第99回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2016.7.14(木) 18:30-20:00

講師

加藤真介先生 (徳島大学病院リハビリテーション部 教授)

 

演題名

脊髄損傷の包括的治療 -超高齢社会を迎えて-

講演内容

 本日は、脊髄損傷の包括的治療について分かりやすくご講演頂きました。脊髄損傷の受傷原因としては、第一に交通事故、第二に転落があがっているが、大規模な地震によって受傷するケースも少数であるが発生しているとのこと。日本での発生数は、1990年代の調査では、人口100万人に対して、40.2人ほどになるといい、20歳代や60歳代にピークがあるという。最近の調査では、60歳代から70歳代のご高齢の方にピークが移り変わっている傾向があり、そのほとんどが頚髄骨傷なしでの受傷であった。
 脊髄損傷の治療については、1890年代から既に包括的治療の必要性が唱えられ、脊髄損傷を治療する医師は、一分野だけの専門家ではなく患者の必要とする全ての分野に通じていなければいけないと言われていた。急性期の脊髄損傷者管理の目標としては、合併症の予防があり、生命に関わるものとして呼吸不全、低血圧・徐脈、深部静脈血栓・肺塞栓、自律神経過反射、代謝異常・過高熱、排尿障害が対象となる。また、機能回復の阻害因子に関わるものとして関節拘縮・異所性骨化、褥瘡、骨代謝障害などもあげられる。これらの予防が機能的予後を向上させると考えられている。
 また、運動機能の帰結予測も行われている。重複支配を考慮して、隣接上位のMMTが正常であれば、MMT3の髄節も正常とするLast Normal Segment(LNS)を評価した場合、LNSから完全麻痺までの間の髄節の数が4以上ある場合は、運動麻痺の回復がよいと報告されている。ただし、60歳以上の患者でASIA合計点が高い場合でも、必ずしも退院時のADLレベルが高くなるとは限らないとの報告もある為、機能回復とともに特異的にADLの改善に向けた介入も必須であると考えられる。脊髄損傷者のリハビリや実動作の映像等を無料で見られるサイトとして、The International Network of SCI physiotherapists(SCIPT)があり、リハビリテーションを進める上で有益な情報を得られるとのことだった。また、International Spinal Cord Society(ISCoS)でも、学会情報や発表の要約、データベースなどの閲覧が可能となっており、参考にされたい。

 

会場

三重県総合文化センター

2016.7.15