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麻酔法HOW TO ANESTHESIA

麻酔法
:大きく分類して全身麻酔法と局所麻酔法が、また麻酔経路として注射麻酔法と吸入麻酔法の2つの方法があります。

全身麻酔法

注射麻酔法と吸入麻酔法に分けられる。注射麻酔は投与経路により種々の方法があるが即効性のある静脈投与あるいは腹腔内投与が多く用いられる。全身麻酔は多種の麻酔薬によって施行される。単独の使用により完全に無意識の状態にし、鎮痛作用にあわせて反射の抑制および筋弛緩を得ることのできる麻酔もある。


局所麻酔用

局所麻酔が適応できる実験は限られている。全身麻酔が研究目的により制限されている場合や、保定が確実に行える小手術時に使われる。2%リドカインを侵襲が予測される局所に注射する。また神経支配が明らかな部位では近位に麻酔薬を十分浸潤させることにより、遠位部全域に麻酔効果が期待できる。近年リドカインに変わって麻酔効果が優れているマーカインが使われるようになった。


注射麻酔

(1)三種混合麻酔:2007年にケタミンが麻薬指定を受けて以後、長年使用されてきたケタミンとキシラジンの混合麻酔薬に代わり、麻薬を使用しない麻酔薬として、メデトミジン、ミダゾラム、ブトルファノールを混合した三種混合麻酔薬が汎用されている。
注)ミダゾラムは向精神薬であるので厳重な管理が必要である

(2)ケタミン(麻薬 H19年1月1日より):ほとんどの動物種を不動化させることができ、筋肉内、腹腔内及び静脈内のいずれの経路でも投与できる。ほとんどの動物種で中等度の呼吸抑制が生じ、血圧が上昇する。キシラジンと混合して使用する場合が多い。


吸入麻酔

(1)イソフラン(劇薬):麻酔の導入及び覚醒は速く、そのため麻酔深度を容易に迅速に変えることができる。非刺激性で、非引火性である。実験動物におけるイソフランの使用上の主な利点は生体内変化が少ないことで、ほとんど呼気中に除去される点である。そのため肝臓のミクロソーム酵素への影響は少なく、薬剤の代謝および毒性実験研究にはほとんど影響しない。

(2)セボフルラン(劇薬):イソフルランに類似した特徴がある強力な麻酔薬である。セボフランは、代謝の程度がイソフルランと類似している。


マウス・ラットの全身麻酔法 (三種混合麻酔)について

:メデトミジン、ミダゾラム、ブトルファノールを混合した三種混合麻酔薬は、2007年にケタミンが麻薬指定を受けて以後、長年使用されてきたケタミンとキシラジンの混合麻酔薬に代わり、麻薬を使用しない麻酔薬として、近年実験動物に汎用されている。
注)ミダゾラムは向精神薬であるので厳重な管理が必要である

【マウス用 】
塩酸メデトミジン0.3mg/kg+ミダゾラム4mg/kg+酒石酸ブトルファノール5mg/kgになるように注射用水で希釈し、腹腔内か筋肉内に投与する。これで1時間ほどの麻酔効果が期待できる。

実際の調合例:塩酸メデトミジン(商品名ドミトール・原液濃度1mg/ml)0.75ml+ミダゾラム(商品名ドルミカム・原液濃度5mg/ml)2ml+酒石酸ブトルファノール(商品名ベトルファール・原液濃度5mg/ml)2.5mlを注射用水で希釈して25mlにする。この混合液をマウス体重10g当たり0.1ml、腹腔内か筋肉内に投与する。

【ラット用 】
塩酸メデトミジン0.15mg/kg+ミダゾラム2mg/kg+酒石酸ブトルファノール2.5mg/kgになるように注射用水で希釈する。すなわちマウス用に希釈した溶液を、注射用水でさらに2倍希釈することで使用できる。腹腔内か筋肉内に投与する。

*三種混合麻酔薬の拮抗剤
アチパメゾール(atipamezole)は合成α2アドレナリン受容体拮抗薬であり、塩酸メデトミジンの鎮静、鎮痛作用の抑制作用を示す。商品名はアンチセダン。
基本的にはメデトミジン投与量と同量(マウス:0.3mg/kg、ラット0.15mg/kg)を腹腔内または筋肉内に投与すると数分間で覚醒する。アチパメゾール比較的安全な薬物なので、状況に応じて2倍量〜5倍量を投与することも可能である。

          東北大学における動物実験等に関する規程とその解説第10版 V 補遺集 より


三種混合麻酔の混合割合と投与量


混合割合と投与量の例
薬剤名   商品名 市販濃度   投与量 混合割合 
 メデトミジン  ドミトール  1.0mg/ml  0.3mg/Kg  0.3ml
 ミダゾラム  ドルミカム  5.0mg/ml  4.0mg/Kg  0.8ml
 ブトルファノール  ベトルファール  5.0mg/ml  5.0mg/Kg  1.0ml
 注射用蒸留水       7.9ml
合 計    マウスへの投与量:0.1ml/BW10g 10.0ml 
  ラットへの投与量:0.5ml/BW100g
 アチパメゾール  アンチセダン  5.0mg/ml  1.5mg/Kg  0.3ml
 注射用蒸留水     9.7ml
 合 計     10.0ml