藤田リハビリテーション医学・運動学研究会会報
第3号 1999,10

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第4教育病院リハビリ科の現状と展望

七栗サナトリウム
リハビリテーション科
梶原敏夫

 昭和62年,第4教育病院(七栗サナトリウム)が開設され12年が経過した.そこで,リハビリテーション科(以下リハ科と略す)の経過とともに現状と展望を述べてみたい.第4教育病院にリハ科を設置するにともない,リハ医学教室が開設となり,リハ医療とともに学生教育やリハ医の養成も始まった.豊明にある医学部や第1教育病院とは遠方であり,三重県における第4教育病院の知名度は低い状況にあった.リハ専門医を中心としたリハ医療は,三重県の医療機関で行われておらず,徐々に認識をえるようになり,県内の公的病院よりの転院も徐々に増えてきた,が,しかし,慢性疾患を中心とした第4教育病院の経営基盤はなかなか軌道に乗らない状況が続いた.

 平成4年よりリハ専門学校の開設に伴い,PT・OTの養成が始まり,リハ医の養成とともにPT・OTの養成を行うことにより優秀なリハチームの基盤ができたことになった.

 一方,リハ施設については,訓練室の設計は全くなく,会議室や病棟を利用して,PT・OT・ST訓練を行っている状況であり,一応スペースを確保する事により,総合承認を受けているが,不十分な状況であり,リハ医療の質は,リハ専門医を中心とした優秀なスタッフ(現在PT・OTは全員卒業生)によるところが多い.

 このように日常の努力を行う事により,三重県の医療機関との関係も密となり,入院患者も増加しており,在院日数も60日を切る状態となり,医療法の改正に伴う状況にも何とか対応はしているものの,今後の医療を考えると非常にきびしい状況が続く事が予想され,第4教育病院の存亡に関わる状況であると考えられる.

 第4教育病院は,慢性疾患を中心とした医療をリハ科とともに老年内科とホスピスにより今後も行っていく現状である.また,平成12年より始まる公的介護保険の導入に伴い,療養型病床を設置せざるを得なくなり,ベッド数の調整を行うこととなった.そこで,今後の発展を十分に検討した上で,リハ病棟をリハ訓練室と同じフロアーに備えた新棟を建設することが計画され,平成13年度中には完成する予定である.

 第4教育病院の医療環境を整備する事により,今後は脳血管障害,脊髄損傷,RA,整形疾患に対するリハ医療をより早期より開始し予後予測を行い,早期離床やリハ訓練の充実により社会復帰に向けて円滑なリハ医療の流れを作り,在院日数の短縮をはかっていきたいと思う.さらには,教育の充実,歩行,ADL や嚥下など臨床を中心とした研究をすすめて行きたいと思う.

 以上のように第4教育病院を発展させすべく努力を行っていく所存でおりますので,皆様のご支援をよろしくお願い致します.


連載!!!

カナダからの手紙

第一通
藤田保健衛生大学リハビリテーション専門学校
金田嘉清

 残暑厳しい日々が続いております.会員の皆様はお元気でしょうか? 日々,臨床・研究・教育の何かに携わりながら悩み苦しんでおられると思います.思い起こせばはるか昔,学生の頃,医療職につけば食のくいっぱれが無いと,先人の言葉を信じて理学療法士になったわけですが,(確かに家族4人,何とか助け合いながらも生活をしていますが)日々の忙しさと知識・技術の進歩に,驚き,慄き,脅迫されている毎日です.私は,ストレスが貯まると太るタイプですので周りの人からよく,もっと働け働け・・・・・・・と言われます.以前は,この言葉にとても違和感があったのですが,最近は自分への暖かいエールと思い,”よし、もっと働くぞ” と奮起しています.

