第98回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2016.5.19(木)  講演 18:30-20:00

講師

和田郁雄 先生 (名古屋市立大学大学院リハビリテーション医学分野 教授)

演題名

子どもの下肢障害の病態と対応

 

講演内容

 小児期の下肢障害の病態としては、股関節(亜)脱臼、屈曲・内転・外転拘縮、膝関節の拘縮や不安定性、内反尖足、凹足、外反扁平足、筋不全や筋の形成異常、中枢・末梢神経障害による立位・動的バランス障害などがあげられる。基礎疾患としては、脳性麻痺や二分脊椎症、その他の神経・筋疾患(先天性多発性関節拘縮症を含む)、骨系統疾患、他の奇形症候群、炎症、感染、腫瘍性疾患、外傷など様々である。下肢アライメントの生理的変化として、2歳半までの乳幼児はもともとO脚変形しているが、その後はX脚に自然矯正されることが分かっているため、病的とは捉えないため注意が必要である。足部の変形には、尖足、内転足、内反尖足、凹足、踵足、外転足、外反足、凸足、扁平足、回内足など様々な種類がある。
 関節弛緩に伴う小児外反扁平足では、始歩が遅い、転倒しやすい、すぐに「抱っこ」を求める、夜になると足が痛いと泣き出すなどが考えられる。この場合、全身性靭帯(関節)弛緩がみられることが多い。外反扁平足の改善要因としては、1.神経筋の発達、2.関節不安定性の改善、3.足根骨の固定が必要である。治療の要否については、距骨底屈角(TPF)によって内側縦アーチを評価し、アーチサポートや装具療法などが適応される。一方で、成長とともに変形は自然矯正され、装具療法や靴治療と無治療例との間に矯正率に差はないとの報告もある。また、同じ小児外反扁平足でも基礎疾患のないものと精神発達遅滞児のTPFの改善率では、前者の方が高い事が分かっている。これには、神経筋活動の改善に違いがある事が関与していると考えられている。尖足・内反尖足変形への対応として、アキレス腱延長術、アキレス腱前方移行術、後脛骨筋の延長や部分移行術などの観血治療がある。
 下肢の変形やアライメント異常は成長期下肢障害の主要素で、生理的変化として自然矯正するものと、そうでないものがあるため、病態の見極めが重要である。下肢障害への対応は、筋緊張緩和を図りつつ、ストレッチやROMex、装具、靴などのリハビリテーション治療が第一選択である。これに抵抗性を示す場合は、Rehabilitation Surgeryを加えた治療体系を再構築するのも有用である。

 

会場

三重県総合文化センター

2016.5.20