<海外文献紹介> エマヌエル症候群の臨床症状 (2)
 
 
 
エマヌエル症候群(22番派生染色体過剰症候群)の臨床像:患者63人の臨床症状  第2回目 結果(2)
 Phenotypic delineation of Emanuel syndrome (supernumerary derivative 22 syndrome): Clinical features of 63 individuals. 
Am J Med Genet A. 2009 149A(8):1712-21.
 
 <妊娠と新生児期>
全体的にみて、回答者の81%は妊娠合併症はなかったと答えています。最も頻度の高い妊娠合併症は、子宮内発育遅延(24%)でした。他の合併症は、胎動減少(18%)、羊水過少(16%)、骨盤位(14.5 %)、性器不正出血(11%)、未熟児(9.5%)でした。超音波異常は16%にあり、心臓、脳、腎奇形がみつかりました。
出生体重は1192g(32週で出産)から3,5kgまでで、平均出生体重が2668g(5ポンド14オンス)でした。大多数(69%)で、出生体重は在胎40週で生まれた児の平均出生体重の±2SD(標準偏差)内でした。新生児期の入院期間は、70%が1週間以上で、5%が1か月以上でした。長期入院の理由で最も頻度の高いものは、筋緊張低下(51%)、哺乳困難(44%)、外科手術の必要性(30%)、酸素療法(36%)、黄疸(34%)でした。理由で頻度の低いものには、痙攣発作(10%)と感染症(11%)がありました。12人の回答者(20%)が新生児期に人工呼吸器を必要としたと答えています。人工呼吸器を装着した理由として、横隔膜ヘルニア(4人)、無呼吸発作(4人)、未熟性(4人)、気胸(3人)、感染症(4人)、胎便吸引による二次性肺高血圧症(1人)、両側性声帯麻痺(1人)が挙げられました。
 
<先天性異常>
87%の患者は、少なくともひとつの大きな先天異常を持っていました。頻度の高かった大きな異常を表2に記載しました。口蓋異常で回答のあったものは、ピエールロバン連鎖(34%)、軟口蓋裂のみ(28%)、完全口蓋裂(24%)、粘膜下口蓋裂もしくは口蓋垂裂のみ(14%)でした。32%が口蓋裂の手術治療をしました。口蓋裂に関連した口唇裂の報告はありませんでした。心臓の外科手術を必要としたのは、心臓の先天異常の30%でした。腎奇形は、比較的頻度が高く、腎奇形のタイプは、いろいろでした。腎結石症や腎不全の報告は全くありませんでした。
すべての回答者が、少なくともひとつの小さい先天性異常があると答えました。表2に頻度の高いものを挙げました。
<結果>
<顔貌>
顔貌の特徴は、家族によって提出された患者の写真を見て評価しました。私たちは、新生児から青年までの36人の患者から品質の良い写真を得ることができました。また、9人では、同じ人物の異なった段階(幼年期、児童期、青年期、そして、成人期)の写真を比較することができました。顔貌は、いろいろでした。頻度の高い特徴(図1)は、はれぼったい瞼、くぼんだ眼、眼裂斜上、低く垂れた鼻柱、そして小顎症でした。顔の非対称はよくみられ、たいていは片側の眼瞼下垂のせいでした。広い下顎のため顔の形が四角い傾向があります。年齢とともに、顔が通常通りに長くなり、小顎症も目立たなくなります(図2)。以前に「Medne et al.,2007」で報告されている通り、ほとんどの患者で年齢とともに、粗い顔貌の傾向がなくなります。
 
<内科的問題>
表3は、答えのあった頻度の高い内科的問題のリストです。摂食の問題は共通してみられました。子供が年齢に応じた食べ物を食べていると答えたのは回答者のたった37%でした。19%は、完全に胃チューブによる栄養でした。口を使って食べている人の44%が、例えば裏ごしされたものなどの、特別に調整された食品を必要としていました。です。頻度の高い胃腸の病気を表3に示しました。回答者の31%が、子供が毎日下剤もしくは、便柔軟剤を使っていると答えています。また24%は制酸剤を毎日飲んでいます。8%は胃食道逆流の治療(胃の噴門部固定)のために手術を受けました。
 
