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萩原講師らの研究成果が国際誌『Cell Reports』に掲載されました。


新規タンパク質修飾・乳酸修飾が神経活動およびストレスにより促進されることを発見

研究の背景と経緯

細胞内で合成されたタンパク質は、様々な修飾(タンパク質中の特定のアミノ酸残基にリン酸基などが付加する現象)を受けることによってその働きが調節されることが知られています。

2019年、乳酸修飾という新しい様式のタンパク質修飾がマクロファージにおいて発見され、細胞内の乳酸の量の増加に伴ってタンパク質乳酸修飾の程度も増加することが報告されました(文献1)。

乳酸は脳内にも存在し、神経活動のエネルギー源として利用されるなど、生理的に重要な役割を持つと考えられています。一方、統合失調症や双極性障害、うつ病などの精神疾患に罹患している患者さん、そしてそのモデルマウスの多くで、脳内の乳酸の量が増加していることが我々のこれまでの研究からも見出されています(文献2, 3)。

しかし、新規タンパク質修飾である乳酸修飾が、脳細胞で生じているのか、生じているとしたらどのような刺激でその程度が変化するのかについてはわかっていませんでした。

研究の内容

今回、私たちはマウスを使った研究で、タンパク質乳酸修飾が脳細胞で生じていることを初めて明らかにしました。そして、神経過活動およびストレス負荷による脳内乳酸量の増加に伴い、乳酸修飾の程度が増大することを発見しました。

さらに、マウスの脳(前頭皮質)で64個の乳酸修飾タンパク質候補を同定しました。その中でも特に、ゲノムDNAの3次元構造の維持に重要な役割をもつヒストンH1タンパク質において、ストレス負荷による乳酸修飾の増加がマウスの社会性行動の低下と相関していることがわかりました。

今後の展開と期待

本研究成果は、タンパク質乳酸修飾を介した乳酸の脳における新たな役割を解明する重要な手がかりになると期待されます。
しかし、ヒストンH1を含めた脳内タンパク質の乳酸修飾に、細胞・神経回路・行動レベルでどのような機能的な意義があるのかはまだ不明です。今後、それらの因果関係を明らかにするためのさらなる研究が必要です。

本研究成果の模式図:電気けいれん刺激、ストレス(社会的挫折ストレス)による神経過活動により脳内で乳酸が増加し、タンパク質乳酸修飾の程度が増大する。社会的挫折ストレスは特に前頭皮質の神経細胞においてヒストンH1の乳酸修飾を誘導する。(Hagihara H, et al. Cell Reports 2021のグラフィカルアブストラクトより改編)

参考文献

文献1. Zhang D, et al. Metabolic regulation of gene expression by histone lactylation. Nature 2019; 574(779):575-580

文献2. Hagihara H, et al. Decreased brain pH as a shared endophenotype of psychiatric disorders. Neuropsychopharmacology 2018; 43(3):459-468

文献3. Hagihara H, et al. Systematic analysis of brain lactate and pH levels in 65 animal models related to neuropsychiatric conditions. bioRxiv 2021; 2021.02.02.428362