藤田医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠をとることは心や身体の疲れを取り、気力や体力を充足するために欠くことの出来ない行動です。睡眠には病気を治したり予防したり、成長を促す効果もあることが分かってきています。もし十分な睡眠をとっているのに昼間に眠気が出現したり、起床時に頭痛や倦怠感があったりうる場合は睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に空気の通り道である“上気道”が狭くなることによって10秒以上の無呼吸、低呼吸状態が睡眠1時間あたりに5回以上起こる疾患です。(図2) SASの主な症状として、睡眠時の無呼吸、いびき、日中の眠気、集中力の低下、頭痛のような症状がみられます。また、睡眠中に体内の酸素量が不足しがちになることで全身のさまざまな部位に負担をかけ心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる合併症を引き起こしやすくなります。主な原因は肥満による喉周りの脂肪ですが、顎が小さい、舌が大きい、扁桃が大きいといった生まれつきの身体的特徴や慢性的な鼻炎など耳鼻科領域の病気が原因となることもあります。SASは有病率2~4%とされており、未治療の人が多いのが現状です。もしSASが疑われた場合は早期に専門医を受診し症状にあった治療を受けて下さい。

図1:患者の気道閉塞 健康人の気道
図1:患者の気道閉塞 健康人の気道

睡眠中は重力により、軟口蓋、舌根、喉頭蓋が下がり、
気道は狭くなります。

図2:患者の気道閉塞 SAS患者の気道閉塞
図2:患者の気道閉塞 SAS患者の気道閉塞

鼻や咽喉頭に何らかの異常があると気道が狭くなり、
呼吸がしにくくなります。

検査について

まず簡易型睡眠モニターにてスクリーニングを行います。簡易アプノモニターでは、酸素飽和度、気流、心拍数、いびきを測定します。小型で、自宅での施行が可能です。簡易アプノモニターでAHI(1時間あたり10秒以上の無呼吸、浅い呼吸の回数の合計)が5回以上であった方は、その後の治療方針決定のため、 PSG(ポリソムノグラフィ)という精密検査が必要となります。(図3)
PSGの結果に応じて治療法が決定されます。当科では呼吸器内科、精神科、耳鼻咽喉科にて合同カンファランスを実施し治療方針を決定しています。

図3:当院での 小児のPSG検査の様子
図3:当院での小児のPSG検査の様子

治療法について

SASの治療には、下記の4つの方法が挙げられます。

生活習慣の改善
減量、薬の服用、飲酒の見直しなど、生活習慣を改善します。
CPAP
鼻にマスク状の機械を装着し、空気の通りを広げる治療を行います。AHIが20回以上の中道度~重症のSAS向けの治療となります。CPAPは長期間の治療が必要で、心血管の合併症を減少させる効果があります。
手術
小児ではアデノイド・口蓋扁桃肥大が認める場合はアデノイド切除・口蓋扁桃摘出が適応され高い手術効果が得られます。成人では口蓋扁桃肥大に対して口蓋扁桃摘出を行いますがその他に、口蓋垂軟口蓋咽頭形成(UPPP)という口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除して、気道を広げる手術があります。また鼻茸や鼻中隔湾曲などで鼻腔通気度が悪い場合は鼻手術を行います。
歯科装具(マウスピース)
口腔内に器具を装着し、舌や下顎を上顎よりも前方に出すように固定することで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸を防ぐ方法です。顎の小さい方に向いていて、軽症な症状に適した治療です。