特別講演

特別講演は日本医師会認定産業医の研修単位(生涯専門3単位)、および、日本産業衛生学会産業看護職継続教育システム実力アップコース(3単位)の対象になります。

「勤労者のメンタルヘルスにおける睡眠と体内リズム-早期発見・治療への応用-」

藤田保健衛生大学医学部精神神経科学 准教授 北島剛司

職域でのメンタルヘルスの問題はうつ病・双極性障害などの気分障害による業務への支障や休職が大きな部分を占めるが、精神科的治療を受けているにもかかわらず難治化する、あるいは改善しているにもかわらず今一歩回復しきらないということがしばしば経験される。こうした場合、実は睡眠時無呼吸症候群や睡眠覚醒リズム障害などの睡眠障害によって気分障害に類した症状を呈している、あるいは気分障害の回復が妨げられているという可能性を検討する必要がある。今回の講演では気分障害と睡眠障害の相互関係、および睡眠障害を早期に見いだし適切に対処するポイントについて概説したい。

「双極性障害のリワークの実際ー社会リズムへの介入と集団での心理教育ー」

仁大クリニック院長 奥山真司

近年、うつ状態による長期休務からの復職に際して、一般的な精神科治療に加え職場環境に順応するためのリハビリテーションが考えられ、うつ病の復職支援に特化したリワークセンターが新設され効果を上げている。一方、リワークを経てもなかなか復職できなかったり再度の休務に至ったり、なかにはリワークへの参加自体が継続できなかったりする事例も多く認める。これには単純なうつ病ではなく、双極性障害によるうつ状態や不安障害・発達障害の併存などが指摘されている。それらには詳細な診断のもとでの適切な治療と介入が導入されるべきと考えられている。今回、拡がりつつある双極性障害の概念を紹介するとともに、我が国における双極性障害へのリワーク・プログラムの実際を紹介し、そこで用いられる社会リズムへの介入や集団での心理教育などの、復職へ向けた工夫の数々(これらは産業衛生の現場でも活用可能と考えられる)をわかり易く案内する。

「職場で注意が必要な皮膚アレルギーの知識と対策」

藤田保健衛生大学医学部皮膚科学 教授  松永佳世子

皮膚アレルギー疾患には、特異的なIgE抗体が関与する即時型アレルギーと、感作リンパ球が仲介する遅延方型アレルギーがある。即時型アレルギーの抗原を体内に吸収する経路は、皮膚、鼻粘膜、眼球粘膜、消化管、呼吸器などがある。これらの様々な経路から吸収された、抗原が、特異IgEを介して蕁麻疹から、重度の場合は、呼吸困難、下痢、そして血圧低下、意識消失にいたる即時型アレルギー症状を発症させる。皮膚に接触した化学物質が皮膚から取り込まれ、これを危険かつ排除すべき物質認識した遅延型の免疫によって、アレルギー性接触皮膚炎が発症する。本講演では職場で注意が必要な皮膚アレルギーの知識と対策を解説する。

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