藤田保健衛生大学での貴重な5ヶ月

川崎医科大学リハビリテーション医学教室  目谷浩通先生

はじめに、この場をお借りしまして、私の留学にお力添えを下さった才藤栄一教授、椿原彰夫教授、ならびに現在アメリカでお世話になっているJeffrey B. Palmer教授に心より御礼を申し上げます。

私は今、Johns Hopkins Medical Instituteで、Jeffrey B. Palmer教授のもと、摂食嚥下に関する基礎研究をしています。私は川崎医科大学リハビリテーション医学教室に所属し、約10年間臨床及び研究をしていました。大学院2年生の夏、椿原彰夫教授に留学のお話を頂き、飛びついたことを覚えています。

2004年、新潟で行われた日本摂食嚥下リハビリテーション学会で、講演に来られていたPalmer教授に履歴書を手渡し、留学したい旨を伝えたところ、留学に際しては、藤田保健衛生大学で半年間の研修を受けるよう言われました。過去に学会などで才藤栄一教授の講演を拝聴させていただいており、一度は才藤教授のもとで勉強がしたいという思いがあったため、研修のお話が出たときは心から喜びました。2005年9月才藤教授へ御挨拶に伺い、御好意により10月から研究員として受け入れていただけることになりました。

2005年10月、川崎医大大学院の仕事が残っていたものの、藤田保健衛生大学での研修生活が始まりました。留学前の研修という事もあり、藤田での研修は摂食・嚥下一色になると考えていましたが、才藤教授の御配慮により、様々な患者様を受け持たせていただくことができました。同時に嚥下造影、嚥下内視鏡検査も数多く経験させていただきました。5ヶ月という短期間で多くの症例数を経験させていただいた事は、私の大きな財産になると思います。また単に数をこなすだけで無く、馬場教授の指導の下で検査をし、その場でアドバイスをいただき、ディスカッションができたことも貴重な体験でした。馬場教授をはじめとするスタッフと週1回持たれる嚥下カンファレンスも、激しいディスカッションがあり、すばらしい経験でした。このようなシステムを私の中で消化し、今後臨床に取り入れることができればと考えております。また同時期に研修に来られていた先生と、VF検査前にシミュレーションを行い検査に望んでいた事も大変楽しい思い出です。アメリカで行っている研究は基礎的なものですが、藤田保健衛生大学での5ヶ月があったことで、臨床と研究の繋がりを感じながら研究ができていると実感しています。

大学院での研究や一般病院勤務が長かった私にとって、システム化されているカンファレンス、データベースの豊富さには驚きを隠せませんでした。個々の症例では、難知性開眼不全の患者様、咀嚼不全の患者様の治療を経験した事は今も印象に残っています。期間が短かったため、数多く症例を診る事はできませんでしたが、深く濃い臨床を経験できたと思っています。

近況ですが、アメリカに来て1年が経ちました。未だに語学には不安を抱えつつも、ピザや肉のおいしさに驚き、魚の臭さに顔をしかめながら、ボルチモア名物のカニやハンバーガーを食べています。ラボではPalmer教授をはじめとして、仲間に助けられ何とか生活しております。私の所属するラボは私を含め6人と少人数ですが、非常にアットホームです。私は、以前藤田で研修をされ、現在こちらで働いておられる松尾浩一郎先生に、懇切丁寧に御指導いただきつつ、軟口蓋の動きに関する基礎研究を進めています。アメリカでの生活は辛いこともありますが、楽しく贅沢な時間を頂いていると、ご助力いただいた皆様に心より感謝しております。これはラボで撮った写真です。少しでもこちらの雰囲気を分かっていただければと思います。

 5ヶ月間と、藤田での研修期間は非常に短かったのですが、才藤教授、馬場教授をはじめ、医局、研究員の先生方、セラピストや秘書の方々には大変お世話になりました。私にとって、かけがえの無い体験をさせていただいたと感じております。知識や仕事における経験を積ませて頂いたことはもちろんですが、藤田保健衛生大学の皆様と出会えたことが大きな財産です。私が受けた御恩を、川崎医大だけでなく、同じリハの世界を志す後輩に還元することが恩返しになると思っております。それができるよう、これからも努力していきたいと考えています

最後になりましたが、藤田保健衛生大学での研修は期間が短く、川崎医大大学院との二重生活をしていたこともあり、研修期間中は羽目を外すことができませんでした。今後藤田保健衛生大学の皆様とはお会いする機会が数多くあると思います。お会いした際には、羽目を外して飲み、色々な事を語り明かすことができれば最高です。いつでも「おい、目谷」とお声をお掛けくだされば幸いです。後輩に限り、「奢ってくださいよ。」が通じますので、遠慮なく声を掛けてください。

2007.4.14