰には、周囲の人達の理解も求められる。


 脳震盪とは、転倒や外傷などの直接的な頭部への打撃により脳が大きく揺さぶられ、一時的に起こる脳の機能障害のことである。実は、毎年$100万ドルは脳震盪関連の医療費請求のために払い出されるといわれている。また、潜在的に長期的に影響が出やすいとされており、その症状は脳震盪後症候群といわれ、気分不快や集中力低下、視覚障害、記憶障害、バランス能力低下、吐き気、易疲労、頭痛、筋肉痛などの様々な身体症状、認知症状などの神経学的現象が生じやすい。脳震盪に起きやすい短期的な意識消失は、覚醒を司る脳幹網様体賦活系に対する外力、即ち視床と中脳の接合部などに回転力が加わった際に生じると考えられる。また、核磁気共鳴分光法という評価技術を使用することで、脳震盪マーカーとしてアセチルアスパラギン酸Nを検出でき、神経細胞の脆弱性を予測する事も可能であり、脳震盪後症候群の病態を理解するのに有用である。脳震盪は、子どもの遊びから大人のスポーツまで幅広い場面で生じやすい為、受傷後の症状出現には細心の注意を払う必要がある。

 

会場

三重県総合文化センター

2016.2.17