 こんな生活の中で,この間,素晴らしい経験をしました.それはヘルパー2級の講師として会場に行った時です.皆さんもすでにご承知の事と思いますが,来年の4月から日本において公的介護保険が導入されます.これに伴ない全国的に準備が進められており,ヘルパーさんの確保も現在急務となっておりす.寝たきりの老人の方を介護するヘルパーさんは,今後,我々にとっても身近でお付き合いをさせていただく重要な存在になります.会場に入る前に,担当の方からこんな事を言われました.「本日の参加者は54名,平均年齢は58歳です.この中で,最高齢者の方は72歳.最も若い方は18歳です.」これを聞いた時自分は思わず耳を疑い,「エ!本当ですか.そんなにご高齢の方が学んでおられるのですか.大丈夫ですか?」と.担当の方は薄笑いをうかべながら,「先生ご自身で様子を見てください.こちらの部屋です.」と案内されました.教室は3人掛けの机が横に3基並べられ8列のわりと大きな部屋でした.自分は入るなりすぐに,どこにそんなご高齢の方が居られるのかと見渡しますと,なんと,その教室の一番前の真中の机に女性3人のご高齢の方が座っておられました.私を見るなり,にこにことされ,すぐにノートを開き講義を受ける準備をされ,私を食い入るように見ておられました.2時間の長い講義の間,多くの方が疲れて居眠りを時々されておりましたが,前の3人の方は終わるまでずっとノートを取り続け,教科書に線を引き学ばれており,私自身もその熱気に押されて思わず2時間の講義をしてしまいました.終わった後,何か話がしたくなり,最初,年を伺うと,真中の方が笑いながら「女性に年を聞くもんではにゃあがね」と名古屋弁で言われながらも,「72歳だがね」と言われ,両隣の方も72歳と70歳との事でした.次に,なぜこの講習会を受けられているのかとお聞きすると,2人の方は、以前から病院などで付き添いの仕事をされていたのですが,最近その仕事も少なくなり,どうしようかと考えていた所ヘルパーの仕事を知り,この講習は年齢制限も無いと聞いたので受けたとの事.もう一人の方は,寝たきりの夫を13年間看病し,その時の自分の経験を使いたいので受講したとのことです.この3人の方に共通して言える事は,人間死ぬまで働ける内は働く事.人に迷惑を掛けない事.自分で生活が出来る内は生活する事.だそうです.皆さんすでにお孫さんも居られ,生活には何ら不自由をしていないのですが,「何かしていなければボケてしまうから」と笑って言われました.会話をしていると多くの受講生の方が集まってこられ,多くの方が同じ意見を持っておられました.

 働く事が生きがいであり,働く事で自立し,自活する.そして,どうしても働く事が出来なくなった時には,周りの方のお世話になる.その時は遠慮無くお世話になる.それが人間だ.と教えられました.平均年齢58歳,まだまだ若者.私も負けるわけには行きません.


第四教育病院紹介

PT 奥山夕子

 葉の色や虫の声,風の匂いや暖かさ,旬の草花の発見と,当病院はこんな季節の移り変わりを五感でもって知ることのできる場所にあります.清少納言の枕草子にでてくる七栗の湯の地といえばご存じの方もいらっしゃるかと思います.今,この原稿を書いているこの時期は,ちょうど蛍の飛び交う時期でもあり仕事帰りの疲れた体と心をリフレッシュさせるには絶好の風景が病院下に広がっています.とかくこのような環境下にあるせいか人までもがのんびりとした病院に思われがちではありますが,スタッフは皆病院の中を駆け回り毎日臨床,教育,研究に勤しんでいます.当病院藤田保健衛生大学七栗サナトリウムは,昭和62年4月24日に第4教育病院として開設されました.ベット数は内科50床,外科50床,緩和ケア病棟18床,リハビリテーション科100床となっています.一昨年前には東海3県で初の緩和ケア病棟が承認された病院として話題になりました.緩和ケア病棟は全室個室で和室や専用台所があり,家庭の延長として療養生活がおくれるようになっています.かけがえのない人生を不安なく有意義に心安らかに過ごして頂くよう痛みなどの身体的苦痛を取りのぞく治療のほか,私達リハビリテーション科も趣味をいかした作業療法や機能維持のための理学療法で携わっています.また,最近の当院の動向として地域により密着した病院にすることを一つの指針としています.昨年には市の委託事業で在宅介護支援センターを開設しました.当院患者の退院後の生活はもちろんのこと,地域住民の安心した生活を支援しています.そしてまた,地域住民や外来患者とその家族らを対象に3か月に1度医療に関わる身近な話題での院内講演会を開いたり,年に1度大々的に院外で基調講演およびシンポジウムを開いています.こうした活動の積み重ねと当院職員と地域住民との熱いデイスカッションのなかで地域とのネットワークを密に築いていっています.

