Q&Aタイトルに戻る
 / 最新情報コーナーへ戻る

Q;非VF系評価フローチャートを使用して経管栄養から経口摂取へ回復する段階で,病院から退院する時期は?また退院後の在宅での訓練で機能的な回復は望めるのでしょうか?
A; 現在の非VF系評価フローチャートは摂食・嚥下障害の臨床的病態重症度に関する分類で,水分誤嚥と食物誤嚥を分類するためのものです.退院の可否を決定するものではありません.退院の決定は他にどのような障害があるかで左右されますが,嚥下障害のみで考えると安定した食物摂取方法が確立した場合となるでしょう.食物誤嚥でも経管栄養が安定している場合は退院可能です.他の要素はリハビリをどのように企画するかです.訓練が十分に施行できる環境であれば,退院させ在宅や通院の訓練で回復は充分にみこめると思います.

Q;非VF系評価フローチャートの有用性についてのデータ・文献等は?
A; 非VF系評価フローチャートについては以下の文献が参考になるでしょう.
有用性についてのデータは共同研究者の戸原先生が現在検討中です.
 参考文献
馬場 尊,才藤栄一,小野木啓子,戸原 玄:嚥下機能を評価しよう(2)検査・診断のポイント.ブレインナーシング17(2):186-192,2001
馬場 尊,才藤栄一:特集 在宅医療につなげる摂食・嚥下アプローチ.摂食・嚥下リハビリテーションの適応.臨床リハ9(9):857-868,2000
馬場 尊,才藤栄一:摂食・嚥下障害.CR別冊リハビリテーションにおける評価 Ver.2:142-150,2000
馬場 尊:在宅医療に向けて−摂食嚥下障害者へのアプローチ−.摂食・嚥下障害の評価.リハビリテーション医学37(10):647-649,2000

Q;高齢者で体力が低下した方での治療上のポイントは?
A; 体力には行動体力と防衛体力があります.前者は運動能力のこと,後者はストレスに対する抵抗性(自律神経,免疫力など)高齢者ではこのどちらも低下しています.摂食・嚥下障害は特に後者の問題に直接影響し,前者に間接的に影響します.まずは後者を安定させることが重要でしょう.何らかの疾患がある場合はその治療を優先し同時に安定した水・栄養管理をおこなうことが大切です.その後にリハビリテーションを中心とした前者の治療を企画します. 運動療法や,日常の生活に活動性を高める試みが重要です.具体的には意識レベルや運動耐久性の向上をはかる訓練,随意的に咳が出せるような呼吸訓練,口腔器官に対しては舌運動,口腔ケアや発音・構音訓練による廃用症候群の予防などがあげられます.もちろん嚥下障害に対する訓練も施行します.

Q;喉頭挙上筋群の機能不全と考えられる患者さんへの対応は?
A; 喉頭が挙がらないという病態は,一つは喉頭挙上筋群がうまく働かないこと,もう一つは輪状咽頭筋が弛緩しないことが主因と考えられます.さらに頸部の拘縮も関与していると考えられます.喉頭挙上筋群の機能不全の原因は神経疾患か筋疾患か廃用かで対応の仕方が異なります.神経疾患や廃用の場合は筋力訓練や可動域訓練が主体になります.筋疾患に対しては疾患により異なりますが疾患が進行している時期には過度の筋力訓練が疾患の進行を助長するおそれがあり行いうのは困難です.
 筋力訓練には最近我々はShaker Exerciseを行っており効果的な印象をもっています.これにつきましては間接訓練の久納先生の項を参考にして下さい.
 また,リハの効果が乏しい場合,手術も検討されます.
 輪状咽頭筋に対してはMendelsohn maneuver,バルーン拡張法,手術などの方法があります.

Q;SwXPについて
A;嚥下前・後X線撮影法(SwXP)は垂直座位側面にてまず単純X線写真を撮影しこれを対照像とします.つぎに50%w/v程度の硫酸バリウム液を4cc嚥下させて,嚥下後直ちに単純X線写真撮影をおこないます.対照像と比較し誤嚥・喉頭内侵入・咽頭残留を同定します.この時に咳の有無を記載します.判定基準に関しては下記に示します.誤嚥の有無に関してはVFとの一致率が0.97と高値を示しています.
 嚥下前・後X線撮影法(SwXP)判定基準
5:正常範囲
4:口腔・咽頭残留
3:喉頭内侵入
2:誤嚥少量で,むせあり
1:誤嚥中等度以上and/or SAあり,嚥下運動なし
 ただし
誤嚥少量:声門下の気道前・後壁どちらか一側に極少量の造影剤付着を認める.
誤嚥中等度:声門下の気道前・後壁どちらか一側に連続性の造影剤付着を認める.
誤嚥多量:声門下の気道前・後壁の両側に連続性の造影剤付着を認める.

Q;同じ液体でも,お茶や水はむせるのにジュースやポカリスエットは飲むことができる患者さんがいますがどうしてなのでしょう?またこのことはリハビリテーションに役立ちますか?
A;嚥下には感覚入力が大切です.味や温度が大きく影響します.また嗜好も大きく影響します.検査ではまずいバリウムは誤嚥しても,おいしい食べ物はうまく食べる例もよく経験します.
 以上のようなことは直接訓練に応用して,積極的に利用すべきです.

(馬場 尊)

Q&Aタイトルに戻る / 最新情報コーナーへ戻る

2001.7.16 Tsuzuki