藤田医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

耳鼻咽喉科の感染症、気道狭窄、鼻出血

耳鼻咽喉科の感染症

耳鼻咽喉科で扱う感染症には、鼻炎、副鼻腔炎、扁桃炎、咽頭炎、喉頭炎、中耳炎などさまざまなものがあります。はじめは発熱、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、耳痛など、風邪のような症状から始まります。上気道である、のど、鼻、耳はつながっているため、これらが同時に起こったりすることもあります。特に、鼻炎から副鼻腔炎、中耳炎に及ぶこともしばしば見られます。
副鼻腔は自然口という穴を介して鼻腔に通じます。ウイルスや細菌、アレルギーなどによって鼻炎が起こると、鼻の粘膜が腫脹したり、鼻漏などが増えたりします。その結果自然口がふさがると副鼻腔からの分泌物などの排泄が困難となり、副鼻腔に膿がたまって副鼻腔炎を起こします。
のどの炎症は扁桃炎や喉頭炎を引き起こします。扁桃炎がひどくなると、扁桃の周囲にまで炎症が及び、扁桃の周囲が腫れてしまう扁桃周囲炎を引き起こします。
また、鼻と耳は耳管という管で繋がっています。小児は、耳管が成人に比較し短く水平に近いなど解剖学的特徴と耳管機能の未熟により容易に経耳管的に中耳炎を起こしやすいと考えられています。
耳鼻咽喉科の感染症では多くは抗菌薬で治療しますが、症状がさらに重篤になった場合には緊急を要する状態になったり、外科的処置も必要となったりすることがあります。副鼻腔炎では増悪すると、副鼻腔の周囲の目や脳などの臓器に炎症が波及し、失明や髄膜炎などを生じることもあります。状況によっては緊急での副鼻腔手術が必要になることがあります。扁桃炎・扁桃周囲炎ではひどくなると、扁桃の周囲にまで炎症が及び膿の塊(膿瘍)が形成されます。そうなると経口摂取ができなくなったり開口障害が起こったります。この状態では抗菌薬での治療だけでなく切開排膿も必要となります。さらに病状が進行すると、気道に存在する喉頭蓋が腫脹して気道狭窄を起こしてしまい窒息の危険性もあります。窒息の危険性があると判断された場合は息の通り道のバイパスを作るため気管切開を行うこともあります。また、その膿瘍が下方へ移動すると頸部膿瘍、縦隔膿瘍という状態まで波及することもあります。経口腔的に切開排膿が困難である場合は、頸部からの外切開によって排膿を行います。縦隔には心臓や大血管をはじめとする重要臓器がたくさん存在し、そこまで炎症が波及すると致死的となることもあるため、注意を要します。ただの咽頭痛といっても侮れません。中耳炎では炎症が強くなると中耳や耳の後ろの骨に膿がたまることがあります。こうなれば鼓膜切開や緊急の耳の手術が必要になることがあります。これらの場合は全身麻酔下で手術が必要となることもあります。
以上の様に、耳鼻咽喉科領域には様々な疾患があります。ただの風邪だと思って放置しておくと重症となることもあり、できるだけ早期の治療介入が重要です。

鼻出血

耳耳鼻咽喉科の診療で頻度の多いものとして鼻出血があります。鼻出血の多くはキーゼルバッハ部位といわれる鼻中隔の前下端部からの出血がほとんどです。多くは圧迫止血によって止血を得ます。鼻出血を認めた際は、鼻には何も詰めず、下を向いた状態で外側から鼻をつまんだ状態で10分以上待ちましょう。それでも止血しない場合は、鼻にガーゼを詰めたり鼻粘膜を焼灼することによって止血します。早く病院に受診することを検討してください。

キーゼルバッハ部位

鼻出血をしたときは下をむいて、鼻をつまみ、10分待ちます