第89回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2014.10.31(金)  講演 18:30-20:00

講師

三橋尚志先生 京都大原記念病院 副院長 

演題名

関節リウマチのリハビリテーション −リハ・看護・ケアをする前に知っておきたいこと−

講演内容

 今回は、京都大原記念病院の三橋尚志先生をお招きし、「関節リウマチのリハビリテーション−リハ・看護・ケアをする前に知っておきたいこと−」について、お話しして頂きました。リウマチ治療の4本柱には、基礎療法(生活指導など)、薬物療法、リハビリテーション、外科的治療(手術療法)がある。1970年から対症療法である痛みをとる治療が開始され、1980年代からDMARD(抗リウマチ薬)使用開始、1999年MTX承認(8mg上限)さらに2011年にはMTX16mgまで可能となり進歩を認めている。最近では、生物的製剤(Biologics)も誕生し、リウマチの治療は「治せる」時代を迎えているということである。リウマチを疑う際には、必ず両手または両足趾のX線を撮る。反対側との比較や過去のX線との比較がとても大切である。基本的読影ではThe ABC’s of arthritis に従う。Alignment(軸)、Bone(骨)、Cartilage(軟骨)、Soft tissue(軟部組織)である。リウマチ治療のゴールは、「治癒」ではなく「寛解:Remission」である。以前は、「不治の病」と考えられていたが、「寛解」を現実的な目標にできたのは、MTXと生物的製剤の存在が非常に大きいという。MTXとは、関節リウマチ治療薬の標準薬、低用量パルス療法である。副作用として、間質性肺炎と骨髄抑制がある。生物的製剤とは、体の免疫機能などに関わる物質「サイトカイン」の働きを弱める薬である。課題としては、コストと合併症があげられる。リハビリテーションは機能的寛解(身体機能の維持)にとって重要でありQOLの改善に大きく関わる。
 リウマチ治療のコンセンサスをまとめると、1.短期的QOLの改善、疼痛軽減(care)から長期的QOLの改善、骨関節破壊の防止(cure)へ、2.不可逆性の骨関節破壊を防ぐため発症後12週間までが重要、3.Tight Controlによる寛解を目標とする。3ヶ月毎の薬剤チェックが必要。4.寛解の維持である。
 リウマチのリハビリテーションは、生活指導、関節保護、運動療法、作業活動、装具療法からなる。リハビリ医療の機能分化で考えると、急性期では手術療法などをしてからリハビリを受けられるが、回復期病棟では対象外であり利用しにくいのが現状である。よって、生活期での関わりが非常に大切となる。生活指導では、運動と休息のバランス、情報収集・提供を中心に行う。関節保護では、関節症状の悪化予防が大切。一つの関節に負担がいかないようにする。運動療法では、炎症期には疼痛の鎮静と変形予防に努める。関節は動かさない。非炎症期には関節の動きや筋力を戻す事を意識する。運動の強さは、最大運動能力の半分くらいが適当である。また、運動中の最大脈拍数/分が138−(年齢÷2)以下になっていればほぼ安全である。装具療法では、変形予防と改善を目的とする。適応は関節変形が予想されるstageⅡ-Ⅲの方。固定では硬性を、運動では軟性を合わせる。リハビリテーションの課題は、体力的な衰え、精神的な配慮、生活に繋がらない動作指導、機能保護によりADL/QOLの喪失、家族・周囲への理解などが挙げられる。

会場

三重県総合文化センター

2014. 11.1