藤田医科大学 整形外科

特集 指導者インタビュー

森田 充浩 准教授(藤田医科大学病院)

専門は股関節外科。関節リウマチ、骨粗鬆症も手掛ける。

藤田医科大学の股関節班の特徴を教えてください

股関節班の構成は現在常勤3名とローテーターの先生3名の計6名です。
人工股関節置換術を主体とした股関節手術を森田と佐藤が、その他骨盤・大腿骨近位部骨折などの外傷治療を廣野・谷口が中心に行い、ローテーターの先生方を含め執刀医が病棟管理を担当する主治医制度をとっております。

先生のこれまでのキャリアを教えてもらえますか?

前職は防衛医大病院や自衛隊病院のほか、防衛省、陸上自衛隊の部隊等で医官として勤務しておりました。また北海道勤務時代にはイラク復興支援やインドネシア緊急援助活動にも従事した時期があります。平成19年に自衛隊を退職し、それ以来藤田で勤務させていただいております。前主任教授の山田治基先生からお誘いいただいたのがきっかけでした。

人工股関節置換術で先生が心がけられていることを教えてください

人工股関節(THA)は変形性股関節症や大腿骨頭壊死、リウマチ性股関節症の根治術として今や欠かせない治療法となっており、日本だけでも年間5万人以上の方々が加療されています。インプラントの進歩により、長寿命型と呼ばれる人工関節が主流となっていますが、手術方法・術式は各施設によりまちまちで、また執刀医に高い技術力を求められる領域であることは間違いありません。
低侵襲手術(MIS)と呼ばれる技法を用い、かつ前方アプローチ(ダイレクトアンテリオール法、アンテロラテラールスーパイン法)の採用により軟部バランスの温存、術後脱臼リスクの低減による歩行能力の回復と運動復帰を目指した治療を行っております。また、患者さんの骨格・骨形態と骨質を考慮し、最適と考えられるインプラント機種を複数の候補から選択することで治療効果を最大限に発揮できるよう留意しておりますので、機種選択の目利きは他施設に決して劣らないものと自負しております。

当科採用の代表的なステムインプラント

術後の疼痛管理やリハビリなどで心がけられていることは?平均どのくらいで退院または転院しますか?

術後疼痛管理については一般的な内服や坐薬管理はもちろん、硬膜外麻酔留置や大腿神経ブロックといった治療を併用してきた経緯があります。
最近では手術終了時に局所へのカクテル注射療法を併用して少しでも術後疼痛が軽減できるよう配慮しております。
MIS-THAについてはクリニカルパスという術後計画が確立しており、当科では概ね10日から2週間の術後リハビリプログラムを行っています。
なお、術後入院中リハビリはリハビリテーション科と連携し、理学療法士がほぼ毎日親身にリハビリ指導を行うため、とても評判が良いようです。

見学者も多いと聞きますが、国外からも多いのですか?どのような国から来られますか?

当科では随時他施設からの手術見学を受け入れております。
前方アプローチを学ばれたい若手の先生、特定の機種・医療材料の使用法を確認したい先生方が多いです。
また、海外(特に中国や韓国、台湾などの)アジア諸国の先生方がグループで手術見学にこられたりしています。
コロナの影響で現在は新規受け入れを抑えておりましたが、今後また状況をみて再開する予定です。

再置換の手術も多数行われていると聞いています。

旧世代のインプラントは材質やデザインの関係でやはりある程度の年数で再手術による入替えが必要です。
当科では過去の手術の再置換術を積極的に受け入れております。
また、他施設症例であっても必要に応じて対応しております。

先生は骨粗鬆症や関節リウマチも専門にされていると聞いています。それぞれどのような取り組みをされておられますか?

人工関節治療において、短期的には手術材料や術式の選択、手術手技能力が高いことが大切ですが、中・長期的には患者さんの骨質の改善・維持が重要です。高齢化時代において骨粗鬆症対策は大変重要な課題ですので、内服や注射治療の管理が重要です。
定期受診を通じてこれらの検査と指導も併せて実施しております。院内では骨粗鬆症リエゾンサービス委員会の委員として、内分泌・代謝内科と共同で骨粗鬆症治療の地域医療連携にも取り組んでおります。 関節リウマチは現在、薬剤治療の進歩により適切な薬物療法による臨床的寛解への導入と維持が容易になりつつあります。手術療法と併せて生物学的製剤の使用も行っております。

先生の今後の目標などあれば教えてもらえますか?

これまで培ってきた臨床経験と知識を、若手医師の先生方に少しでも多く継承していけるよう、後進の教育と指導に務めていきたいと思います。それと学会活動や講演を通じて学術交流をすること、また海外出張や外国医師見学といった機会を通じて相互理解を深め、藤田医科大学の発展に寄与できるよう努力していきたいと思っております。 当科では藤田順之教授のもと、若手医師入局者が毎年増えておりますので、彼らをしっかりと育成していくことに力を注いでいきたいと考えております。


若手医師の先生方にも積極的に指導をされる森田先生

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