糞便移植(FMT)

糞便移植とは

糞便移植とは健康な人の便に含まれている腸内細菌を病気の患者さんに投与する治療法です。別名、腸内細菌叢移植(Fecal Microbiota Transplantation: FMT)とも呼ばれ、再発性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症や、クローン病や潰瘍性大腸炎などの難治性炎症性腸疾患等に対して欧米を中心に最近行われている治療法です。ただ、投与経路、投与量、導入回数、ドナーの選定方法など、いまだ未確立な治療法であり、本邦においてFMTは数施設で臨床研究が開始されたばかりの状況で保険適用もされていません。当院では臨床倫理委員会、医学研究倫理審査委員会において、2015年8月18日に施行が承認されました。

糞便移植の対象疾患

1)クロストリジウム・ディフィシル感染症
 既存の抗菌薬治療(バンコマイシン、メトロニダゾール)においても2回以上再発を来した場合

2)クローン病・潰瘍性大腸炎
 既存治療(栄養療法、生物学的製剤含む薬物療法)で緩解に至らない、もしくは緩解維持が困難な場合

3)非特異性多発性小腸潰瘍

4)腸管ベーチェット病

5)慢性偽性腸閉塞症

6)小腸内細菌異常増殖症(SIBO)

7)薬剤抵抗性過敏性腸症候群

糞便移植の方法

(1)ドナーの選定
 ドナーは20歳以上の2親等以内の健康な親族・配偶者、または患者本人より直接指定のあった健康な知人の糞便を移植します。事前に各種のスクリーニング検査を施行し、移植して問題ないかを調べます。更に、新型コロナウイルスCOVID-19の感染確認のPCR検査も実施いたします。
 
(2)糞便移植当日
 ドナーより新鮮な糞便を採取後、撹拌濾過した腸液をレシピエント(対象患者さん)に投与します。投与方法については大腸が病変の主体である場合は、大腸内視鏡下に大腸全体にドナーの腸内細菌を散布します。病変の主体が小腸の場合は内視鏡を十二指腸まで挿入後に投与します。原則外来診療で行いますが、入院でも可能です。
 
(3)移植後
 定期的に2年後まで経過観察を行い、安全性・有効性を評価します。詳細については消化器内科Ⅰの(FMT)外来で説明を行います。

糞便移植(FMT)受診フローチャート

□FMT外来
 予約制 毎週木曜日12:00~13:00
 
□受診までの主な流れ
  1. 受診の際に『糞便移植』治療についてお尋ねください。担当医師から糞便移植についての概要をお話しさせていただきます。
  2. ご意思の確認が得られましたら、糞便移植を担当する医師の外来への受診案内をいたしますので、その日程を決めます。
  3. 糞便移植担当医師からレシピエント(患者さん本人)に”糞便移植の研究計画”について詳しく説明いたします。レシピエント(患者さん本人)が、この研究計画にご納得いただき同意書にご署名いただくことで、下記のスケジュールをもとに計画を立てます。
  4. ドナー(糞便移植療法における糞便提供者)にも、研究計画についての説明をし同意をいただくことで、糞便移植が開始されます。