 では,当リハビリテーション科はといいますと,まず患者層の特徴として,一次救急を経た発症2か月前後の中枢疾患患者と年期の入った re-conditioning を目的とした慢性期中枢疾患患者が大半を占めています.その他にRA,頭部外傷,脊髄損傷,整形疾患の患者が来院されています。

 当科のスタッフは現在,5名のDr陣とPT7名,OT5名,ST1名,NS17名で構成されています.当科は,患者層の特徴からか学術面では脳卒中患者に関連した研究が多くなされており,多角度からその研究を進めています.ほんの一部を紹介しますと,Dr陣では脳卒中患者の嚥下障害や動作解析をテーマとしたものを,PTでは脳卒中患者の筋萎縮,機能障害と能力低下の関係,体力についてをテーマにしたものを,OTでは脳卒中患者のADL能力をテーマにしたものに取り組んでいます.学術面での合同の活動として,定例勉強会を月2回の頻度で医師,セラピストでセミナー形式のものを行っています.また,各部門でも週1回の勉強会を行っており,学会発表や論文発表も各部門で積極的に取り組んでいます.これらの活動の目的として,スタッフ全員に共通して言えることは当科に関わる全ての患者に最良のリハビリテーションを提供することであります.そして,職種、キャリアを問わず討論することで個人,組織全体が成長することを目指しています.

 当院は今後大きく変革の期を迎えていきます.来年度には新病棟建設の予定があり,当科は訓練室拡大や移転の予定があります.私達はこれを期に,日本トップクラスはもちろんのこと,国際水準となるリハビリテーションの病院を目指します.

 当科の魅力の1つは“若さ”にあります.今年度よりPT,OTスタッフの全員が藤田保健衛生大学リハビリテーション専門学校の卒業生となりました.学校の先生はもとより,関連教育病院の先生方に数々のご指導を受け育てて頂いたおかげで,私達は今,先生方のもとで精一杯働くことができています.私達は,こうしたご恩に応えられるように努力していきたいと思っています.そして,若さゆえの新しい発想や探求心,体力を第4教育病院の発展に活かしていきたいと思っています.しかし,若さゆえに未熟な点や至らぬ点が多々あるかと思います.先生方にはぜひとも今後ともご指導を頂きたいと思っています.これからもどうぞ若い私達を温かい目で見守ってください.宜しくお願いします.臨床,教育,研究,これから益々の発展をめざしていきたい第4教育病院です.

 今日,順風と逆風が吹き荒れるリハビリ医療といわれています.私達スタッフ一同は一丸となって真剣にこのリハビリ医療の順風満帆の風に乗りきりたいと思います.


リハ科合同研修旅行に参加して

第4病院 OT 小嶌健一

 春たけなわの4月10日から1泊2日で,第1,第2,第4教育病院とリハビテーション専門学校の総勢スタッフで,山梨県にある石和温泉に行って参りました.目的地に向かうバス車内では,医師,看護婦,セラピストが,日頃の仕事ではお目にしないリラックスしたムードで,ざっくばらんに話をかわし,職種をこえて親睦を深めることができました.現地についてからはホテルに直行し,すぐに宴が開かれました.宴を始めるに,才藤教授より御挨拶と,今後の方針と科訓について御指導を頂き,乾杯の運びとなりました.その後は,日頃からお世話になっている諸先生方,学生時代からお世話になっているリハビリテーション専門学校の諸先生方,いつもお手本となってくださる先輩方,同期生,後輩と夜中まで酒を囲んで,和気あいあいと過ごし楽しかったです.またホテルは清水Drの御実家ということで,とてもサービス良く料理は美味しく,温泉も気持ちよかったです.(特に山梨名物“ほうとう”と“ワイン”は最高でした)2日目は,生憎の雨でしたが,しだいに晴れ間を出し観光組と旅行組の2班に別れ,私はゴルフ組に参加しプレイをエンジョイできました.ゴルフ暦1年の私にとっては,山梨のコースはアップダウンが激しくて,難しかったです.(ゴルフの優勝は梶原助教授でした)

 今回、はじめて泊まり掛けで研修が催され,普段なかなかお会いすることができない諸先生方と語り合うことができ,よい思い出をつくることができました.最後に,このような機会を与えて下さった才藤栄一先生,並びに御尽力を賜りました諸先生方に厚く御礼申し上げます.


研究促進担当より

98年度 藤田リハビリテーション医学・運動学研究会賞 決定!!

 98年度業績週へのご協力ありがとうございました.当研究会会員全員のうち,当研究会幹事以上の方を除いた166人に業績集用フロッピーを送らせていただきました.

ご返送頂いたフロッピーは67枚,回収率40%でした.

 ご返送頂いた業績を98年度藤田リハビリテーション医学・運動学研究会賞選考対象とさせていただきました.業績のうち筆頭著者であった論文は11本,著書3本,講演2本,書評1本,学会発表44題でした.

選考委員会は5月末に行われ,最も優れた研究をおこなったと選出されたのは,専門学校教員 櫻井宏明先生と決定いたしました.表彰はすでに7月3日の第12回研修会において行われました.

