採血方法
:実験動物の採血は麻酔下にて実施し、動物の苦痛軽減に努める必要があります。ここでは、特にマウス、ラットの採血方法について紹介します。
尾静脈採血
@ マウス、ラットを静脈内投与と同じ方法で固定する。
A 尾根部から先端に向かってアルコール綿で尾をよくこする。乾燥したガーゼでアルコールをよく拭きとり、尾の先端から1/3-1/4の部分の左右いずれかをカミソリで切る。
B 切ると同時に切り口を上にすると血液が盛り上がってくるのでヘマトクリット管やメランジュールで採取する。
C 採血後は乾燥したガーゼで圧迫して止血する。
*静脈内投与と同じ要領で尾静脈に針を刺し、そこから採血する方法もある。
*マウス・ラットの尾静脈採血に、扱いやすく、動物への負担が少ない翼付採血針が販売されているので、それを用いる方法もある(写真)。
翼付採血針を用いた採血法
後大静脈採血
@ 動物を麻酔して保定板に仰向けに固定する。
A 外尿道口の上部から剣状突起まで皮膚と腹筋を同時に切開し、次に最後肋骨にそって皮膚と腹筋を左右に切る。
B 腸管を右側によけ、体の中央部に見える脂肪組織をガーゼなどを使って排除すると、暗褐色の後大静脈を直視できる。
C マウスでは23-24G、ラットでは22Gの針をつけた注射筒で採血する。刺入部は腎静脈の5-10o下方である。
腹部大動脈採血
@ 後大静脈採血と同様に固定し、開腹する。
A 脂肪組織をよけて静脈が見えたら、さらに静脈の左下方を走っている白桃色の腹大動脈を注意深く周囲の脂肪組織などと分離する。
B マウスでは23-24G、ラットでは21-22Gの針をつけた注射筒で採血する。
心臓採血
:マウス、ラットでは通常開胸して行う。
@ 動物を保定板に仰向けに固定し、胸部の皮膚を切開する。
A 剣状軟骨の両側から肋骨を切断して開胸する。
B マウスでは24-25G、ラットでは22-23Gの針をつけた注射筒を用いて針を心臓に刺し内筒を引き採血する。
頸静脈採血
@ 動物を麻酔下で保定板に仰向けに固定し、前肢の付け根から眼の方向に向かってマウスでは1.5cm、ラットでは3pほど切皮する。
A 頸静脈がみえるが静脈に直接針を刺さずに、筋肉を通して頸静脈に注射針を刺入する。
採血部位と採血量の目安
採血部位 |
マウス |
ラット |
モルモット |
ウサギ |
尾静脈(一) |
0.01-0.05ml |
0.3-0.5ml |
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背中足静脈(一) |
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0.1-0.3ml |
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耳翼辺縁静脈(一) |
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0.5ml以下 |
5ml |
頸静(動)脈(全) |
0.5-1.0ml |
3-5ml |
3-5ml |
100ml(3KgBW) |
心臓(一) |
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5-7ml |
15mlまで |
心臓(全) |
0.5-1ml |
3-10ml |
5-10ml |
80-100ml |
後大静脈(全) |
0.5-1ml |
5-10ml |
5-10ml |
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腹大動脈(全) |
0.5-1ml |
5-10ml |
5-10ml |
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1匹当たりの平均採血量 (一):一部採血(全):全採血