藤田医科大学 精神・神経病態解明センター 神経再生・創薬研究部門

掲載情報

【2/28公開】Sopak Supakul、岡野栄之らの論文が公開になりました。

Sopak Supakul(筆頭著者)、岡野栄之(研究責任者)らの論文がInflammation and Regenerationに掲載されました。

論文タイトル:Mutual interaction of neurons and astrocytes derived from iPSCs with APP V717L mutation developed the astrocytic phenotypes of Alzheimer’s disease

本研究ではiPS細胞から分化誘導したニューロン及びアストロサイトを混合し、1ヶ月以上培養可能な共培養系の確立に成功しました。また、単一培養系と比較して、本共培養系では各種細胞における成熟度の増加が認められました。iPS細胞由来アストロサイトは単培養の細胞と比べて細胞突起の複雑さが上昇し、in vivoで認められるアストロサイトの形態に近づきました。iPS細胞由来ニューロンにおいてはCa2+振動が増大し、突起の複雑さが上昇しました。また、電子顕微鏡による観察では、成熟度の指標となる、前シナプス小胞数の増加が確認されました。さらに、免疫電子顕微鏡の観察で、ニューロンとアストロサイトが相互作用する場であるTripartite Synapse構造の形成が見られました。共培養系に対して、アストロサイトに発現するグルタミン酸トランスポーターの阻害剤を投与した所、ニューロンの興奮性の上昇が観察され、そのような構造が機能的である事も確かめられました。加えて、本共培養系の疾患解析への応用として、家族性AD病患者由来iPS細胞(APP V717L株)から共培養系を作成し、健常者由来iPS細胞(201B7株)と比較しました。APP V717L株の共培養系は健常者の共培養系と比べアミロイドβ(Aβ)1-42/Aβ1-40の分泌が上昇していたことから、AD様の病態を部分的に再現出来ている事が確認されました。さらにAPP V717L株の共培養系では、健常者の共培養系と比べAD病態のアストロサイトが肥大化していました。また、単一培養系のアストロサイトのみでは出現しなかったアストログリオーシス様表現型も観察されました。このように、本共培養系は、ヒト細胞モデルを用いた病態解析に有用なツールであり、他の広範な神経疾患へも応用できる可能性があることが示されました。