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医用治療機器学
臨床工学技士は心臓の手術時に心臓と肺の機能を代行する人工心肺装置、慢性腎不全の患者さんの腎臓機能を代行する人工透析装置、呼吸ができないあるいは呼吸が十分にできない患者さんの肺機能を代行する人工呼吸器などの生命維持管理装置の操作、保守点検などを行っています。そのほかにも、除細動器、ペースメーカなど様々な医用機器がありますが、治療を行ううえで医用機器は欠かすことができません。これらの機器が常に正常に機能するために保守点検が行われていますが、この保守点検も、臨床工学技士の重要な仕事のひとつです。
医用治療機器学では、治療に用いられる医用機器の原理、構造、取扱い方、保守点検、安全対策などを学びます。今回は手術では必須となる電気メスの紹介をします。電気メスは高周波電流を作り、出力などを制御する本体(図1)、切開を行うメス先電極(図2)、電流を回収する対極板(図3)で構成されています。電気メスは名前のとおり電気を用いて組織を切ります。電気でどうして組織を切ることができるでしょうか。人の体は約60兆個もの細胞で構成されています。細胞の約60%は水分からできています。水は100℃以上になると沸騰して、水蒸気になります。細胞中の水分も100℃以上になると水蒸気になってしまいます。すると細胞は体積が増加し、はじけ飛んでしまいます。電気メスではメス先電極で火花が発生しています。火花がごく狭い範囲の組織に流れると大きな熱が発生し、一瞬で100℃以上になります。これを連続的に行うと細胞は次々に破裂をするので、組織を切ることができます。
臨床工学技士は医用機器のスペシャリストです。常に正常に作動する医用機器を提供し、手術時などの機器のトラブルの対処など医師や看護師などの医療スタッフと協力しあいながら治療に携わっています。