プレスリリース

ファビピラビル(アビガン)特定臨床研究の最終報告について

「SARS-CoV2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験」の結果につきまして

 藤田医科大学を代表機関とし全国47医療機関で実施している「SARS-CoV2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験」(研究責任医師 藤田医科大学医学部感染症科 土井洋平教授)につき、その最終結果の暫定的な解析が終了しましたので、要点をご報告いたします。
 本研究には3月上旬から5月中旬までの間に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者計89名にご参加いただきました。このうち44名がファビピラビルの通常投与群(1日目から内服)、45名が遅延投与群(6日目から内服)に無作為割り付けされました。遅延投与群の内1名は割り付け直後に不参加を希望されたため、臨床的評価は通常投与群44名、遅延投与群44名で行いました。また、ウイルス量に関する評価は、研究への参加時に既にウイルスが消失していたことが後日判明した19名を除外し、通常投与群36名、遅延投与群33名で行いました。研究参加中に重症化または死亡した方はありませんでした。
 事前に規定された主要評価項目である「6日目まで(遅延投与群が内服を開始するまで)の累積ウイルス消失率」は、通常投与群で66.7%、遅延投与群で56.1%、調整後ハザード比は1.42(95%信頼区間=0.76-2.62、P値=0.269)でした。
 事前に規定された副次評価項目である「6日目までのウイルス量対数値50%減少割合」は通常投与群で94.4%、遅延投与群で78.8%、調整後オッズ比は4.75(95%信頼区間=0.88-25.76、P値=0.071)でした。
 事前に規定された探索的評価項目である「37.5℃未満への解熱までの平均時間」は通常投与群で2.1日、遅延投与群で3.2日、調整後ハザード比は1.88(95%信頼区間=0.81-4.35、P値=0.141)でした。
 ファビピラビル投与に関連する有害事象としては、血中尿酸値の上昇が84.1%、血中トリグリセリド値の上昇が11.0%、肝ALTの上昇が8.5%、肝ASTの上昇(いずれも検査値異常)が4.9%に見られました。これらの異常値は、内服終了後(16日目または28日目)に再度採血された患者(38例)のほぼ全員で平常値まで回復していることが確認されました。また、痛風を発症した患者はいませんでした。
 以上より、通常投与群では遅延投与群に比べ6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、統計的有意差には達しませんでした。有害事象については、検査値異常としての尿酸値上昇がファビピラビル投与中の患者の大半に見られましたが、投与終了後には平常値まで回復し、その他重篤な有害事象等は見られませんでした。本研究の詳細なデータにつきましては、なるべく速やかに論文発表できるよう準備を進めてまいります。
 本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究課題「SARS-CoV-2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験およびファビピラビルを投与された中等症・重症患者における臨床経過の検討を目的とした多施設観察研究」(研究開発代表者 湯澤由紀夫 藤田医科大学病院 病院長・課題番号19fk0108150s0001)の一環として実施しています。
 
 藤田医科大学