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投与方法GIVE MEDICINE

投与方法
実験動物への投与は、薬物の治療効果や代謝経路を調べるばかりでなく、麻酔薬や鎮痛剤等の投与およびワクチン接種のさいにも実施されます。ここでは、特にマウス、ラットの投与方法について紹介します。


経口投与

:金属製やシリコン製胃ゾンデが多く使用される。
@ 術者自身が左手でしっかりと動物を保定し(経口投与時の保定参照)、右手に薬液を入れた注射筒を持つ。
A 胃ゾンデの先端を保定した動物の口腔内に入れ、先端を上顎に沿って進める。
B 咽頭部に達すると、抵抗を感じて胃ゾンデが進まなくなる。そこで胃ゾンデを動物の体と平行にすると食道に入るので、そのまま胃ゾンデを進めることが出来る。

            
         マウスの経口投与            ラットの経口投与

 *口から胃までの長さはマウスではゾンデの1/2-1/3、ラットでは胃ゾンデのほぼ全長である。
 (あらかじめ胃の位置とそこまで挿入するゾンデの長さを確認するとよい)。

C 胃に入ったら、内筒を押し薬液を投与する。
D 投与が終わった後は胃ゾンデを静かに速やかに抜き、動物をケージに戻す。

【注意】
ゾンデを進めている途中に抵抗を感じたらゾンデを抜き、最初からやり直す。さもないと食道等を突き破り、動物を死なせることになる。


腹腔内投与

:投与部位は下腹部の正中線から左右いずれかにそれた部分(尿道口を基準に左右どちらかにずらした部分)
@ 動物を保定し、刺入部位を消毒し注射針を刺入する。
A 注射針を皮下に5oほど進めた後注射針を立てて、腹腔内に針を進める(二段階穿刺)。

              

B 内筒を引いて血液や黄褐色の液体(腸管内容物)などが入ってこないことを確かめてから薬液を注入する。

        
       マウスの腹腔内投与              ラットの腹腔内投与


静脈内投与

:主に尾静脈に注射する。
@ 動物を静脈内投与用固定器に固定する(静脈内投与に用いる固定参照)。
A 尾全体をアルコール綿で消毒する。
B 投与部位は尾端から1/3-1/4で、左右いずれかの静脈に注射針を刺入し、内筒を引き血液の入ってくるのを確認した後、薬液を注入する。
C 注射後は速やかに針を抜き、乾綿などで押さえて止血する。

            
               マウスの尾静脈投与


皮下投与

:主に頸背部に行う。この部位は動物自身になめられず、かつケージや床敷などでこすられないからである。
@ 動物をケージのフタの上などに置き(皮下投与時の保定参照)左手の親指、人差し指と中指で皮膚をつまむ。すると三角形のテントのように皮膚が盛り上がるのでそこに注射針を刺す。
A 内筒を引き血液が入ってこないことを確かめたら薬液を注入する。

【注意】注射針を皮下に入れた後に左右にあまり大きく動かすと血管あるいは周囲に組織を傷つけるので注意が必要である。

             
                 皮下投与


筋肉内投与

:大腿部(大腿四頭筋または大腿二頭筋)に行われることが多い。
マウスの場合
@左手で経口投与時と同じ方法で保定(筋肉内投与に用いる保定参照)し、さらに左後肢を薬指と小指にはさんで内股部が見えるようにする。
A注射針は大腿内側のやや後方から刺す。注射器内筒を引いて血液の入ってこないのを確かめたら薬液を注入する。筋肉内で針を動かしてはならない。

ラットの場合
@補助者が経口投与と同様にもち、さらに尾を反対の手で下方に引いて下半身を動かないようにする。
A実験者が投与する後肢を左手で引っぱりながら大腿外面に注射針を刺入する。
Bその後はマウスと同様である。


動物種別の投与経路と投与量

マウス
 投与法  使用器具  投与量  投与部位
 注射筒  注射針
 経 口  1ml  -  0.1-0.2ml  
 腹腔内  1ml  25-27G  0.2-0.3ml  下腹部の正中線から左右
どちらかに0.5cm離れたところ
 皮 下  1ml  25-27G  0.1-0.2ml  頸背部
 静 脈  1ml  25-27G  0.05-0.2ml  尾静脈
 筋肉内  1ml  25-27G  0.03-0.05ml  大腿部



ラット
 投与法  使用器具  投与量  投与部位
 注射筒  注射針
 経 口  1-5ml  - 1ml程度  
 腹腔内  1-10ml  23-25G  1-2ml  下腹部の正中線から左右
どちらかに1cm離れたところ
 皮 下  1-5ml  23-25G  1ml以下  頸背部
 静 脈   1-2.5ml  23-25G  0.5ml程度   尾静脈
 1ml  25-27G  背中足静脈
 筋肉内  1ml  23-25G  1ml  大腿部
*スナネズミ、ハムスターの経口投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与はマウスの要領で行うとよい。



モルモット
 投与法  使用器具  投与量  投与部位
 注射筒  注射針
 経 口  1-10ml  -  7ml程度  
 腹腔内  1-5ml  23-24G  2ml程度  下腹部の正中線から左右
どちらかに1-2cm離れたところ
 皮 下  1ml  23-25G  1ml程度  頸背部
 静 脈  1-5ml  25-27G  1ml程度 サフェナ静脈、陰茎静脈、
耳翼辺縁静脈
 筋肉内  1ml  23-25G 1ml程度  大腿部内側



ウサギ
 投与法  使用器具  投与量  投与部位
 注射筒  注射針
 経 口  10-20ml  -  20ml程度  
 腹腔内  1-20ml  23-25G  10ml程度  下腹部の正中線から左右
どちらかに1-2cm離れたところ
 皮 下  1-5ml  22-25G  5ml以下 背部、腹部、股部など皮下脂
の少ない部分
 静 脈  10-20ml  23-25G  0.05-0.2ml  耳翼辺縁静脈
 筋肉内  1-5ml  25-27G  0.03-0.05ml  腹部、大腿部等の筋肉内
深さ5mmくらいがよい
 皮 内  1ml  27G    背部