藤田医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

悪性リンパ腫に対するFNACとフローサイトメトリー
research

悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫は、血液中のリンパ球が癌化した疾患であり、主にリンパ節、脾臓や扁桃腺などのリンパ組織に発生します。リンパ組織以外の体のあらゆる臓器に発生する可能性があり、発生した部位により症状および診断の契機が異なります。悪性リンパ腫には多くの病型が存在し、正確な診断と適切な治療を行うことが肝要となります。
頸部リンパ節腫脹は耳鼻咽喉科の日常診療に際し、しばしば遭遇する臨床所見です。原因は原発性病変によるものの他に、頭頸部領域の疾患により二次的に起こるもの、全身性疾患の部分症状として現れる場合があります。悪性リンパ腫の自覚症状として、頸部リンパ節の腫脹は頻度が多く、頸部リンパ節腫脹を主訴に耳鼻咽喉科に受診することがよくあります。

診断

診断の過程としてまずは穿刺吸引細胞診(FNAC:Fine Needle Aspiration Cytology)を行います。FNACは、外来診療の中で、比較的簡単に実施できます。
腫脹した頸部リンパ節が悪性腫瘍由来の場合、扁平上皮癌といわれる組織型が多く、一般に扁平上皮癌のFNACは、他の癌に比較し正しい細胞診断と組織推定が得られやすいとされています。しかし、悪性リンパ腫のリンパ節から採取した細胞では、それが悪性リンパ腫によるものなのか、炎症性によるものかの細胞診団と組織推定は難しく、診断率は低くなるとされます。よってFNACで診断がつかず悪性リンパ腫が疑われる場合は頸部外切開によりリンパ節などの組織を採取するなど、ある程度の組織の量(検体量)が必要になります。また、その検体をフローサイトメトリーという検査に回し、多くの病型が存在する悪性リンパ腫の解析を行い組織型を確定します。フローサイトメトリーは腫瘍細胞の検出感度が高く、病型特異マーカーによる補助診断検査として有用とされます。悪性リンパ腫の診断はこのような過程をたどることが多いです。

図:穿刺吸引細胞診
図:穿刺吸引細胞診 甲状腺がん.hhc Webサイトから引用
https://patients.eisai.jp/kojosengan-hhc/treatment/treatment01_03.html

主な研究内容

このような現状を踏まえ、当科では原因不明の頸部リンパ節腫脹や悪性リンパ腫が疑われるような症例に対して、FNACの検体でもフローサイトメトリー解析を行っています。どの症例においても、可能な限り低侵襲な検査で正確な診断がつくことが望ましいと考えられ、FNACでフローサイトメトリー解析を行うことにより、悪性リンパ腫の診断率を高めたり、病型の特定に近づくことでリンパ節などの組織採取の必要があるかどうかのスクリーニング的な意義となると考えています。
 実際に、FNACとフローサイトメトリー解析を施行したことで、悪性リンパ腫の可能性を示唆された症例や、悪性リンパ腫の再発が疑われ、以前の病型と同じと考えられることから組織採取を必要としなかった症例も認め、FNACのフローサイトメトリー解析は意義がある可能性があります。今後、この検査法によって正診率がどれほど向上するのか等につき検討していきます。