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システム医科学研究部門


システム医科学研究部門ホームページ

生物の体は精巧に制御されている各種のシステムで構成されており、その中でも脳は「宇宙で最も複雑なシステム」と言われています。私たちの究部門では、精神・神経疾患を「脳のシステムの破綻」として捉え、疾患メカニズムの解明や予防・治療法の開発を目的とした研究を行っています。

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研究内容

統合失調症や自閉症などの「こころの病は、脳の病」と考えられています。私たちの研究部門では、遺伝子を改変したマウスに生じる行動の変化を捉えることにより、遺伝子と行動・精神疾患の関係を明らかにしていくことを大きな目標としています。さらに、ヒトの病態に基づいた精神疾患モデル動物を使用して、精神疾患についての新しい診断・予防・治療法の開発を目指した研究も展開しています。具体的には、以下のような研究を推進しています。

マウスを活用した精神疾患に特徴的な脳内の異常の解明

精神疾患の生涯有病率は、統合失調症と双極性気分障害ではそれぞれ総人口の約1%であると考えられています。しかしながら、精神疾患のほとんどについて、発症要因はもちろん、脳内でどのような異常が生じているのか未だによくわかっていないのが現状です。私たちは精神疾患のモデルマウスの探索を、行動異常を網羅的に調べる「網羅的行動テストバッテリー」を用いて行い、その中で顕著な心理学的異常を示すマウス系統がいることを見つけてきました。

このようなマウスの一部では脳の特定の領域が大人であるにもかかわらず未成熟な状態にとどまってしまっていること、さらに統合失調症患者さんの脳でもこれと似た状態が生じていることを世界で初めて見出しました。私たちは、この「未成熟脳」を、精神疾患の中間表現型(遺伝子と病気の「中間」に存在するその精神障害において認められる特徴的な神経生物学的な障害)として提唱しました。これらのマウスを精神疾患のモデルとして活用し、精神疾患の病因・病態について詳細な研究を行っています。また、精神疾患の予防・治療法の開発を目指して、脳の未成熟な部分を成熟させる方法の開発にも取り組んでいます。

シュヌリ2欠損マウスでは脳の海馬歯状回という領域が未成熟な状態になる「未成熟歯状回」という現象が見られる。

左:正常マウスでは神経細胞の活動マーカーであるアーク遺伝子が発現(緑)
右:「未成熟歯状回」ではアークは発現しない

アーク遺伝子が活性化すると蛍光タンパク質を発現するマウスを新規環境下に30分さらした。CUBIC法を用いて脳を透明化し、その後顕微鏡で3次元画像を取り込んだ。動画は、海馬歯状回においてVenusを発現している神経細胞。

マウスを用いた脳機能表現型データベースの開発

コンピューターにより自動制御されている
T字型迷路による作業記憶のテスト

マウスは、その遺伝子の99%がヒトでホモログ(構造や機能が似た遺伝子)を持つだけでなく、遺伝子の自在な操作が可能で、個体レベルでの多彩な解析技術を適用できるヒト脳の統合的理解のためのモデル動物として最適です。現在、様々な遺伝子改変マウスの脳機能の表現型についての知見が日々報告されていますが、標準化されていない実験手法による断片的知見を集めただけでは、バイオインフォマティクスを適用した体系的な比較・解析ができず、ゲノム情報と脳機能をつなぐ全体像の把握は困難です。
私たちの研究室は、2003年から京都大学においてマウス行動実験施設の立ち上げに着手し行動実験の研究室を発足させ(2007年に藤田保健衛生大学に移動)、マウスの行動表現型についてインフォマティクスの方法を用いて解析・利用できるようなシステム作りを進めています。また、自然科学研究機構・生理学研究所・行動様式解析室(2007年9月から2017年3月まで宮川教授が客員教授を兼任)や日本科学未来館においても研究室を立ち上げ、研究を行っています。これらの施設では、上述のような観点に基づいて、行動テストの実験制御・解析ソフトの開発と実験の全自動化や、マウスの脳機能表現型データ取得の手法の標準化とデータベースの開発・整備・公開を行ってきています。その結果、マウスの行動表現型をハイスループットでスクリーニングできる網羅的行動解析システムを確立し、これまでに国内外160系統以上のマウスの行動解析を実施してきました。現在、当部門では、新学術領域研究「包括型脳科学研究推進支援ネットワーク」の系統的脳機能行動解析として遺伝子改変マウスを対象とした行動解析の支援を随時受け付けております。ご興味のある方は、こちらまでご連絡ください。

代表的な業績

1. Takao K, Miyakawa T. Genomic responses in mouse models greatly mimic human inflammatory diseases. Proc Natl Acad Sci USA. 2015; 112(4): 1167-72.

2. Akers KG, Martinez-Canabal, Restivo L, You AP, De Cristofaro A, Hsiang HL, Wheeler AL, Guskjolen A, Niibori Y, Shoji H, Ohira K, Richards BA, Miyakawa T, Josselyn SA, Frankland PW. Hippocampal neurogenesis regulates forgetting during adulthood and infancy. Science. 2014; 344(6184):598-602.

3. Hagihara H, Takao K, Walton NM, Matsumoto M, Miyakawa T. Immature dentate gyrus: an endophenotype of neuropsychiatric disorders. Neural Plast. 2013; 2013:318596.

4. Takao K, Kobayashi K, Hagihara H, Ohira K, Shoji H, Hattori S, Koshimizu H, Umemori J, Toyama K, Nakamura HK, Kuroiwa M, Maeda J, Atsuzawa K, Esaki K, Yamaguchi S, Furuya S, Takagi T, Walton NM, Hayashi N, Suzuki H, Higuchi M, Usuda N, Suhara T, Nishi A, Matsumoto M, Ishii S, Miyakawa T. Deficiency of schnurri-2, an MHC enhancer binding protein, induces mild chronic inflammation in the brain and confers molecular, neuronal, and behavioral phenotypes related to schizophrenia. Neuropsychopharmacology. 2013; 38: 1409-1425.

5. Shin R, Kobayashi K, Hagihara H, Kogan JH, Miyake S, Tajinda K, Walton NM, Gross AK, Heusner CL, Chen Q, Tamura K, Miyakawa T, Matsumoto M. The immature dentate gyrus represents a shared phenotype of mouse models of epilepsy and psychiatric disease. Bipolar Disord. 2013; 15: 405-421.

6. Walton NM, Zhou Y, Kogan JH, Shin R, Webster M, Gross AK, Heusner CL, Chen Q, Miyake S, Tajinda K, Tamura K, Miyakawa T, Matsumoto M. Detection of an immature dentate gyrus feature in human schizophrenia/bipolar patients. Transl Psychiatry. 2012; 2: e135.

7. Yamasaki N, Maekawa M, Kobayashi K, Kajii Y, Maeda J, Soma M, Takao K, Tanda K, Ohira K, Toyama K, Kanzaki K, Fukunaga K, Sudo Y, Ichinose H, Ikeda M, Iwata N, Ozaki N, Suzuki H, Higuchi M, Suhara T, Yuasa S, Miyakawa T. Alpha-CaMKII deficiency causes immature dentate gyrus, a novel candidate endophenotype of psychiatric disorders. Mol Brain. 2008; 1: 6.

8. Miyakawa T, Leiter LM, Gerber DJ, Gainetdinov RR, Sotnikova TD, Zeng H, Caron MG, Tonegawa S. Conditional calcineurin knockout mice exhibit multiple abnormal behaviors related to schizophrenia. Proc Natl Acad Sci USA. 2003; 100: 8987-92.

研究スタッフ

教授

スタッフ