 以下に櫻井先生の論文を2本ご紹介いたします.


片麻痺患者の立ち上がり動作能力と等速性筋力との関係

藤田学園医学会誌22,27-27,1999

  櫻井 宏明・永井 将太・奥山 夕子・長谷川昌士・梶原 敏夫

緒 言

 近年,リハビリテーション医学分野において,動作中の関節トルクをリンクモデル計算法により算出し,解析する手法が多くみられるようになってきた.立ち上がり動作は,比較的遂行しやすく自主訓練にも利用される重要な動作である.しかし,骨折後など荷重できない時期もあり,立ち上がり動作の遂行に必要な筋力をとらえて訓練する必要がある.以上のことから,Closed kinetic chainでの立ち上がり動作は,Open kinetic chainでの等速性筋力と,どのように関連しているかを検討した.

対 象

 対象は,脳卒中片麻痺患者17 名で,男性9 名,女性8 名であった.原疾患の内訳は,脳出血9 名,脳梗塞8 名であった.平均年齢は56.0±10.4歳,発症後期間は16.7±45.3か月であった.Stroke Impairment Assessment Setでは49.3±11.4点,Functional Independence Measureでは111.3±12.9点であった.

方 法

1)筋力測定

 Cybex770 NORM を使用し,健側と患側の股関節伸展筋力,膝関節伸筋筋力,足関節底屈筋力と背屈筋力,合わせて8筋群とした.測定角速度は,30 deg/secの等速度運動とした.測定角度範囲は,股関節並びに膝関節測定は0〜90B,足関節測定は0〜45Bの運動範囲の屈伸運動とした.評価は,2回の練習の後,3回の測定を行い,各試行の最大筋力の中で最大のものを採用した.表記単位は Nm/kgとした.

2)立ち上がり動作能力測定

 上肢の支持や介助を必要とせず,被験者自身の力で座位から立位に立ち上がれる高さでとらえた.

検討項目

1)立ち上がれる高さを基準としてみた立ち上がり動作能力を,10 cm以下立ち上がり動作可能群と10 cm以下立ち上がり動作不可能群の2群に分け,両群間の筋力を比較した.

2)立ち上がり動作能力に対する各筋力の寄与率をステップワイズ回帰分析を用いて検討した.従属変数は,立ち上がり動作能力とし,説明変数は,健側と患側の股関節伸展筋力,膝関節伸展筋力,足関節底屈筋力と背屈筋力とした.

結 果

1)立ち上がり動作能力と筋力との比較 

 10 cm以下立ち上がり動作可能群の座面高は,7.4±4.2 cm,10 cm以下立ち上がり動作不可能群の座面高は,38.0±9.8 cmであった.筋力は,立ち上がり動作能力別の2群間において有意差がみられなかった.

2)立ち上がり動作能力に対する各筋力の寄与率 

 a)全対象では,健側股関節伸展筋力により,寄与率64.0%で立ち上がり能力を説明することができた.

 b)10 cm以下立ち上がり動作可能群においては,健側膝関節伸展筋力,患側膝関節伸展筋力,健側足関節背屈筋力により,寄与率98.3%であった.

 c)10 cm以下立ち上がり動作不可能群においては,患側股関節伸展筋力,患側膝関節伸展筋力により,寄与率95.4%であった.

考 察

 立ち上がり動作を退院後の生活において自立するためには,スピードと安定性が必要となる.大橋ら1)は,立ち上がりの椅子の高さには,膝関節伸展筋の負担のかかる時間の長短に関与するが,ピークトルクには影響しないという報告をした.小竹ら2)は,色々な立ち上がり方法において,股関節伸展,膝関節伸展,足関節底屈のトルクを検討し,立ち上がり動作に必要なトルクは,股関節伸展筋が0.9 Nm/kg,膝関節伸展筋が0.8 Nm/kgであることを見出した.また,小竹ら3)は体幹直立位での立ち上がり及び椅子座面の高低に最も影響する筋力は,膝関節伸展筋力であることを見出した.

 以上の先行研究者は,健常人対象であったが,我々は,片麻痺患者の立ち上がり動作能力について検討した.まず,全対象の立ち上がり動作能力には,健側股関節伸展筋のみ算出された.これは,普段の生活の中で,立ち上がる時,まず殿部を持ち上げる動作から始まるため,この動作に必要な股関節伸展筋が立ち上がり動作能力の第1因子として採択されたと思われる.能力別では,10 cm以下立ち上がり動作可能群は,しゃがみ動作の保持に必要である足関節背屈筋力が第1因子として採択され,次いで,しゃがみ動作からの立ち上がり動作に必要な健側と患側の膝関節伸展筋力が関与したと思われる.一方,10 cm以下立ち上がり動作不可能群の立ち上がる方法は,体幹を前傾し,股関節伸展筋を使いながら動作を遂行すると考えられる.また,健側だけではなく患側筋力が極端に低下していると立ち上がり動作能力向上の阻害因子になることが示唆された.

