小児頭蓋内悪性腫瘍の遺伝子診断体制の構築 Ⅰ.髄芽腫、上衣腫
廣瀬 雄一 教授

当院では、多施設共同で以下の臨床研究を実施しております。もし、研究の対象となる方、ご本人・ご家族の方で、「参加したくない」(研究の対象から外してほしい)と思われる方は、研究問い合わせ担当者までご連絡ください。たとえ参加をお断りになられても、不利益を受ける事はありません。

また、同意した後に、いつでも同意を撤回することができます。同意の撤回を希望される場合は、同様に研究責任者、又は外来担当医師までお申し出くださいますようお願い申し上げます。但し、すでに研究結果を学会・論文にて公表されている場合は、データを破棄できない場合があります。

お申し出が無い場合は、各研究への参加について同意していただいたものとして、研究の対象とさせていただきますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

なお、本研究は国が定めた指針である「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(文部科学省・厚生労働省告示)を遵守し、当院の倫理委員会の承認を経て行います。

研究課題

小児頭蓋内悪性腫瘍の遺伝子診断体制の構築 Ⅰ.髄芽腫、上衣腫

研究の主宰機関および研究代表者

西川 亮 埼玉医科大学国際医療センター/
包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科 教授
特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会 理事長
坂本 博昭 地方独立行政法人大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科 教育顧問
一般社団法人 日本小児神経外科学会 理事長

研究の目的・意義

脳腫瘍は小児の固形悪性腫瘍の中では最も発生頻度が高い病気です。近年の研究の進歩から、小児の脳腫瘍は成人の脳腫瘍とその特徴が異なることが次第に明らかになってきており、小児の脳腫瘍を独立した疾患とみなす考え方が広がってきています。

その代表的なものは髄芽腫で、近年、欧米において、最先端の遺伝子解析手法を用いて、大規模に研究が進められた結果、髄芽腫は複数の遺伝子の発現パターンに基づいて4型の異なるタイプに分類することが可能であることが明らかになりました。また、また、小児に好発する別の脳腫瘍の1つである上衣腫も同様に、遺伝子の発現パターンから4型に分類可能であることが報告されています。これら小児脳腫瘍における遺伝子診断は、近い将来、実際の臨床現場に導入され、病型診断やその後の治療法選択に使用されると予測されています。

このように、小児脳腫瘍に対する遺伝子解析研究が海外で大きく進展している状況と比較して、国内での研究は、大きく遅れているのが現状であります。そこで今回、私たちは当施設で過去に手術を実施した、髄芽腫、上衣腫の患者様の手術標本を用いて、その遺伝子診断を行う体制を構築する研究を実施したいと考えています。

研究の期間

研究承認日から平成33年3月31日まで。
ただし必要な手続きを経て変更・修正される場合があり得ます。

研究の方法

  • ●対象となる患者さん
    当院において過去に手術を受けられた髄芽腫および上衣腫の患者さん。
  • ●利用する試料・情報の種類
    • ① 利用する試料
      研究に用いる脳腫瘍組織は、手術後、病理診断のための保存されたものの残りを使わせていただきます。
      各試料からのDNA/RNA、タンパク質の抽出を行い、それらを用いて遺伝子発現解析、遺伝子配列解析を実施し、髄芽腫および上衣腫の遺伝子診断法を行うための方法の妥当性を検証します。
    • ②利用する臨床情報
      基本情報:手術時年齢、性別、生年月日、手術日、人種
      疾病情報:腫瘍部位、病理診断、再発確認日、再発部位、様態、転帰、死亡日(最終生存確認日)、治療実施内容等
      画像診断情報:CT画像、MRI画像、PET画像
    • ③ 研究実施内容
      得られた遺伝子解析結果を診断情報、治療反応性、再発までの期間、生存期間などの臨床データと比較し、統計的解析を行うことによりその遺伝子診断法の有用性を検証します。
  • ●外部への試料・臨床情報の提供
    試料・臨床情報の提供は、提供者のお名前がわからない状態(匿名化)にして、特定の関係者以外がアクセスできない状態で行います。対応表は、当院の研究責任者が保管・管理します。

