「七栗サナトリウムをリハビリテーションのメッカに」
藤田保健衛生大学七栗サナトリウム
病院長   渡辺 正

 2000年という記念すべき年が明けました。

 七栗サナトリウムにとっては、リハビリテーション新棟の建設という開設以来の最も大きな事業の年になりました。このような計画が実現できましたのも、長年培われてきたリハビリテーション科の素晴らしい伝統と、最近のめざましい発展を支えられた才藤教授を始めとするスタッフの皆様のご努力の賜物と心より感謝いたします。特に本年度のリハビリテーション科の伸びは、患者数、医療収益に顕著に現れ、七栗サナトリウムの牽引者としての情熱と意気込みを強く感じています。

 私にとって今回の計画に特に意義を感じますのは、21世紀の時代精神を最も反映し、また若々しい息吹で発展するリハビリテーション医学の充実した臨床、教育、研究の場が、2000年という特別な年に出来るということです。私には偶然とはいえない、なにかこの計画を必然とするような力が働いているようにさえ感じています。

 さて私がリハビリテーションの威力を知ったのは七栗サナトリウムへ来てからでした。癌の末期で機能障害などにより抑鬱傾向になっている患者さんが、PTやOTの方々の訪問を受けて訓練を行うことにより、前向きな生き方に変わっていくのを目の当たりに見たことです。緩和ケア病棟(ホスピス病棟)の患者さんのほとんどは、自分の予後が楽観できないと承知しているものの、死より生を肯定し、最後までよりよく精一杯生きたいと願っておられることが、これらの実践を通じて理解することができました。昨年香港で行われたホスピスの会議でよくMeaning and Value of Lifeという言葉を耳にしました。緩和医学でのQOLは、死をも含んだ生を考えますのでリハビリとは対象が異なると思いますが、その目標は患者さんの存在性に意味や価値を創り上げていく点では同じではないかと思われます。昨年暮れの新聞の投書の中で、アナン国連事務総長は、21世紀は個々人が重んじられる社会を創り上げていくことだと述べられていました。戦争とか平和という抽象論を議論する前に、まず一人一人が大切にされることが前提だということと思います。このように考えますと七栗サナトリウムは、リハビリテーション医学を中心に緩和医学、老人病学など、21世紀という新しい時代に最もふさわしい医学医療に携わる専門の教育機関として重要な役割が期待されています。

 リハビリテーション科のスタッフの皆様には、七栗サナトリウムがリハビリテーションのメッカとして、また発信基地としての役割を担っていきますよう益々のご活躍を期待しております。

 末筆ながら、才藤教授をはじめスタッフの皆様の本年度のご健康とご多幸をお祈りいたします。