 今後は,荷重できない時期に各動作に必要なOpen kinetic chainの有効な筋力増強訓練を見出すことが示唆された.また,Closed kinetic chainの動作は,Open kinetic chainと違い,主動筋と拮抗筋が同時に働くことから,今後,膝関節屈筋群や股関節屈曲筋についても検討していきたい.

結 語

1.脳卒中片麻痺患者17名を対象に,立ち上がり動作能力と等速性筋力との関係を検討した.

2.立ち上がり動作能力には,健側股関節伸展筋力が必要であった.

3.立ち上がり動作能力別では,10 cm以下立ち上がり可能群では,足関節背屈筋力 のもとでの健側及び患側膝関節伸展筋が関与し,10 cm以下立ち上がり不可能群では,患側の股関節伸展筋と膝関節伸展筋が関与した.

文 献

1)大橋正洋,江原義弘,島田勝英,前田淳一,片野由佳理,佐藤房郎(1990)モデル計算により立ち上がり動作時の関節トルク計測.リハ医27.107-113

2)Kotake T,Dohi N,Kajiwara T, Sumi N ,Koyama Y, Miura T(1993)An analysis of sit-to-stand movement.Arch Phys Med Rehabil24.1095-1099

3)小竹伴照(1997)関節モーメントによる歩行分析.pp153-157,医歯薬出版,東京


片麻痺患者の活動能力と等速性筋力との関係

藤田学園医学会誌22,117-119,1998

櫻井宏明・永井将太・長谷川昌士・金田嘉清・岡西哲夫・岡田 誠・寺尾研二・才藤栄一

緒 言

 近年,リハビリテーション医学分野において,片麻痺患者の麻痺側や非麻痺側の筋力低下は,起立や歩行を阻害する重要な要因であるといわれている1).その中で,片麻痺患者の最大歩行速度は,年齢,麻痺の程度,麻痺側下肢筋力,非麻痺側下肢筋力が必要といわれている2).また,片麻痺患者の歩行能力を重回帰分析を用いて解析すると,最大歩行速度の決定因子は,68歳以上では第1位が麻痺の程度より,非麻痺側下肢筋力が高くなると報告されている3).

 そこで,今回我々は,片麻痺患者にとって重要な筋力を,活動能力との関係において検討した結果,若干の知見を得たので報告する.

対 象

 対象は,片麻痺患者17名,平均年齢56.4±10.4歳,発症期間は18.4±43.9か月であった.原疾患の内訳は,脳出血10名,脳梗塞7名であった.機能障害の程度は,Stroke Impairment Assessment set(以下,SIAS)で,49.3±11.4点であった.日常生活活動の機能的自立度評価表であるFunctional Indpendence Measure(以下,FIM)は,111.3±12.9点であった.

方 法

 活動能力は,10 m歩行速度,歩行率,歩行持久力,重心移動能力とした.重心移動能力は,kistler社製床反力計を用いて,前後および左右の両足圧中心移動距離でとらえた.

 筋力測定は,Cybex770 NORM を使用した.評価に使用した筋群は,健側と患側の股関節屈曲筋,伸展筋,外転筋,膝関節屈曲筋,伸展筋,足関節底屈筋,背屈筋の7筋とした.測定角速度は,90゜/secとした.ただし,股関節外転筋は,外転0゜の等尺性収縮で行った.測定角度は,股関節と膝関節は,屈曲90゜から伸展0゜の運動範囲の屈伸運動とし,足関節測定は,底屈0゜から45゜の運動範囲の底背屈運動とした.

 統計処理は,各活動能力を目的変数に,14変数の最大筋力値を説明変数とし,ステップワイズ回帰分析を用いて検討した.

結 果

1.活動能力と等速性筋力評価結果

 歩行速度は,39.8±22.1 m/min,歩行率は,95.7±35.8 step/min,歩行持久力は,528.2±404.5 mであった.重心移動能力は,前後方向で7.8±2.3,左右方向で10.1±2.9であった.

 等速性筋力は,健側と患側を比較すると,股関節筋群で,p<0.01で有意差がみられ,膝関節及び足関節筋群では,p<0.001で有意差がみられた.