内分泌障害は、あまりみられませんでした。甲状腺機能低下症が、10%にありました。患者の1人は、成人期に副甲状腺疾患と診断されています。
呼吸の問題はよくみられましたが、気管切開術を必要としたのは2人だけで、1人は、外科手術時の挿管による気管の外傷のせいの短期間のものでした。26%が、生涯に5回以上、呼吸問題で入院をしています。
2人の患者には高血圧がありました(1人は、32か月でした。もうひとりは、15才でした)。しかし、高血圧の原因やタイプは不明でした。自主的に肺高血圧ありと答えた人が1人、心筋症(タイプは不明)が1人ありました。回答者の1人は、弁膜逆流があると答えています。
<成長と思春期>
回答者の80%が子供たちの現在の身長と体重を報告しました。50%が、体重が同年齢の人の3%を下まわり、73%が、身長が年齢の3%を下まわりました。62%は、子供が成長障害と診断されたと答えています。
9才以上の17人の女性のうち、15人(88%)は、月経が始まりました。初潮の年齢は9才から18才でしたが、大部分(71%)は11才から13才でした。月経が始まらない2人の女子は現在16才と22才です。
 
<神経学問題、発達、そして振る舞い>
頻度の高い神経学的異常は表4をみてください。回答者の65%は、子供が脳のMRIやCT検査を受けたといっています。しかし、37%が検査の結果を知らないと答えています。子供の頭部画像の結果を知っている26人の回答者のうち、27%が脳室拡大、23%が萎縮、19%が脳梁欠損や形成不全、19%が白質異常と答えました。ダンディーウォーカー奇形が2人(8%)に、さらにキアリ奇形が2人(8%)にみられました。3人の回答者(6%)は、子供が水頭症のための外科的シャント手術を受けたと答えています。
 
全体的な発育遅延は100%に存在しました。回答者は、子供が様々な発達的段階に到達した年齢を尋ねられました(表5)。大きな運動機能の遅延は重大でした。1才以上の患者の65%は、立って自身の体重を支えることができませんでした。71%は補助してあげると歩くことができましたが、一方では回答者の27%は子供が補助なしで歩行することができると答えています。補助ありでの歩行を達成するのに、平均61か月(ちょうど5年少し)かかり、18か月から10年の間でした。
 
言語能力は、著しく損なわれていました。両親の77%は、子供が話せないと答えています。少ししゃべれる子供の中では、最初に単語をしゃべった平均年齢は44か月(3.7年)で、15か月から8年の間でした。20%は、子供が少なくとも1つの単語を使用してコミュニケーションを行っていると答えました。48%が手話による少なくとも1つの単語を知っていました。2人は、短い文章を話すことができました。子供たちの大多数は言葉をしゃべらないけれども、コミュニケーションする能力よりもはるかに、言葉を理解していると多くの親が強く感じています。
 
細かい運動機能と自己管理能力も著しく損なわれています。84%は、保育者が服を着せたり、脱がせたりすることを必要としました。発達年齢相応に合わせると、5%だけが上手にチャックを閉めることができます。63%は保育者が食事を与える必要がありました。発達年齢相応に合わせると、32%がスプーンやフォークを上手に使用することができました。5才以上の43%がトイレが自立できず、21%がトイレの訓練中で、36%でトイレが自立できました。学童の74%が身体障害者向けのクラスや学校に通いました。残りは自宅教育(7%)か、定期的な個人授業(9%)を受けていました。
 
振る舞いの問題は、全体として頻度は高くありません。最も共通する振る舞いの「問題」は、不安定であること(16 %)、叫び声(16%)、自傷(14%)、触覚防御反応(これは、特にアンケートで尋ねませんでしたが、多くの両親が記しています)がありました。性格については特別に質問はしませんでしたが、自由形式の部分で、子供に関して両親が重要である感じることを何でも書いてもらいました。データは限られていますけれども、多くの両親は、子供たちが大抵明るく、社交的であり、そして音楽を楽しみ、まわりの人と一緒にいることを楽しみ、優れたユーモアのセンスがあると言っています。
(文責:細羽、倉橋)
2009/9/15