研究組織

  • 1) 研究代表者
    • 西川 亮
      埼玉医科大学国際医療センター/包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科 教授
      特定非営利活動法人日本脳腫瘍学会 理事長
    • 坂本 博昭
      地方独立行政法人大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター 小児脳神経外科 教育顧問
      一般社団法人 日本小児神経外科学会 理事長
  • 2) 解析研究機関
    独立行政法人国立がん研究センター(研究所および中央病院):市村幸一
    国立病院機構大阪医療センター(脳神経外科、臨床研究センター、臨床検査科):金村米博
    大阪大学微生物病研究所附属感染症DNAチップ開発センター:奥崎大介
    トロント小児病院(トロント、カナダ):Michael D Taylor
    ドイツがん研究センター(ハイデルベルグ、ドイツ):Stefan Pfister
    St. Jude 小児研究病院(アメリカ):David W. Ellison、Giles Robinson
    Newcastle 大学(イギリス):Steven C Clifford、Debbie Hicks
  • 3) 病理診断解析の支援を行う研究機関
    埼玉医科大学・病理学:佐々木 惇
    神戸大学大学院医学研究科・医学部地域連携病理学:廣瀬隆則
    (兵庫県立がんセンター病理診断科・部長)
    群馬大学医学部附属病院病理部・病理診断科:平戸純子
    東京都立神経病院・検査科:小森隆司
    東京医科大学八王子医療センター中央検査部:澁谷誠
    独立行政法人国立病院機構仙台医療センター・病理診断科:鈴木博義
    北海道大学大学院医学研究科腫瘍病理学分野:田中伸哉
    大阪市立総合医療センター 病理診断科:井上健
    京都府立医科大学・分子病態病理学:児玉 良典
  • 4) 共同研究機関
    北海道大学大学院医学研究科(寺坂俊介、山口秀)、北海道立子ども総合医療・療育センター(吉藤 和久)、東北大学大学院医学系研究科(齋藤竜太)、山形大学医学部(園田順彦)、福島県立医科大学(齋藤清)、自治医科大学とちぎ子ども医療センター(五味玲)、群馬大学医学部(堀口桂志)、筑波大学医学医療系(室井 愛)、千葉県こども病院(安藤亮)、埼玉医科大学総合医療センター(大宅宗一)、東京大学医学部(斉藤延人)、杏林大学医学部(永根基雄)、昭和大学医学部(水谷徹)、日本医科大学(吉田大蔵)、日本医科大学武蔵小杉病院(足立好司)、順天堂大学医学部(新井一)、国立成育医療研究センター(寺島慶太)、日本赤十字社医療センター(田部井勇助)、東京都立小児総合医療センター(金子隆)、東京慈恵会医科大学(山岡正慶)、慶応義塾大学医学部(佐々木光、三輪点)、北里大学医学部(隈部俊宏)、帝京大学医学部附属溝口病院(渋井壮一郎)、山梨大学医学部(川瀧智之)、長野県立こども病院(重田裕明、宮入洋祐)、静岡県立こども病院(綿谷崇史)、藤田保健衛生大学医学部(廣瀬雄一)、名古屋大学大学院医学系研究科(夏目敦至)、新潟大学脳研究所(藤井幸彦)、金沢大学医薬保健研究域医学系(中田光俊)、金沢医科大学(飯塚秀明)、富山大学医学部(赤井卓也)、京都大学大学院医学研究科(宮本享、荒川芳輝)、京都府立医科大学大学院医学研究科(橋本直哉、山中巧)、大阪大学大学院医学系研究科(香川尚己)、大阪市立大学大学院医学研究科(宇田武弘)、関西医科大学(埜中正博)、近畿大学医学部(泉本修一)、大阪市立総合医療センター(松阪康弘、石橋謙一)、公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院(岩崎孝一、西田南海子)、社会医療法人愛仁会高槻病院(原田敦子)、神戸大学大学院医学研究科(甲村英二、篠山隆司)、兵庫医科大学病院(吉村紳一)、兵庫県立こども病院(河村淳史)、関西労災病院(森鑑二)、和歌山県立医科大学医学部(深井順也)、奈良県立医科大学(朴永銖)、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(伊達勲、黒住和彦)、広島大学病院(杉山一彦)、島根大学医学部(宮嵜健史)、九州大学大学院医学研究院(飯原弘二、吉本幸司)、産業医科大学(中野良昭)、熊本大学大学院生命科学研究部(中村英夫、牧野敬史、武笠晃丈)