2.各活動能力と筋力の関係について

1)歩行速度には,健側股関節屈曲筋力,患側足関節底屈筋力,患側股関節伸展筋力が関与し,寄与率76.3%であった.

2)歩行率には,患側足関節底屈筋力,健側膝関節伸展筋力,患側股関節屈曲筋力が関与し,寄与率75.8%であった.

3)歩行持久力には,患側足関節底屈筋力,健側膝関節伸展筋力,患側膝関節屈曲筋力,患側足関節背屈筋力が関与し,寄与率53.5%であった.

4)重心移動能力の前後移動距離には,患側足関節底屈筋力,患側股関節屈曲筋力,健側足関節背屈筋力,患側股関節外転筋力が関与し,寄与率56.9%であった.一方,左右移動距離には,健側股関節伸展筋力,健側股関節屈曲筋力,患側膝関節屈曲筋力,患側股関節外転筋力が関与し,寄与率65.0%であった.

考 察

 正常者の活動能力と下肢筋力との関係について,植松4)は,若年者の歩行速度には,足背屈と膝伸展に加えて,股関節屈曲モーメントが影響したのに対し,高齢者の歩行速度には,推進期の膝関節伸展と足関節底屈モーメントが影響していると報告した.今回我々は,高齢で,かつ非麻痺側下肢筋力に筋力低下を起こしている片麻痺患者の活動能力と下肢筋力の関係を統計学的に分析した結果,それぞれの活動能力に応じて,各筋は特異的に関係していた.例えば,歩行速度及び歩行率には,push off 動作筋である患側の股関節伸展筋力,足関節底屈筋力の関与と,下肢の振り出し動作筋である股関節屈曲筋力に関与していることが示唆された.一方,歩行持久力には,患側膝関節筋群と足関節筋群が関与したが,寄与率が低い結果となった.これは,今回の方法が,瞬発的な最大筋力値でとらえた方法であったためと考えられた.今後は,筋持久力評価での検討の必要性が示唆された.

 次に,重心移動能力は,前後と左右ともに,患側股関節外転筋力が関与し,支持性の重要性が示唆された.また,前後方向は,足関節底屈,背屈筋力が,左右方向は,股関節屈曲,伸展筋力が関与するなど,移動方向により関与筋が相違することが示唆された.

 最後に,持久力向上は,ADL をより容易かつ向上させるために重要のため,今後の評価や訓練の課題としたい.

結  語

1.片麻痺患者の活動能力と等速性筋力の関係を比較検討した.

2.歩行速度及び歩行率には,患側の股関節伸展ならびに足関節底屈筋力と股関節屈曲筋力が関与した.

3.歩行持久力には,膝関節筋群と足関節筋群に関与したが,寄与率が低く,筋持久力評価での検討の必要性が示唆された.

4.重心移動能力には,前後と左右ともに,患側股関節外転筋が関与した.また,前後方 向には足関節周囲筋群が,左右方向には股関節周囲筋群が関与した.

 

参考文献

1)蜂須賀研二・奈良聡一郎・緒方 甫 (1998) 脳卒中片麻痺の筋萎縮.リハ医35.496-501.

2).江西一成,大峰三郎,木村美子,舌間秀雄,新小田幸一,大川裕行 (1992) 片麻痺患者の歩行速度への影響因子.理学療法19.461-466.

3)佐藤秀一,岡本五十雄 (1993) 重回帰分析による慢性期脳卒中患者の歩行能力に影響する諸因子の検討.理療ジャーナル27.93-99.

4)植松光俊(1997)高齢者の歩行中の関節モーメント(関節モーメントによる歩行 分析).pp167-180.医歯薬,東京


研修医近況報告

リハ科研修医2年 三沢 佳代

 昨年の5月に仕事を始めてから早16ヶ月たちました.研修医として第一教育病院をはじめ(残念ながら第2教育病院はローテーションしませんが),第4教育病院(七栗サナトリウム)と様々な科を転々と回り,仕事をしています.

 よく「今はどこですか?」と聞かれることがあるので,今回は今までローテーションしてきた科についてお話します.

 昨年の5,6,7月はご存じの通り,本院のリハビリテーション科から仕事が始まり,何をしていいのかわからないような状態でした.先生方にも大変迷惑をかけたことと思います.はじめての患者さん達ということもあってか,今でもその時の患者さん達の症状や訓練状況などは,はっきりと記憶に残り様々な場面で思い出されました.

 8,9,10月は三重県・久居市にあります七栗サナトリウムのリハ科で研修をしました.ここは周辺田んぼに囲まれ,リハビリ室には大きな窓から明るい光がさしこみ,本院とはまた違った環境のなかでの研修となりました.

