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アトピー 性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療

治療の流れ
治療の種類

薬物療法には、外用薬、保湿剤、内服薬、生物学的製剤による治療があり、重症な場合には入院加療を行うこともあります。症状に応じて受ける治療法が異なります。

薬物療法

薬物療法について、特に外用薬(ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏)、内服薬(抗ヒスタミン剤、生物学的製剤を用いた薬物療法について解説します。

外用薬

ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏(topical calcineurin inhibitor;カルシニューリン阻害外用薬)は、現時点において,アトピー性皮膚炎の炎症を十分に鎮静するための薬剤です。

1)ステロイド外用薬

ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎治療の基本となる薬剤です。それぞれ強さが異なりますので、患者さんの皮膚炎の重症度や塗布する部位に応じて適切なステロイド外用薬を選択します。

ステロイド外用薬のランクの選択

ステロイド外用薬

ステロイド外用薬はその強さによってⅠ~Ⅴ群に分類されます。年齢や部位により様々に使い分けができます。


  1. Ⅰ:ストロンゲスト (最も強い)
  2. Ⅱ:ベリーストロング
  3. Ⅲ:ストロング
  4. Ⅳ:マイルド
  5. Ⅴ:ウイーク (最も弱い)

●ステロイド外用薬を適切に使用すれば全身的な副作用は起こることはありません。
●局所的副作用のうち、ステロイド痤瘡、ステロイド潮紅、皮膚委縮、多毛、細菌・真菌・ウイルスによる皮膚感染症も時に生じますが、その場合はステロイドを中止し、適切な治療により回復します。 
●現在でも、「ステロイドは怖い薬だ」と思っていらっしゃる患者さんや保護者は少なくありませんが、医師と相談し、適切な強さのステロイド外用薬を使用していけば副作用を回避し、安全に使用することができます。

ステロイド外用薬の適切な外用量

外用剤の適切量の目安

外用剤の適切量の目安。患者様が思っている以上にしっかりと全布することが大切です。でもすり込んではいけません。

入院患者さんへの指導

入院患者さんへの指導


ステロイド外用量の目安

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018

2)タクロリムス軟膏

タクロリムス軟膏

  • ●タクロリムス軟膏は、副腎皮質ステロイド外用薬とはまったく異なった作用機序で炎症を抑制します。(ステロイド外用薬のような副作用がありません)
  • ●特に顔面・頸部の皮疹に対して高い適応のある薬剤として知られていますが、体幹や四肢にも使用します。
  • ●びらんや潰瘍面には使用できません。また、使用初期にはほてり感を感じることがありますので、使用方法については医師の指導を受けるとよいでしょう。
  • ●16歳以上に使用可能な0.1%軟膏と2~15歳の小児用の0.03%軟膏があります。2歳未満の小児には安全性が確立していないため使用できません。
  • ●タクロリムス軟膏使用者におけるリンパ腫の発生が報告されていますが、これまでの報告では発症リスクは高めないとされています。小児のアトピー性皮膚炎に対するタクロリムス軟膏小児用の長期使用の安全性については、本邦における最長7年の経過観察で有害事象としての悪性腫瘍の発症はなかったとの中間報告があります。

アトピー性皮膚炎の外用療法

アトピー性皮膚炎は、長期にわたり皮膚病変が再燃を繰り返します。 現在は、皮膚病変を治療した後に、保湿外用薬によるスキンケアに加え,ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を間歇的に(週2回など)塗布し,寛解状態を維持する治療法が推奨されています。


●リアクティブ(Reactive)療法

以前は、皮膚病変が改善すると、保湿剤のみを使用し、皮疹の再燃時のみステロイド外用薬を塗布する外用法が行われていました。この治療法では、長期的に皮膚病変をよい状態に保つことはできませんでした。

リアクティブ療法

●プロアクティブ(Proactive)療法

皮疹が再燃する前に定期的にステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を間欠塗布を行うことで皮膚を長期的によい状態に保つことができるようになります。

プロアクティブ療法

抗ヒスタミン薬

  • ●痒みは,患者さんの生活の質の低下や搔破行動による皮膚症状の増悪をもたらします。また、皮膚を掻くことで皮膚にばい菌がついたり、眼症状など引き起こします。
  • ●痒みをコントロールするため、抗ヒスタミン薬の使用は、アトピー性皮膚炎における外用療法の補助療法として推奨されています。
  • 眠気などを回避するため、抗ヒスタミン薬の種類としては、非鎮静性抗ヒスタミン薬を選択することが勧められます。