共同研究機関は、今後さらに増えることが予想されます。

予想される利益と不利益

  • 得られた研究成果は、直ちにあなたの治療に対して有益な情報をもたらすものではないと考えます。しかし将来的には、本研究成果で得られた知見が新しい診断・治療技術の開発に貢献し、当該領域の進歩に大きく貢献できるものと考えます。
  • 実施する遺伝子解析は、あくまでも腫瘍細胞における変異のみの解析であって、次世代には受け継がれるゲノム又は遺伝子の変異を対象としません。よって、この遺伝子診断研究の結果が、不当な差別を引き起こしたり、試料提供者のあなたに不利益をもたらすことはないと考えます。
  • 本研究にご提供いただく組織標本は、診療上必要な手術を介して摘出され、病理診断に使用されて残りの一部です。よって試料のご提供に危険性は無いと考えます。

個人情報の保護

  • あなたの試料や臨床情報からは住所、氏名やカルテ番号など個人を識別する情報(個人情報)が削られ、代わりに新しく符号がつけられます(これを匿名化と呼びます)。その後の解析はこの符号を用いて実施されます。したがって、万一試料の入った容器や臨床情報が研究者以外のひとの目に触れても誰のものかはわからないようにしています。あなたの個人情報は決して他人には漏らさず、保護されます。
  • 遺伝子解析の結果も、他人に漏れないように、厳重に管理されます。

研究結果の伝え方

  • この研究からわかったあなたの腫瘍の遺伝子診断結果に関しては、原則的にお伝えすることはありません。その理由は、今回実施する遺伝子診断は現時点ではその人の健康状態などを評価するための情報としての精度や確実性を欠き、臨床的意義も十分に定まっていない研究段階のものであるからです。
  • 研究全体に関する研究意義、方法、進歩状況、診断や治療・予後に関する情報などをご説明することは可能です。また、全体の研究結果を知りたいという希望があった場合は、研究責任者にご連絡ください。

研究結果の公表

  • 得られた研究の成果は、個人がまったく特定されないようにした上で、学会や学術雑誌およびデータベース上等で公に発表されることがあります。

知的財産権が生じたとき

  • 遺伝子診断の結果として特許権などが生じる可能性がありますが、その権利は当院あるいは他の共同研究機関等に属し、試料提供者のあなたには属しません。また、その特許権により経済的利益が生じる可能性がありますが、試料提供者のあなたにはこれについても権利がありませんので申し添えます。

健康被害に対する補償

  • この研究により何らかの健康被害が生じる可能性はありません。

遺伝子診断の費用

  • この研究の遺伝子診断は研究費によって行われますので、その費用をあなたが払う必要はありません。

遺伝子診断の外部委託

  • 遺伝子診断作業の一部を外部の情報解析受託会社に委託する場合があります。その場合は、先に述べた符合を付けた形(連結可能匿名化)のデータを、さらにもう一度、別の符号をつけて匿名化した上で(2重匿名化)受託会社に渡しますので、受託会社があなたの氏名を知る事はありません。情報解析受託会社とは秘密保持契約を締結し、情報解析受託会社内における解析が終了した際には、原データ及び解析から生じた中間データ・最終データの全てを社内のコンピューター・記憶媒体から完全に消去することを契約いたします。

研究の資金源

  • 本研究は独立行政法人国立病院機構大阪医療センターおよび独立行政法人国立がん研究センターの獲得する研究資金をもとに実施されます。

利益相反

  • 臨床研究における利益相反(COI(シーオーアイ):Conflict of Interest)とは、「主に経済的な利害関係によって公正かつ適正な判断が歪められてしまうこと、または、歪められているのではないかと疑われかねない事態」のことを指します。具体的には、製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス、知的所有権等がこれにあたります。
  • 本研究は、特定の企業・団体等からの支援を受けて行われるものではなく、利益相反はありません。
  • ◎本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
  • ◎ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。
  • ◎試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。

問い合わせ先

藤田医科大学 脳神経外科
担当者:廣瀬雄一
〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98
電話番号:0562-93-9253