 11,12月は本院,整形外科へ.ここでは,点滴をはじめ手技的なものから手術に参加させてもらったりと,リハビリをしに来られる整形外科領域の患者さんの手術方法やその後の経過などを知ることができ,大変勉強になりました.

 年が明けて1,2月はICUでした.この時は月に数日しか家に帰れず,そのような面では大変でしたが脳出血,くも膜下出血,慢性硬膜下血腫,脳腫瘍などの発症状態や経過,手術を見ることができました.

 3,4月は麻酔科です.土曜日,日曜日は予定手術は無いため緊急手術が入らないことを祈りながら,毎日の麻酔を必死になってかけていました.大学病院の利点でしょうが,ほぼ全科の麻酔を経験することが出来ました.

 5月,またまた整形外科です.前回とは違った視点で研修できたと思います.

 6,7月は小児科でNICUも研修させてもらいました.私が想像していた以上に脳性麻痺,あるいはそうなってしまうだろう赤ちゃん達が多いことに驚きました.そしてこの子たちが成長していく事,それを取り巻く環境など成人以上に難しいことも.

 そして8月,今は神経内科で研修中です.様々な病態の患者さんがいて,興味深い科です.(たまたま今,神経内科の研修医の先生がリハビリ科をローテーション中です.この先生方はリハビリをどのように感じているのか,外からの意見も聞いてみたいです.)

 こうして私の仕事生活は,いろいろな科をまわって出来るだけ多くの患者さんの状態や検査,手技,手術を通して自分自身に吸収しようと頑張っているところです.そしてこの春,私達の弟分として新医局員2名(岡崎,立花)が加わりました.この2人も私と長江同様「今どこに?」の状態で各科をまわり研修中ですので,どうぞよろしくお願いします.


学会出張感想記

第1病院 PT 大塚 圭

 平成11年7月10日,第24回運動療法研究会が宮城県仙台市にある東北大学にて開催されました.今回,私は当研究会にトレッドミルに関する研究を発表する機会に恵まれ,前日から1泊2日の公用出張に行って参りました.トレッドミルに関する研究は,現在日本に2台しかない床反力計測が可能なトレッドミルを使用したもので,当院において活発的に活動している研究の一つでもあります.研究発表は今回で2度目の経験となる私は,前日になって慌てることがないよう,前もって十分に準備したつもりでした.しかし現実は出発前日の臨床の昼休みにスライドのフイルムを現像に出しに行き,夕方ぎりぎりに完成し,出発当日の朝に荷物をまとめ,大慌てで家を飛び出す結果となってしまいました.

 さて話は変わりますが,名古屋を12時過ぎに離陸した飛行機は1時間程で仙台に到着しました.7月の仙台は名古屋の秋のように肌寒く,シャツ1枚では物足りなさを感じさせられました.発表当日,仙台は朝からあいにくの雨模様となってしまいましたが,50名程を収容できる会場はほぼ満席状態となっていました.運動療法研究会の会員は医師や理学療法士をはじめ,工学研究者,スポーツ関係などと多分野から構成されており,若手の先生方からご年輩の先生方ととても幅広い年齢層となっています.今回は慶應義塾大学の千野直一先生をはじめとする有名な先生方がご出席なさっており,間近でお目にかける機会などめったにないので,とても感激してしまいました.しかし一方では,そのような先生方を前に発表して「厳しい御指摘」や「難しい質問」を受けるのではないかという不安が頭の中を離れず,非常に緊張してしまいました.ところが私の発表は午後の最終セッションであったため,天候やフライトの最終時間の影響を受けてか,会場は半分以上空席となり予想とは相反する結末になってしまい,なんだか拍子抜けをしてしまいました.といった訳で発表も無事に?終了し,プレッシャーや緊張感から開放され快く名古屋に帰ってきましたが,ひとつだけ心残りになってしまったことがありました.それは才藤教授から御推薦して頂いた『地雷屋』という店に足を運べなかったことです.キンキなどの魚料理が美味しいとのことなので,みなさんも仙台に行く機会がありましたら是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか.


研究会主催の研修会

 

第10回 99年3月13日

片麻痺の運動療法の実際

 講師   富田昌夫

運動療法における動作分析の目的とその意義.患者に参加していただき,患者の動作から得られる情報を運動療法のプログラムにどう生かすか.実技を通してご指導いただいた.