生物学的製剤

生物学的製剤

近年、生物学的製剤という、重症のアトピー性皮膚炎への奏効率が高い注射製剤が使用できるようになりました。長期にわたり湿疹病変が続き、外用治療や内服治療ではなかなか皮疹がコントロールできない患者さん使用します。

アトピー性皮膚炎が重症な患者さんは、医師にご相談ください。

スキンケア 保湿

アトピー性皮膚炎のスキンケアについて解説します。

スキンケア

アトピー性皮膚炎患者の皮膚
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、一見正常に見える皮膚でも乾燥しています。アトピー性皮膚炎は「痒み」を伴う疾患ですが、乾燥をしているとさらに痒みが強くなります。そのため、乾燥・バリア機能の低下を補い、炎症の再燃を予防する目的で、保湿剤・保護剤を用いて継続的にスキンケアを行うことが推奨されています。1日2回保湿を行うとよいでしょう。
保湿剤

●保湿外用剤は、角質層の水分含有量を改善し、皮膚バリア機能を回復・維持することで、アレルゲンの侵入予防と皮膚炎の再燃予防,痒みの改善につながります。

●外用回数は1日1回の外用よりも1日2回(朝・夕)の外用の方が保湿効果は高く、そのうち1回は入浴直後が望ましいとされてます。

●皮膚病変や痒みは保湿剤のみでは改善しませんので、症状がある場合は適切な治療を受けてください。

洗浄:入浴やシャワー浴

お風呂

湯の温度

•入浴・シャワー浴時の湯の温度として、42°C以上で痒みが惹起されること、36~40°Cが皮膚バリア機能回復の至適温度であることから、おおむね38~40°Cがよいとされています。

洗浄

•ぬるめの湯でも皮脂はある程度除去できるとされています。
• 乾燥が強い症例や部位、季節、あるいは石鹸・洗浄剤による刺激が強い場合には石鹸の使用を最小限とするとよいでしょう。
• シャンプーやリンス、石けんなどのすすぎ残しや過度の使用で刺激性皮膚炎を誘発することもあります。
• よく泡立てて刺激の少ない方法で皮膚の汚れを落とし、洗浄剤が皮膚に残存しないように十分にすすぐことが大切です。

悪化因子の検索と対策

アトピー性皮膚炎を悪化させる因子について解説します。

洗浄や日常生活で気を付けること

●シャンプーやリンス、石けんなどのすすぎ残しや過度の使用で刺激性皮膚炎が誘発されることもあります。
●長くなった爪で皮膚や粘膜を傷つけないように、爪はいつも短く切り、必要であれば就寝時に長袖・長ズボン・手袋を着用するとよいでしょう。

 
神経の絵

食物アレルギー

●乳児期は「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」が多くを占めますが、アトピー性皮膚炎だから食物アレルギーを発症するわけではありません。症状がある場合は適切な医療機関を受診されるとよいでしょう。

生活環境の中の吸入アレルゲン

●年長児以降は吸入アレルゲンの関与が大きくなり、ダニやイヌ・ネコといった動物由来のアレルゲン、スギなどの花粉で皮膚病変が悪化することがあります。
●清掃など適切に対応することが大切です。

発汗

●発汗後、皮膚に残っている汗はアトピー性皮膚炎を悪化させると言われています。一方、皮膚面の高温多湿な状態は発汗を抑えてしまうと言われています。

●皮膚に汗を残さないために、通気性がよく吸湿性の低い肌着を着用すること、汗をかいた後はシャワー浴などで洗い流すこと、おしぼりにより拭くこと、濡れた衣類を着替えることなどが大切です。

●また、発汗を避けることでアトピー性皮膚炎が改善することに根拠はありませんので、発汗を避ける必要はありません。

ストレス

ゆうつな子供

アトピー性皮膚炎は、ストレスによって悪化することがよく知られています。長期的に続く皮膚病変のため消極的になったり、不安感が強くなること、時にいじめの対象になることがあり、それらは患者さんにとって大きなストレスになります。

そのような状況の中では、痒みを意識しないときでも不安刺激によって皮膚を掻いてしまうことがあります。長期的な皮膚病変が続く場合は、皮膚病変だけでなく、患者さんが抱えるストレスも考慮して適切な治療を受けるとよいでしょう。

目の病気

からだも掻いているが、目もよく掻いているという方には、眼科への受診をお勧めします。
長期的に眼瞼を掻いていたり、叩いている場合は、白内障や網膜剥離を発症し、重症の場合には失明に至ることがあります。
目が痒い子