 

第11回 99年3月30日

1.Cardiovascular Stresses and Energy Costs of Orthotic and FES-assisted Gait in Paraplegia

講師 Glen Davis

 

2.the Praxis24 Neuroprosthesis

講師 Andrew Barriskill

対麻痺の歩行における心肺への負担について,装具,FES,装具+FESを比較検討した.

 

第12回 99年7月3日

関節可動域および筋力増強訓練の再考

講師 岡西哲夫

overload princpleを始めとした筋力増強訓練の方法論と学習者としての患者の能力の引き出し方を詳説した.

 

第13回 99年9月3日

1.脳卒中の治療 〜最近の進歩〜

講師 加藤庸子

低侵襲化されつつある脳外科の手術から脳血管障害の遺伝子治療など最新の脳外科的治療を解説した.

 

2.機能的電気刺激の臨床応用

講師 島田洋一

わが国における対麻痺,四肢麻痺へのFESの臨床応用の実際についての紹介.さらに今後のFESの可能性までにも言及した.


次回研修会のお知らせ

第14回研修会は 

99年12月18日17時から 以下の2題のご講演をいただく予定です. 

1.褥瘡治療の考え方と実際

講師 真田弘美

 

2.切断のリハビリテーションの考え方

講師 川村次郎

開催場所は志摩観光ホテルです.

研修会終了後 藤田リハビリテーション科合同忘年会を開催します.皆様是非ご参加ください.


原稿寄稿のお願い

 今回投稿下さった,三沢先生,大塚先生ありがとうございました.堅苦しくなりがちな紙面に吹く爽やかな風といっても過言ではないでしょう?.

 このような原稿をはじめ,随筆,各病院各療法科の様子,研究成果,研修会で取り上げて欲しい講演テーマ・講演者,研究会へのご感想・ご意見などの原稿をお寄せ下さい.

 原稿の長さは,1000-2000字程度.手書きでも結構ですが,パソコン使用の場合は出力された原稿とTEXT形式で保存したフロッピーを添付してください.(使用機種とソフト明記)お寄せいただいた原稿は,紙面の都合で割愛または分割掲載となる場合があります.ご了承ください.詳細は広報局機関誌編集担当までお問い合わせ下さい.


編集局だより

 今回は,来年の新棟 open にむけて一丸となって奮闘中の第4病院の紹介をいたしました.

さらに新企画 連載「カナダからの手紙」の第一通をお届けいたします.

 以下は 走り回る編集局員たちからの一言です.

 

 昨日,海に行きました.第1教育病院のPT・OTの先生方と朝7時に海で待ち合わせ.

波もそこそこあって,3時間くらい波乗りしました.M先生は初めてということで,空中3回転の荒技を披露してくれました.要するに波にのまれたわけです.I先生のおなかはとても20代には見えず, それは見事なものでした.日常の業務を忘れ,しばしの間心の洗濯をしたと思ったら,編集後記のお仕事.          うーん忙しい,PT及部でした.

 

 暑い暑い…と思っているうちに,ふと気づけば朝晩少し過ごしやすくなってきました.本機関誌編集後記の〆切を目前に月日のたつのは早いもの…などと感慨とやや焦り(?)を感じる今日この頃です.そんな私の隣りでは毎年恒例の一大イベントである健康診断の結果に皆が盛り上っていて,妙な季節感が漂っております.やはり健康第一,会員の皆様,時節柄くれぐれもご自愛下さい.       OT 川口佳代

 

 暑くなってきたと感じているうちにあっという間に夏が終わりに差し掛かろうとしてきました。今年の夏からOTでは新たに整形の勉強会が始まりました。私はこの勉強会係の担当に運悪く抜擢されてしまい、整形の内容を他のメンバーに説明するというおもーい仕事が増えてしまいました。ストレスが貯まりそーな毎日です。そういう時こそ食べるにかぎる。みなさまも食欲の秋間近、体調を整え秋に備えましょう。                      OT 山田将之

 

 早くも当院へ入院(入社)し約5カ月が経過しました.すべてにおいて五里霧中の毎日です.なんと7 kgやせてしまいました.今回機関誌の仕事を頂きましたが何をしてよいのかわからずこのような文章を書いております.今後は体を大切に日々切磋琢磨し, あらゆる方面(仕事,スポーツ,飲酒など)で楽しんでいきたいと思います.先生方御指導の程よろしくお願いします.              PT 加藤正樹

 

 はやいもので 今年度も後半にはいりました.ノストラダムスは実は3500年までも予言しているそうですが,リハビリテーションに関して言えば,さらにレベルアップをはからねば生き残れないそうです.あなたは どーしますか?   鈴木美保

2000/9/6 Sonoda & Tsuzuki


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